来た、見た、勝った

「来た、見た、勝った」

「来た、見た、勝った」というフレーズは、ローマの将軍ガイウス・ユリウス・カエサルが紀元前47年に発した言葉で、彼の卓越した戦術と迅速な勝利を象徴しています。この言葉は、ゼラの戦いにおける勝利を報告するために、ローマにいる友人のガイウス・マティウスに宛てて送られました。

背景

この言葉が生まれたのは、ローマ内戦の最中でした。当時、カエサルはナイルの戦いでプトレマイオス朝のファラオ、プトレマイオス13世を破り、次に小アジアのグナエウス・ドミティウス・カルウィヌスがポントス王ファルナケス2世に敗れたという報せを受けます。これを受けてカエサルは、エジプトを出発し、シリアやキリキアの安定化に努めつつ、ポントスへと向かいました。

ゼラの戦い

8月2日、カエサルはゼラでファルナケスと迎撃します。戦闘は約4時間程度で、カエサル指揮のローマ軍が勝利を収めました。この戦いは、カエサルの戦術的な能力が如何に優れていたかを示すものであり、その勝利の速さから、カエサルは友人にこのシンプルな3語で結果を伝えたのです。

カエサルの文体

カエサルの文章は、対照的なスタイルを持つキケロに比べて明瞭で簡潔です。この「来た、見た、勝った」の三語は、カエサルの文体を象徴するものであり、その短さが相手に戦況の激しさと迅速さを強く印象づけました。

歴史的な出典

この言葉の記録は、プルタルコスの『対比列伝』に見られます。プルタルコスは、カエサルがゼラの勝利後にマティウスに書いた手紙に「来た、見た、勝った」という表現をラテン語で記したと述べています。また、スエトニウスの『皇帝伝』では、ポントスの戦勝を記念する銘文としてもこの三語のみが刻まれたとされています。

現代の引用

「来た、見た、勝った」は、その後様々な場面で引用されるようになります。たとえば、たばこメーカーのフィリップモリスのエンブレムにもこの言葉が記されています。また、1965年のF1メキシコグランプリで、日本のホンダチームが初優勝を果たした際に、監督の中村良夫が東京の本社に向けて「Veni, Vidi, Vici」と電報を送ったことも有名です。

さらに、大阪の日本橋でんでんタウンにあった家電販売店「喜多商店」は、この言葉をもじって「来た、見た、買うた」といったキャッチコピーを使用し、認知度を高めました。

結論

この「来た、見た、勝った」という言葉は、単なる歴史的な名言であるだけでなく、現代の企業活動やブランディングにも影響を与えるなど、文化的な意義を持つものでもあります。カエサルの意志と行動が後世にわたり影響を与え続けることを示す一例と言えるでしょう。

もう一度検索