1976年のル・マン24時間レース

1976年のル・マン24時間レースは、サルトサーキットで開催された44回目の大会でした。この年は、レギュレーションの大幅な変更により、従来のグループ6に加え、新たにグループ5（シルエットフォーミュラ）、GTX、GTPといったカテゴリーのマシンが参戦。さらに、IMSA・キャメルGT、NASCAR、ストックカーといったアメリカ勢も参加を認められ、非常に多様な車両が競い合う、国際色豊かなレースとなりました。ただし、ストックカーの参戦は1976年限りでした。また、前年に復活した燃費規制は、この年は再び廃止されました。

特に注目を集めたのは、グループ6に参戦したポルシェとルノーのターボエンジン搭載車です。ポルシェは、1974年以来となるワークス参戦を果たし、カナディアン・アメリカン・チャレンジカップで実績を残した917/10の技術を応用。500馬力以上を発生する、2142cc水平対向6気筒ターボエンジンを搭載した新型マシン、ポルシェ936を投入しました。

ポルシェの最大のライバルとして登場したのが、ルノー・アルピーヌA442ターボです。エルフ石油のスポンサーを受け、ミシュランタイヤを装着し、フランス人ドライバーで構成されたチームは、フランスのモータースポーツ界の意地を懸けて戦いました。フォーミュラ2用2リッターV型6気筒エンジンにターボチャージャーを装着することで、500馬力という驚異的なパワーを達成していました。

これに対して、ミラージュやローラといったコスワースDFVエンジンを搭載したマシンも参戦しましたが、耐久レースへの適合性を考慮し、出力を400馬力程度に抑える必要がありました。そのため、ポルシェやルノーのターボ車には大きく水を開けられる結果となりました。

グループ5カテゴリーには、シルエットフォーミュラのポルシェ935が参戦しました。GTPカテゴリーには、ドライバーであるジャン・ロンドーが自ら製作したイナルテラ・LMが登場。ヴィック・エルフォードも開発に関わっており、フォード・コスワースDFVエンジンを搭載していました。

予選では、アルピーヌ・ルノーA442を駆るジャン＝ピエール・ジャブイーユがポールポジションを獲得。ポルシェ勢は、ジャッキー・イクス/ジィズ・ヴァン・レネップ組が2位、ラインハルト・ヨースト/ユルゲン・バルト組が5位、そしてワークスの935を駆るロルフ・シュトメレン/マンフレート・シュルティ組が3位と、好位置を確保しました。

決勝レースは、これまでにない暑さの中での開催となりました。スタート直後は、アルピーヌ・ルノーと2台のポルシェ936が首位争いを展開。しかし、11周目にはイクス/ヴァン・レネップ組の936がトップに立ち、ヨースト/バルト組も2位に浮上しました。アルピーヌ・ルノーは3位に後退。その後、21時過ぎに悲劇が起きます。アンドレ・アラーがドライブするダットサン260Zがミュルサンヌコーナー付近でコースアウトし、アラーは事故により亡くなりました。23時過ぎには、アルピーヌ・ルノーがエンジントラブルでリタイア。ヨースト組の936も脱落し、イクス組の優勝は確実視される展開となります。

しかし、レース終盤の11時25分、首位を走行中のイクス組の936で排気管に亀裂が発生。30分以上の修理時間を要しましたが、順位を落とすことなく、そのまま走り続け、見事優勝を飾りました。これは、ル・マン24時間レースでターボエンジン搭載車が初めて総合優勝を果たした歴史的な瞬間でした。2位はジャン＝ルイ・ラフォッス/フランソワ・ミゴール組のミラージュ、3位はアラン・ド・キャドネ/クリス・クラフト組のド・キャドネ・ローラとなりました。グループ5クラスでは、ワークスのポルシェ935が4位に入りクラス優勝を果たしました。この勝利で、ジィズ・ヴァン・レネップは1971年以来2度目のル・マン制覇を果たすと共に、このレースを最後に引退しました。

レース結果をまとめると、ポールポジションはルノー・アルピーヌA442、ファステストラップも同車、総合優勝はポルシェ936（イクス/ヴァン・レネップ組）、走行距離は4769.923km、平均速度は198.746km/hでした。各クラス優勝は、グループ5: ポルシェ935、GTP: イナルテラ・LM、GT: ポルシェ911カレラRSR、IMSA: ポルシェ911カレラRSR、S2.0: ローラT292、レディース・トロフィー: ランチア・ストラトス、T: などとなりました。

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