1968年オランダグランプリ

1968年オランダグランプリ：マトラの快挙と悪天候のドラマ

1968年6月23日、オランダ・ザントフォールト・サーキット。F1世界選手権第5戦、オランダグランプリが開催されました。このレースは、悪天候とマシントラブル、そしてドライバーたちの執念が絡み合い、ドラマチックな展開を見せたことで知られています。

予選：ポールポジションはエイモン、混戦のグリッド

予選では、フェラーリのクリス・エイモンがポールポジションを獲得。フロントローにはブラバムのヨッヘン・リントとロータスのグラハム・ヒルが並びました。ジャッキー・スチュワート（マトラ）は2列目、その後方にはジャッキー・イクス（フェラーリ）、デニス・ハルム（マクラーレン）、そして前戦ベルギーGPで初優勝を飾ったブルース・マクラーレンらが続きました。一方、ホンダのジョン・サーティースは、練習走行からZF製デフロックの不具合により、ハンドリングに苦しみ9番手と低迷しました。

レース：スチュワートの快走とマトラの1-2フィニッシュ

決勝レースは小雨の降る中スタート。最初はリントがリードしましたが、すぐにヒルとスチュワートに抜かれました。4周目、雨脚が強まるとスチュワートがトップに立ち、大きくリードを広げていきます。

その後方では、ベルトワーズが順位を上げてきます。彼は一度ピットインするものの、その後猛追を見せ、50周目にはヒルをかわして2位に浮上します。一方、ヒルは61周目と82周目にスピンを喫し、それぞれ順位を落とし、最終的にリタイアという結果に終わりました。

最終的に、スチュワートが優勝、ベルトワーズが2位となり、マトラがF1初優勝と1-2フィニッシュを達成するという快挙を成し遂げました。これはフランスのコンストラクターにとって初のF1勝利となりました。スチュワートは、直前のF2レースで右腕を骨折したにもかかわらず、ギプスをつけたままレースに出場し、優勝を果たしたのです。3位にはBRMのペドロ・ロドリゲス、4位はイクス、5位にはモーザーが入賞しました。

ホンダの苦戦とマシントラブル

一方、ホンダ陣営は天候判断を誤り、サーティースを晴天用タイヤでスタートさせたため、降雨によりタイヤ交換を2回も強いられ、勝機を失ってしまいました。さらに、練習走行から発生していたハンドリング不良も再発し、最終的には発電機ローターの脱落によりリタイアしました。このハンドリング不良の原因は、デフロックではなく、コニ製ガス入りダンパーのガスシール破損によるものだったと判明しました。

その他：エントリーリストと話題

このレースのエントリーリストは、前戦とほぼ同じでしたが、いくつかの変化がありました。ダン・ガーニーは新しいレプコV8エンジンを搭載したブラバムで参戦。クーパーは、事故で亡くなったルドビコ・スカルフィオッティと負傷したブライアン・レッドマンの欠場により、ルシアン・ビアンキ1台のみの参加となりました。

1968年オランダグランプリは、天候、マシントラブル、ドライバーたちのドラマが凝縮された忘れられないレースとなりました。マトラの躍進、そして各チームの明暗が分かれたレースとして、F1の歴史に刻まれています。

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