1973年のテレビ (日本)

1973年（昭和48年）のテレビ業界：変革と新時代の幕開け

1973年、日本のテレビ放送は多方面で大きな転換期を迎えました。経営体制の再編、地方局のネットワーク整理、技術革新としてのカラー化の進展、そして今日まで語り継がれる名番組の誕生など、テレビが社会に深く根ざしていく過程で重要な出来事が相次いだ一年です。

特に注目されたのは、東京12チャンネル（現：テレビ東京）の運営体制の変更でした。それまで日本科学技術振興財団が担っていた放送事業は、10月31日をもってその幕を閉じ、翌11月1日からは株式会社東京十二チャンネルとして、新たな免許のもと総合番組局として再出発を切りました。これに先立ち、番組制作会社であった「株式会社東京十二チャンネルプロダクション」が10月24日に社名を変更して事業を引き継ぐという、異例の形態での移行となりました。

また、同年12月には在京キー局と主要新聞社との間で株式の整理が行われました。これにより、日本テレビと読売新聞、TBSと毎日新聞、フジテレビとサンケイ新聞、NET（現：テレビ朝日）と朝日新聞、そして東京12チャンネルと日本経済新聞という、いわゆる「新聞・放送」の連携が強化される形となりました。

地方局においてもネットワークの整理が進みました。特に中京地方では、4月1日に名古屋テレビ放送がNETテレビ（現：テレビ朝日）系列に、中京テレビ放送が日本テレビ系列にそれぞれ一本化されたことで、長年の変則的なクロスネット状態が解消され、系列によるフルネット体制が整いました。また、この年には新たに奈良テレビ放送が開局しています。

放送技術の面では、カラーテレビの普及が加速し、全面カラー化が着実に進行しました。TBSとNETは10月までにほぼ全ての放送時間がカラー化を完了（過去の再放送などを除く）し、他局でもカラー化率は向上しました。一方、NHKはカラーテレビの普及を優先する方針から、東京と大阪で行っていた音声多重放送の実験放送を12月9日に終了しました。実用化試験放送の開始は1978年まで待つことになります。

番組面では、様々なジャンルで新たな看板番組が誕生しました。日本テレビでは後に「ウルトラクイズ」などの人気企画を生み出す単発特別番組枠『木曜スペシャル』がスタート。TBSでは平日午後のワイドショー『3時にあいましょう』が、フジテレビでは子供向け番組の金字塔となる『ひらけ!ポンキッキ』が放送を開始しました。

既存番組からも多くの話題が生まれました。TBS系『8時だョ!全員集合』では、加藤茶さんのセリフ「ちょっとだけよ、あんたも好きねぇ」がこの年の流行語となり、国民的な人気を不動のものとしました。日本テレビ系の『日立ドキュメンタリー すばらしい世界旅行』の提供変更に伴い、「この木なんの木」でお馴染みの『日立の樹』CMが放送開始され、長く親しまれる企業CMとなっていきます。

ドラマでは、NHK大河ドラマ『国盗り物語』や連続テレビ小説『北の家族』が放送されたほか、TBS系では最高視聴率55.2%を記録した『ありがとう』が最終回を迎え、新たに『水戸黄門』第4部や『江戸を斬る 梓右近隠密帳』が始まるなど時代劇が好調でした。朝日放送制作の『必殺仕置人』からは、後にシリーズの顔となる中村主水（藤田まこと）が登場しています。また、日本テレビ系で『たんぽぽ』第1シリーズ（宇津井健主演）、TBS系で大映テレビ制作の『顔で笑って』（宇津井健・山口百恵共演）、フジテレビ系では関西テレビ制作の『どてらい男』などが放送開始されました。

特撮では、『仮面ライダー』が完結し、後継の『仮面ライダーV3』が登場。円谷プロダクションの『ウルトラマンタロウ』、東映の『ロボット刑事』『キカイダー01』、ピープロダクションの『流星人間ゾーン』、日本現代企画の『スーパーロボット レッドバロン』など、個性豊かなヒーローたちがテレビを彩りました。

バラエティでは、日本テレビ系の『金曜10時!うわさのチャンネル!!』がスタート。関西地方では朝日放送の『プロポーズ大作戦』や関西テレビの『パンチDEデート』といった恋愛バラエティ番組が始まり、後に全国ネット化されて人気を博します。フジテレビ系『夜のヒットスタジオ』では、生放送中の出来事がきっかけで司会の前田武彦氏が降板するという騒動もありました。

年末のテレビは、国民的イベントとして定着した『第24回NHK紅白歌合戦』が、この年完成したNHKホールでの初開催となり、視聴率75.8%を記録しました。『輝く!日本レコード大賞』も視聴率44.1%と同時間帯で健闘しました。一方で、紅白を辞退した美空ひばりさんがNETテレビの裏番組に出演するという、新たな年末の選択肢も登場しました。

この年は、テレビ業界が経営基盤を強化し、放送エリアや技術を拡大させると同時に、視聴者の多様なニーズに応えるべく様々なジャンルの番組を生み出した、活気ある一年だったと言えるでしょう。

主な開局・放送開始局：奈良テレビ放送（4月1日）、NHK津・岐阜（県域放送、4月2日）、東京12チャンネル（株式会社運営、11月1日）。

主な番組周年：NHK紅白歌合戦（20周年）、大河ドラマ（10周年）、夜のヒットスタジオ（5周年）など。

高い視聴率を記録した番組としては、『ありがとう』最終回（55.2%）、連続テレビ小説『北の家族』『藍より青く』（50%台）、『8時だョ!全員集合』（50.5%）、『第24回NHK紅白歌合戦』（75.8%）などが挙げられます（関東地区、ビデオリサーチ調べ）。

1973年は、日本のテレビが今日の姿へと発展していく上で、多角的な側面からその基盤が整備され、番組制作も活発化していった記憶に残る一年となりました。

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