1972年の日本

1972年（昭和47年）は、日本の歴史において大きな節目を迎えた一年です。この年は、干支では壬子（みずのえ ね）にあたります。

政治では、長らく内閣を率いた佐藤栄作首相が退陣を表明し、後継の自由民主党総裁選挙を経て、田中角栄が第64代内閣総理大臣に就任しました。大正生まれ、そして新潟県出身者として初となる首相の誕生です。田中首相は「日本列島改造論」を提唱し、大規模な国土開発への期待が高まりました。

外交面では、戦後日本の大きな課題であった沖縄の施政権がアメリカから日本へ返還され、5月15日に沖縄県が発足しました。これにより、日米間の懸案が一つ解消されるとともに、日本の国土が再び一体となりました。また、9月には田中首相が中華人民共和国を訪問し、周恩来首相との歴史的な会談を経て、日中共同声明に調印。長年の懸案だった中華人民共和国との国交が正常化され、アジアにおける日本の外交関係が大きく転換しました。

社会情勢としては、1月にグアム島で元日本兵の横井庄一さんが発見され、約28年ぶりに帰国。帰国時の「恥ずかしながら帰ってまいりました」という言葉は、当時の世相を反映する流行語となりました。2月には長野県軽井沢町の浅間山荘で、連合赤軍メンバーによる人質籠城事件が発生し、テレビで実況中継されるなど、国民に大きな衝撃を与えました。自然災害としては、7月に西日本を中心に集中豪雨が発生し、土砂災害などで多数の犠牲者が出ました。また、11月には国鉄北陸トンネル内で列車火災事故が発生し、多くの命が失われました。

経済・産業では、小売業界でダイエーが三越を抜き、半期売上高でトップとなりました。カシオ計算機からは、個人向け電卓の先駆けとなる「カシオミニ」が発売され、大ヒットしました。10月には自動車の初心者マークが制定されるなど、交通安全への意識も高まりました。

文化・スポーツ面では、2月にアジアで初めてとなる冬季オリンピックが札幌で開催されました。日本の笠谷幸生選手がスキージャンプで金メダルを獲得するなど、地元開催ならではの盛り上がりを見せました。3月には奈良県明日香村の高松塚古墳で、極彩色の壁画が発見され、古代史や美術史上の大きな発見として注目を集めました。音楽界では、ちあきなおみさんの「喝采」が日本レコード大賞を受賞。吉田拓郎さんの「結婚しようよ」や、天地真理さん、五木ひろしさん、山本リンダさん、そして麻丘めぐみさんの「芽ばえ」などがヒットし、個性的な歌手たちが活躍しました。「女のみち」は記録的な大ヒットとなりました。漫画の世界では、「ベルサイユのばら」や「ドカベン」の連載が始まり、後の人気作となります。テレビでは、刑事ドラマ「太陽にほえろ！」や時代劇「必殺仕掛人」といった人気シリーズが放送開始。アニメでは「科学忍者隊ガッチャマン」や「マジンガーZ」などがスタートし、子供たちの人気を集めました。10月には、日中国交正常化を記念してジャイアントパンダのカンカンとランランが上野動物園に来園し、空前のパンダブームを巻き起こしました。

交通分野では、3月に山陽新幹線が新大阪から岡山まで開業し、西日本へのアクセスが改善されました。同年10月14日には、日本の鉄道が開業100周年を迎え、各地で記念行事が行われました。一方で、地方では鉄道や路面電車の廃止も複数ありました。

この年は、作家の川端康成が亡くなりました。また、後に「キムタク世代」と呼ばれることもあったように、木村拓哉さんをはじめ、各界で活躍する多くの著名人が誕生した年でもあります。

このように1972年は、政治、社会、文化、経済など、様々な面で大きな出来事が起こり、その後の日本に影響を与える節目の年となりました。

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