1970年のラジオ (日本)

1970年の日本のラジオ界は、FM放送が全国へと広がりを見せ、新たな放送局が誕生するなど、大きな変革期を迎えました。

この年、最も注目すべきはFM放送ネットワークの拡充です。公共放送であるNHKは、各地でFM放送のサービスを開始しました。3月には前橋（20日）、神戸（27日）、水戸と津（28日）、宇都宮（31日）で相次いで開局。その後も4月20日に和歌山、6月22日に横浜、12月1日には大津でFM放送が始まり、地域におけるFMの聴取機会が飛躍的に増加しました。また、既存のNHK FM放送局でも、放送波中継回線の変更が行われるなど、技術的なインフラ整備が進められています。例えば、10月1日にはNHK静岡放送局のFMステレオ放送の中継回線が東京からの直接受信から粟ヶ岳固定局経由に変更され、10月3日にはNHK長野放送局のFMステレオ放送に、東京からの直接受信に加え、前橋局を経由するルートが追加され、二重化されました。

民間放送の分野では、FM専業局の開局が特筆されます。実験局として長年役割を担ってきたFM東海は4月25日に廃止され、その翌日の4月26日には、日本初の民間FM放送局であるエフエム東京が開局しました。これにより、都市部を中心に民間によるFM放送のサービスが本格的にスタートしました。さらに、関西圏では4月1日に大阪音楽エフエム放送（後のエフエム大阪）、九州では7月15日に福岡エフエム音楽放送（後のエフエム福岡）が開局し、三大都市圏を中心に民間FMの波が広がり始めました。大阪音楽エフエム放送は、開局から間もない11月7日にはエフエム大阪へと商号を変更しています。

番組の面でも活発な動きがありました。各局で数多くの新番組が開始されています。NHKラジオ第1放送では『若いこだま』や『お好み邦楽選』、演芸番組などが始まり、NHKラジオ第2放送では『私の読書案内』がスタート。NHK-FMでも『午後のリサイタル』『ミュージックサロン』などFMならではの音楽番組が拡充されました。民間放送では、TBSが『ズバリ快答!テレフォン身の上相談』や、後に看板番組となる『永六輔の土曜ワイドラジオTokyo』を開始。ラジオ大阪の『ヒットでヒット バチョンといこう!』、MBSの『やすし・きよしのお笑い編集室』、CBCの『土曜天国』といった、各地でリスナーの人気を集める番組がこの年に誕生しています。また、開局したばかりのエフエム東京やエフエム大阪は、それぞれの開局日から多種多様な音楽番組や情報番組をスタートさせ、FMの特性を活かした編成を展開しました。既存番組では、ニッポン放送の『フジセイテツコンサート』が4月5日に『新日鉄コンサート』へと改題されています。一方で、終了した番組もあり、ニッポン放送の『アッちゃん』が2月末に、NHKラジオ第1の『三つの歌』が3月末にそれぞれ放送を終えました。

1970年は、NHKによるFM放送の全国展開と、民間によるFM放送の開始という二つの流れが結実し、日本のラジオ、特にFM放送にとって、まさに新たな時代の礎が築かれた年と言えるでしょう。この年の動きが、その後のラジオメディアの発展に大きな影響を与えました。

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