1970年オランダグランプリ

1970年オランダグランプリ：勝利と悲劇の狭間で

1970年6月21日、オランダ・ザントフォールト・サーキット。F1世界選手権第5戦、1970年オランダグランプリが開催されました。この年は、メキシコシティでFIFAワールドカップ決勝戦が行われた特別な年でもありました。オランダGPは、ワールドカップ決勝戦終了後に行われるスケジュールでしたが、レース開始時刻は決勝戦と重ならないように調整されました。

激動のドライバーラインナップ

このレースは、多くのドライバーにとって大きな変化の年でした。まず、前戦ベルギーGPで事故死したブルース・マクラーレンの不在。チームメイトであるデニス・ハルムはインディ500での事故で負傷したため欠場となり、代わりにF5000ドライバーのピーター・ゲシンが代役を務めました。さらに、ダン・ガーニーがマクラーレンに復帰。アルファロメオエンジンを搭載した新車M14Dを駆るアンドレア・デ・アダミッチも参戦。ジョン・サーティースも復帰し、BRMはジョージ・イートンの復帰で3台体制に。ティレルは新人ドライバーのフランソワ・セベールを迎えました。

ロータスは、革新的なウェッジ型ボディの新車72を投入。ヨッヘン・リントとジョン・マイルズがドライブしました。フェラーリは、ジャッキー・イクスのパートナーとして、イグナツィオ・ギュンティとクレイ・レガツォーニを交代で起用する戦略を採り、このレースではレガツォーニが起用されました。プライベーターのシルビオ・モーザーは、ベラシ製の独自マシンで参戦しました。

予選：リントのポールポジション

決勝進出枠は20台に制限され、ジャッキー・スチュワート、ヨッヘン・リント、ジャッキー・イクスなど主要ドライバーは自動的に決勝進出が保証されました。リントは今シーズン初のポールポジションを獲得し、スチュワート、イクスと共にフロントローに並びました。

決勝：リントの勝利と悲劇の影

曇り空の下、レースは開始されました。スタートではイクスがリントを先行しましたが、リントは2周目にファステストラップを記録し、3周目にイクスを逆転。ロータス72の高い性能が示されました。リントは、卓越したペースで周回遅れのマシンを処理し、圧勝への道を切り開いて行きました。しかし、レースは悲劇的な結末を迎えます。22周目、ピアス・カレッジがトンネルオースト手前でコースアウト、マシンは大破炎上。カレッジは即死しました。リントは、親友カレッジの死のショックを受け、大きな悲しみに沈みました。

レース結果とその後

リントはポール・トゥ・ウィンで優勝を飾りましたが、その影にはカレッジの死という大きな悲劇がありました。レガツォーニはデビュー戦で4位入賞と健闘しましたが、カレッジの死によってその喜びは薄れてしまいました。リントは、この事故をきっかけに、その年限りでの引退を真剣に考えるようになったと言われています。このレースは、勝利と悲劇が複雑に絡み合った、記憶に残る一戦となりました。

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