1972年ベルギーグランプリ

1972年のF1世界選手権第5戦、ベルギーグランプリは、6月4日にベルギーのニヴェルで開催されました。このレースは、これまで使用されていたスパ・フランコルシャンサーキットがF1マシンにとって危険すぎると判断されたため、ニヴェル・ボレールへと舞台が移された、歴史的なレースとなりました。

レースウィーク前には、オウルトン・パークで非選手権レースであるインターナショナル・ゴールドカップが開催され、マクラーレンのデニス・ハルムが優勝を飾りました。しかし、このレースでBRMのレイネ・ウィセルは指を骨折する怪我を負い、ベルギーGPへの出場は絶望的となりました。

ベルギーGPのエントリーリストには、大きな変化がありました。まず、チャンピオンとして多忙を極め、精神的な重圧から胃潰瘍を患っていたジャッキー・スチュワートが医師の診断により欠場を余儀なくされました。これにより、ティレルチームはフランソワ・セベールのみの参加となりました。また、ウィセルの負傷によりBRMはヴァーン・シュパンを代役として起用し、ブラバムはカルロス・ロイテマンの負傷により、代役を務めていたウィルソン・フィッティパルディを継続して3台体制で参戦しました。さらに、このレースからイタリアのテクノがF1に初参戦。ナンニ・ギャリがマルティーニのスポンサーカラーをまとったPA123をドライブしました。

予選では、エマーソン・フィッティパルディがクレイ・レガツォーニを僅か0.15秒差で抑え、2戦連続のポールポジションを獲得しました。フロントローには、フィッティパルディとレガツォーニ、そしてハルムが並びました。予選では、ウィリアムズのカルロス・パーチェが古いマーチ711を駆り11位に入る好成績を残した一方、ワークス・マーチ勢は苦戦を強いられ、ロニー・ピーターソンが14位、ニキ・ラウダは最下位に沈みました。また、ピーター・ゲシンがコースアウトし自身のBRMを破損したため、ヘルムート・マルコのマシンをゲシンに譲ることになり、マルコはシュパンの予備マシンを使用することになりました。その結果、シュパンは決勝レースに出場できなくなりました。

決勝レースはレガツォーニが好スタートを切りリードしましたが、9周目にフィッティパルディがレガツォーニをオーバーテイクし、その後はフィッティパルディがレースを支配しました。セベールはハルムを抜き、イクスのマシントラブル後にはレガツォーニと2位争いを繰り広げ、最終的にレガツォーニを抜き去り2位を獲得しました。レガツォーニはギャリとの接触によりリタイアとなり、エイモンが3位に浮上するも燃料ポンプのトラブルにより順位を落としました。

最終的に、フィッティパルディが今シーズン2勝目を挙げ、セベールが2位、ハルムが3位となりました。パーチェは5位という好成績を残し、エイモンは6位でフィニッシュしました。この勝利により、フィッティパルディはドライバーズチャンピオンシップでもトップに立ち、ロータスもコンストラクターズチャンピオンシップで首位をキープしました。レースの平均速度は182.423km/h、ファステストラップはクリス・エイモンの1分12秒12でした。このレースは、新たなサーキットでの開催、そして様々なドラマが交錯した、記憶に残る一戦となりました。

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