1969年イタリアグランプリ

1969年のF1世界選手権第8戦、イタリアグランプリが9月7日、モンツァ・サーキットで開催されました。このレースは、ジャッキー・スチュワートのドライバーズチャンピオン獲得、そしてマトラのコンストラクターズチャンピオン獲得という歴史的瞬間を刻むこととなりました。

レースを彩ったのは、その劇的な接戦です。優勝したスチュワートから4位のブルース・マクラーレンまで、わずか0.19秒差という僅差のフィニッシュとなりました。これは、F1の歴史においても記憶に残る、スリリングな展開と言えるでしょう。

このレースに至る背景には、いくつかの注目すべき出来事がありました。前戦のドイツGPから約一ヶ月後、非選手権レースであるインターナショナル・ゴールドカップがオウルトン・パークで開催されました。このレースでは、ジャッキー・イクスが優勝を飾った一方、ヨアキム・ボニエはアクシデントにより負傷、イタリアGPへの出場を断念することとなります。

フェラーリは、このイタリアGPに新型車312Bを投入する計画でした。水平対向12気筒エンジンを搭載したこのマシンは、従来のV12エンジンを凌駕するパワーを期待されていましたが、テスト走行でトラブルが相次ぎました。エースドライバーであるクリス・エイモンは、度重なるトラブルに失望し、チームを離れるという決断を下します。結果として、312BはイタリアGPへの出場が不可能となり、フェラーリは従来型の312を1台のみ出場させることになりました。

ドライバーの顔ぶれにも変化がありました。フェラーリは地元出身のエルネスト・ブランビラを起用しましたが、ブランビラは予選初日を終えた後、ペドロ・ロドリゲスにシートを譲ります。ブラバムチームではオーナーであるジャック・ブラバムが手首の負傷から復帰を果たしました。また、ロータスはジョン・マイルズに四輪駆動の63を投入しましたが、マトラは四輪駆動車の投入を断念しました。

予選では、ヨッヘン・リントがポールポジションを獲得し、デニス・ハルムと共にフロントローを占めました。ドライバーズチャンピオン争いをリードしていたスチュワートは3番手、カレッジとともに2列目を形成しました。前年王者のグラハム・ヒルは9番手、ロドリゲスは12番手、イクスはエンジントラブルにより最下位に沈みました。

決勝レースは、フェラーリの不振にも関わらず、多くの観客を集め、白熱した展開となりました。特にモンツァの長いストレートを活かしたスリップストリーム合戦は、多くのドライバーを巻き込み、観衆を興奮させました。スチュワート、リント、ハルム、カレッジ、ヒル、マクラーレン、ベルトワーズ、シフェールといったトップドライバーたちが一団となってトップ争いを展開しました。レース終盤では、スチュワート、リント、ベルトワーズ、マクラーレンの4台が優勝争いを繰り広げました。最終ラップ、スチュワートはリントとの僅差の攻防を制し、見事優勝を掴みました。その差はわずか0.08秒でした。2位のリント、3位のベルトワーズ、4位のマクラーレンとの差も僅かでした。

スチュワートの優勝により、彼は6勝目を挙げ、残る3戦を残して早くも初のドライバーズチャンピオンの座を確定させました。このイタリアグランプリは、スチュワートの偉業と、0.19秒差という驚異的な接戦、そしてフェラーリの苦戦という、多くのドラマが凝縮された、記憶に残る一戦となりました。

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