1980年のル・マン24時間レース

1980年のル・マン24時間レースは、フランス、ル・マンのサルト・サーキットで6月14日から15日にかけて開催されました。このレースは、いくつかの重要な変更点が盛り込まれたことで知られています。まず、燃料タンク容量が120リットル以下に制限され、ピットでの燃料補給速度も50リットル/分に制限されました。このレギュレーションは、燃費の悪いターボ車を不利にするものでした。さらに、予選と決勝で同一エンジンを使用する必要があり、エンジンの封印が施されました。そして、この年からコンピュータによる自動計時が初めて導入されました。

ポルシェワークスは、新型車の開発を優先したため、ポルシェ・924カレラGTのみの参戦となりました。チームのエース、ジャッキー・イクスは、ラインホルト・ヨーストと組んでポルシェ・908/80で参戦しましたが、このマシンは寄せ集めのパーツで構成されており、戦闘力はそれほど高くありませんでした。

一方、地元ル・マン出身のジャン・ロンドーは、1976年の初出場以来、ル・マンでの成功を目指していました。1979年には3位に入賞しており、1980年には、自らが率いるチームでフォード・コスワース・DFVエンジンを搭載したロンドー・M379Bを3台投入しました。これらのマシンには、異なるドライバー陣が乗り込みました。

日本のマツダは、1979年の予選落ちを教訓に、レースへの体制強化を図るため、1980年のレースを欠場しました。

童夢は、1979年型を改良した童夢・RL80で参戦しました。鈴鹿サーキットや中山サーキットで徹底的なテストを行い、万全の体制で臨みました。ピット作業の訓練も念入りに行い、ピットストップ時間を綿密に計算した上でレースプランを作成しました。このプランに基づくと、24時間で4,909km走行できるという予測が立てられ、ワークスのポルシェ・936には及ばないものの、ポルシェ・935を上回る可能性がありました。スポンサーの都合から、1台に集中して参戦することになりました。

トムスは、この年からル・マンに初参戦しました。童夢が設計した童夢セリカターボをベースに、シュニッツァーがチューニングしたトヨタ・18RGターボエンジンを搭載したマシンでエントリーしました。童夢との合同でル・マン入りし、30名規模のツアーが組まれました。

予選は、前日の公開練習日と合わせて1日だけ行われました。両日とも雨だったため、予選タイムは天候の影響を受けました。童夢は、公開練習日にタイヤパンクを経験し、タイヤとリムの相性に問題があることを発見しました。公式予選では、ミスファイアーに悩まされながらも、最終的に3分49秒8という好タイムを記録しました。このタイムは、トップと5秒差という、上位争いに絡める位置でした。しかし、コンピュータによる自動計時への不信感から、有力チームからのクレームにより、順位が変更され、スタート時は7位からのスタートとなりました。トムスは、ギア比の不具合により、予選落ちしてしまいました。

決勝は55台のマシンが出走、天候は雨でした。童夢はスタート直後からギアトラブルに見舞われ、早々にピットインを余儀なくされました。トランスミッションのオーバーホールが必要となり、3時間12分もの時間を費やしました。上位入賞の可能性は完全に消え去りましたが、その後は当初の予想より速いペースで走行することができました。しかし、燃料供給の不具合により、ピットイン間隔を短縮せざるを得ず、順位を上げることはできませんでした。

レースでは、ポルシェ・935やポルシェ・908/80が一時トップに立ちましたが、トラブルにより後退。ロンドー・M379が上位に浮上していきました。最終的に25台が完走を果たしました。

優勝したのは、ジャン・ロンドー/ジャン＝ピエール・ジョッソー組のロンドー・M379(16号車)でした。24時間で4,608.020kmを走行し、平均速度は192.000km/hを記録しました。ジャン・ロンドーは、自らの名を冠したマシンでル・マンを制した唯一の人物となりました。また、小さなコンストラクターがル・マンを制した数少ない例としても注目されました。2位はジャッキー・イクス/ラインホルト・ヨースト組のポルシェ・908/80(9号車)でした。ポルシェ・924カレラGTも複数台が完走を果たしました。

童夢は多くのトラブルに見舞われましたが、完走を果たし、日本車として初めてル・マン24時間レースを完走したチームとなりました。また、優れたサポート体制が評価され、ETCRA賞を受賞しました。予選と決勝を通して、ラップタイムや最高速度においてもトップクラスの性能を示し、関係者は次の参戦に向けて、経験を積むことの重要性を認識しました。

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