1970年代の建築

1970年代は、建築の世界において、多様な試みがなされた時代でした。特に日本では、大阪万博を契機とした大規模なプロジェクトや、それまでの建築の概念を覆すような独創的な建築物が数多く誕生しました。この時代を代表する建築物と、その背景にあるコンペティションの動向を詳しく見ていきましょう。

日本の主要作品

1970年代の日本の建築は、万国博覧会（大阪万博）の影響を強く受けています。丹下健三が手がけた「日本万国博覧会会場・基幹施設計画、お祭り広場」は、その象徴的な存在であり、一部が現存しています。菊竹清訓による「日本万国博覧会エキスポタワー」も、当時の技術力を示す建築物として注目されました。

都市型建築では、渡邊洋治の「第3スカイビル」や、内井昭蔵の「桜台コートビレジ」が、新しい居住空間の提案として注目されました。また、高橋靗一の「佐賀県立博物館」は、地方における公共建築の新たな可能性を示唆しました。一方で、毛綱毅曠の「反住器」や黒川紀章の「中銀カプセルタワービル」は、従来の建築概念にとらわれない実験的な試みとして評価されています。

公共建築では、佐藤武夫の「北海道開拓記念館」や、磯崎新の「群馬県立近代美術館」が、地域の文化を象徴する建築物として建設されました。また、浦辺鎮太郎の「倉敷アイビースクエア」は、歴史的建造物の再利用の成功例として知られています。さらに、山下和正の「フロム・ファーストビル」や、村野藤吾の「西山記念会館」、石山修武の「幻庵」など、個性的な建築も数多く登場しました。

住宅建築では、安藤忠雄の初期の代表作である「住吉の長屋」が、狭小な敷地に豊かな空間を生み出したことで高い評価を受けました。

海外の主要作品

海外でも、1970年代には多くの重要な建築が生まれています。ウィキメディア・コモンズには、1970年代の建築に関するカテゴリがあり、詳細な情報を得ることができます。この時期の海外の建築は、モダニズムからポストモダニズムへの移行期であり、多様なデザインが試みられたことが特徴です。

コンペ・受賞

1970年代は、建築コンペティションが活発に行われた時代でもあります。1970年の「箱根国際観光センター競技設計」を皮切りに、「ジョルジュ・ポンピドー・センター」や「泉北ニュータウン、光明池プロジェクト」など、国内外で多くのコンペが開催されました。特に、「ジョルジュ・ポンピドー・センター」は、レンゾ・ピアノとリチャード・ロジャーズが当選したことで、その斬新なデザインが世界的な注目を集めました。

また、黒川紀章が「TANU党本部ビル・国会議事堂国際オープンコンペティション」で一等を受賞しましたが、このプロジェクトは実現には至りませんでした。このほかにも、「大阪府泉北ニュータウン光明池幼稚園設計競技」や、「大阪府泉北ニュータウン近隣ショッピングセンター競技設計」など、地域開発に関連したコンペも多く行われました。

さらに、「デュッセルドルフのノルトライン・ヴェストファーレン美術館の建築設計競技」や、「シュトゥットガルト・シュターツギャラリー新館」など、海外の美術館建築のコンペも注目を集めました。ジェームズ・スターリングが当選した「シュトゥットガルト・シュターツギャラリー新館」は、その後の美術館建築に大きな影響を与えました。

国内では、「豊明市立図書館」や「名護市庁舎」などの公共建築の設計コンペも行われ、象設計集団が当選した「名護市庁舎」は、地域性を活かしたデザインが評価されました。また、「キャンベラ議会議事堂」の国際コンペでは、ロマルド・ジョゴラが当選し、その大規模なプロジェクトは世界的な注目を集めました。

その他にも、「オルセー美術館改造」や「徳島県新庁舎コンペティション」、「イスラム文化センター国際競技設計」など、さまざまなタイプの建築コンペが開催されました。これらのコンペは、新しい建築デザインの潮流を生み出す原動力となりました。

関連項目

この1970年代の建築は、日本近代建築史における重要な転換期であり、その後の建築に大きな影響を与えました。1950年代から2000年代までの建築の流れを理解することで、1970年代の建築が持つ独自性や意義をより深く理解することができるでしょう。各年代の建築の特徴を比較検討することで、建築の歴史における変化と発展をより明確に捉えることができます。

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