1972年オーストリアグランプリ

1972年オーストリアグランプリ：フィッティパルディの圧勝と時代の転換点

1972年8月13日、オーストリアのエステルライヒリンクにおいて、F1世界選手権第9戦、1972年オーストリアグランプリが開催されました。このレースは、エマーソン・フィッティパルディの圧倒的な勝利、マクラーレンの躍進、そしていくつかのチームのF1撤退という、複数の要素が絡み合った記憶に残る一戦となりました。

予選:

予選では、エマーソン・フィッティパルディが前年のポールシッターであるジョー・シフェールの記録を2秒近くも更新する驚異的なタイムを叩き出し、今シーズン3度目のポールポジションを獲得しました。2番手にはクレイ・レガツォーニが僅か0.07秒差で続きました。一方、ジャッキー・スチュワートは新型ティレル005の性能に苦しみ、ピーター・レブソンと共に2列目スタートとなりました。ブラバムのカルロス・ロイテマンが5番手と好位置を確保し、クリス・エイモンと共に3列目を形成しました。前戦ドイツGPで優勝したジャッキー・イクスは、やや低調な9番手スタートとなりました。また、ウィリアムズのアンリ・ペスカロロは予選中のクラッシュにより決勝レースへの参加を断念しました。

決勝レース:

決勝レースは、ジャッキー・スチュワートが素晴らしいスタートダッシュを見せ、レガツォーニ、フィッティパルディ、ハルムと続くトップ集団を形成しました。その後方にロイテマン、レブソン、エイモンが続きます。しかし、レガツォーニは燃料供給系のトラブルに見舞われ、4周に渡りフィッティパルディを阻みましたが、2位を奪われると、ピットインを余儀なくされます。その後、ハルムもレガツォーニをパスします。フィッティパルディは着実にスチュワートとの差を詰め、24周目にはついに首位に躍り出ました。27周目にはハルムもスチュワートをかわし2位に浮上しました。しかし、スチュワートは新型マシンの不調により順位を落とし、最終的に7位でレースを終えました。

フィッティパルディとハルムによる首位争いは最終ラップまで続き、僅か1秒差でフィッティパルディが優勝を飾りました。2位にはハルム、3位にはレブソンと、マクラーレンが表彰台の2枠を独占する結果となりました。さらに、マイク・ヘイルウッド、エイモン、ハウデン・ガンレイが入賞圏内に入りました。

フィッティパルディの今シーズン4勝目により、ドライバーズポイントランキングでは52点とし、ライバルのスチュワート、ハルムとの差を25点にまで広げ、初のドライバーズチャンピオン獲得に向けて大きく前進しました。コンストラクターズチャンピオンシップでも、ロータスはマクラーレンに17点、ティレルに19点差をつけ、2年ぶりのチャンピオン獲得へ大きく近づきました。

注目すべき点:

このレースをもって、この年からF1に参戦を開始したアイフェラントとコンニューがF1から撤退しました。アイフェラントはわずか8戦、コンニューはわずか2戦の参戦に終わりました。コンニューのPC1は翌年、F5000用に改造されたとのことです。

結果概要:

優勝：エマーソン・フィッティパルディ（ロータス）
2位：デニス・ハルム（マクラーレン）
3位：ピーター・レブソン（マクラーレン）
ファステストラップ：デニス・ハルム
* 平均速度：214.518 km/h

1972年オーストリアグランプリは、フィッティパルディの圧倒的な強さ、マクラーレンの台頭、そしてF1界におけるチームの入れ替わりを示した、重要なレースとしてF1の歴史に刻まれました。

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