1971年モナコグランプリ

1971年モナコグランプリ：伝説のレースと新たなスターの誕生

1971年5月23日、モナコ公国モンテカルロ市街地コース。F1世界選手権第3戦、モナコグランプリが開催されました。このレースは、1950年から続くF1世界選手権の歴史において、通算200戦目という節目のレースでもありました。

レース前：期待と不安が入り混じる準備期間

前戦スペインGPから5週間のインターバルを経て、このモナコGPが開催されました。その間には、シルバーストン・サーキットで非選手権レースであるBRDCインターナショナル・トロフィーが行われ、グラハム・ヒルが優勝。しかし、前戦優勝者のジャッキー・スチュワートはアクシデントに見舞われ、レースをリタイアしています。

今レースでは、フェラーリが新型312B2を投入。ロータスは72Dでエマーソン・フィッティパルディが参戦、マーチはドライバー変更など、各チームが様々な準備をして臨みました。Can-Amからスキップ・バーバーがマーチで参戦するなど、エントリーリストにも変化が見られました。

予選：雨とトラブルが絡み合う予選セッション

予選は、木曜午後、金曜早朝、土曜午後の3回にわたって行われました。しかし、木曜と土曜は雨に見舞われ、タイムアタックが可能なのは金曜早朝のみという厳しい状況でした。この影響で、フェラーリのマリオ・アンドレッティはマシントラブルと雨で予選落ち。インディ500参戦のため、アメリカへ帰国することになりました。

ジャッキー・スチュワートは、前年のコースレコードを更新する速さでポールポジションを獲得。2番手にはジャッキー・イクス、3番手にはジョー・シフェールとクリス・エイモンがつけました。一方、ロータス勢は苦戦し、ウィセルは11番手、フィッティパルディは17番手と後方からのスタートとなりました。16台だった決勝進出枠が18台に拡大されたことで、23台のエントリーのうち18台が決勝へ進出しました。

決勝：スチュワートの圧勝とピーターソンの躍進

好天に恵まれ、10万人の観客が集まった決勝レース。しかし、天候は変わりやすく、雨の予報が出ていました。スタート直前には、クリス・エイモンのマシンにトラブルが発生。メカニックがコースに飛び出し、マシンをコース脇に移動させるというハプニングがありました。高齢の競技長、ルイ・シロンは危険な状況の中、カウントダウンを続けました。

スタート後、ジョー・シフェールが好スタートを切り、スチュワートとイクスの間に割って入りました。5回モナコGPを制覇しているグラハム・ヒルは、2周目にクラッシュ。一方、スチュワートはマシントラブルを抱えながらも、シフェールとイクスを引き離していきました。

8番手スタートのロニー・ピーターソンは、序盤から順位を上げていきます。7周目にデニス・ハルムに一度抜かれるも、すぐに抜き返し、13周目にはペドロ・ロドリゲスをも抜いて4位に浮上。その後も猛追を見せ、30周目にイクス、31周目にシフェールを抜き去り、2位に躍り出ました。

レース終盤には雨が降り始めましたが、スチュワートは首位の座を守りきり、ポール・トゥ・ウィン、ファステストラップを記録するグランドスラムを達成。1969年フランスGP以来2度目、モナコGPでは1966年以来2度目の優勝となりました。ピーターソンは初入賞にして初表彰台を獲得し、一躍スターの座に上り詰めました。

レース後：様々な影響と記録

このレースの様子は、イギリスのロックバンド、ザ・フーの「ババ・オライリィ」のミュージックビデオや、ロマン・ポランスキー監督のドキュメンタリー映画にも使用されました。日本でもNETテレビの「ビッグスポーツ」で放送されています。

このレースで、ジャッキー・スチュワートはグランドスラムを達成し、ロニー・ピーターソンは初入賞を果たしました。ティレルは初のファステストラップを記録するなど、多くの記録が生まれました。1971年モナコグランプリは、多くのドラマと歴史を残した、忘れられないレースとして記憶されています。

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