1981年の航空

1981年の航空：変革と挑戦の軌跡

1981年は、航空の世界が多様な進化を遂げた一年でした。商業航空のサービス向上や旧型機の退役、新型機の誕生、さらには宇宙開発や探検、そして軍事的な動きに至るまで、様々な分野で重要な出来事が記録されています。

商業航空の動向と新機軸

この年、世界の主要航空会社ではいくつかの変化が見られました。

年の初め、パンアメリカン航空は長年運用してきたボーイング707型機の運航を終了させました。また、同社は1月には中国民航によるニューヨーク（JFK国際空港）へのボーイング747での初の乗り入れを迎え入れ、1月末には自身もニューヨークと北京を結ぶ週1便の定期路線を開設するなど、国際路線の再編や拡大が見られました。

日本航空は、4月に累計旅客数が1,000万人に到達するという大きな節目を迎えました。また、3月には乗務員訓練において、当時の最新技術であるコンピューターを用いたフライトシミュレーターを初めて導入し、訓練体制の近代化を図りました。

アメリカの航空業界では、新たな動きも起こりました。4月には後に成功を収める格安航空会社、ピープル・エクスプレスが運航を開始。また、アメリカン航空は5月1日に、今日のマイレージサービスの礎となる画期的な顧客プログラム「AAdvantage」をスタートさせました。

一方で、旧世代の機体が商業運航から姿を消す出来事もありました。3月にはエールフランスがパリとアムステルダム間で最後のシュド・カラベルの運航を行い、ブリティッシュ・エアウェイズもまた、ビッカースVC-10の商業飛行を終了させました。

機体製造においては、ベル・ヘリコプターが1月に累計25,000機目のヘリコプターを製造するマイルストーンを達成。マクドネル・ダグラスも9月に1000機目のDC-9型機をスイス航空へ引き渡すなど、生産活動も活発でした。

軍事と技術開発

軍事航空分野では、国際情勢を反映した緊迫した出来事が発生しました。6月、イスラエル空軍のF-16戦闘機がイラクのオシラク原子炉を攻撃し、破壊するという衝撃的な事件が発生しました。7月にも、イスラエル空軍機がパレスチナ人組織への報復としてベイルートを攻撃しています。

8月には地中海のシドラ湾上空で、アメリカ海軍のF-14トムキャット2機がリビア空軍のスホーイSu-22 2機と遭遇し、これらを撃墜する事態が発生しました（シドラ湾事件）。冷戦の代理戦争的な側面も持つ地域紛争の中で、高性能機の存在が示される出来事でした。

技術開発の面では、ステルス技術を応用した新型攻撃機であるF-117ナイトホークが6月18日に初の試験飛行を行いました。その存在は極秘とされていましたが、後の航空戦術に大きな影響を与える機体でした。

アメリカでは、10月にはレーガン大統領が、カーター政権下で計画が中断されていたB-1ランサー戦略爆撃機の開発再開と、改良型であるB-1Bを100機発注することを表明しました。これは冷戦下の軍事バランスにおける重要な決定でした。

探検と宇宙への挑戦

航空による挑戦も続けられました。気球を用いた世界一周飛行を目指したマックス・アンダーソンとドン・アイダの試みは、2月にエジプトのルクソールからインドのニューデリーまでの4667kmを飛行したものの、成功には至りませんでした。しかし、11月にはベン・アブルッツォらが搭乗した気球「ダブルイーグルV」号が太平洋横断に成功し、新たな記録を打ち立てました。

人力飛行の分野では、スティーブン・プタセク氏が7月、太陽電池を動力とする「ソーラー・チャレンジャー」機で、およそ5時間をかけてドーバー海峡横断に成功するという、再生可能エネルギーを用いた飛行の可能性を示す偉業を成し遂げました。

そして、この年の最も特筆すべき出来事の一つとして、宇宙開発における歴史的な一歩があります。4月12日、アメリカ初の再使用型宇宙往還機であるスペースシャトル「コロンビア」が打ち上げられ、2日後に無事着陸成功を果たしました。これは、人類が宇宙へアクセスする手段に新たな道を開くものでした。

事故と人物

悲劇的な事故も発生しました。10月6日、オランダのNLMシティホッパー航空431便、フォッカーF28型機が竜巻に巻き込まれ、機体が空中分解し墜落しました。この事故により、乗員4名、乗客13名の尊い命が失われました。

年末には、アメリカ空軍のトーマス・ティラー氏が大西洋上で事故に遭い、ボートで7日間漂流の末、救助されるという出来事がありました。

航空史に名を刻む偉大な人物たちがこの世を去った年でもありました。2月にはダグラス・エアクラフト社の創始者であるドナルド・ダグラス氏が、同月に航空技術者でノースロップ社の創業者であるジャック・ノースロップ氏が逝去しました。4月にはパンアメリカン航空の創設者であるファン・トリップ氏がロサンゼルスにて他界しています。

年末と受賞者

年末にかけても様々な動きがありましたが、1981年は航空技術、商業運用、そして軍事戦略の各方面で大きな変化と挑戦が交錯した、航空史における重要な一年として記憶されています。

この年、航空分野で顕著な功績を挙げた人々には、ハーモン・トロフィー（ジェリー・フォスター、ジャニス・リー・ブラウン）、宇宙飛行士部門の賞（ジョン・ヤング、ロバート・クリッペン、ジョゼフ・イーグル、リチャード・トルーリー）、そしてデラボー賞（ベン・アブルッツォ、ジョン・ヤング、ワレリー・リューミン）などが授与されました。

1981年の出来事は、その後の航空の発展、特に宇宙開発や軍事技術、そして商業サービスのあり方に影響を与える礎石となったと言えるでしょう。

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