1972年ドイツグランプリ

1972年ドイツグランプリ：イクスの圧勝とドラマチックな展開

1972年7月30日、ドイツグランプリはニュルブルクリンクで14周に渡り開催されました。このレースは、フェラーリのジャッキー・イクスにとって忘れられないものとなりました。彼は見事なドライビングでポールポジションを獲得、ファステストラップを記録し、さらに全周回でトップを走り続けるという、グランドスラムを達成。見事優勝を飾りました。この勝利は、イクスにとって通算8勝目であり、同時にF1キャリアにおける最後の優勝となりました。

2位にはイクスのチームメイトであるクレイ・レガツォーニ、3位にはマーチのロニー・ピーターソンが入り、フェラーリは1970年メキシコGP以来となる1-2フィニッシュを達成しました。

このレースは、多くのチームにとって様々な出来事が発生した、波乱に満ちたものでした。

チーム事情とドライバー交代劇

ティレルは新型マシン005のインボードブレーキに問題を抱え、熟成が間に合わずにこのレースへの投入を見送りました。フェラーリは、サッカー中の負傷から復帰したレガツォーニを起用。一方、マクラーレンは、アメリカでのレースを優先したピーター・レブソンに代わり、ブライアン・レッドマンを起用しました。BRMは3台のP160Cを走らせましたが、ピーター・ゲシンはメンバーから外れました。マトラは修理を終えた新車MS120Dをクリス・エイモンに託しました。ウィリアムズは、前戦でクラッシュしたFX3の代わりにマーチ・721をペスカロロに与え、テクノはデレック・ベルを起用しました。コンニューのミゴールはエントリーを拒否されました。

予選と決勝：ドラマの幕開け

予選では、イクスが前年のポールポジション記録を12秒以上も更新してトップに立ちました。2列目にはフィッティパルディとピーターソン、3列目にはセベールとロイテマンが並びました。

決勝レースは、25万人近い観客が見守る中、スタート直前にエイモンのマシントラブルによりピットインを余儀なくされるハプニングがありました。

レース序盤は、スチュワートとピーターソンが2位争いを繰り広げる中、イクスが圧倒的な速さでリードを保ちました。ピーターソンがスチュワートをかわし、スチュワートはレガツォーニとフィッティパルディにも抜かれて5位に後退しました。その後、フィッティパルディがレガツォーニ、ピーターソンを次々と抜いて2位に浮上するも、ギアボックスのトラブルでリタイア。

レース終盤には、スチュワートとレガツォーニが接触。スチュワートはガードレールに激突してリタイアし、チャンピオン争いでの優位性を失いました。レガツォーニは2位を確保し、フェラーリは1-2フィニッシュを達成。ピーターソンが3位に入り、マーチは今シーズン初の表彰台を獲得しました。

イクスの偉業と記録

イクスは、前年のセベールの記録を7秒も更新するファステストラップを記録。ニュルブルクリンク北コースでグランドスラムを達成した4人目、そして最後の人となりました。彼の平均速度は187.676km/hに達しました。

このレースでは、レッドマンの入賞や、BRMの150戦目の出走など、様々な記録も達成されました。

1972年ドイツグランプリは、イクスの圧勝、そして数々のドラマが織りなされた、記憶に残る一戦となりました。このレースは、F1の歴史に深く刻まれる、重要な一ページを飾っています。

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