1982年のラジオ (日本)

1982年は、日本のラジオ界にとって、新たな息吹と時代の移り変わりが交錯した、活気に満ちた一年でした。

ラジオのインフラ面では、重要な変化がありました。特に注目されるのは、NHKラジオ第1放送の技術的な強化です。3月31日には、東京地区をカバーする主要送信所が埼玉県川口市から菖蒲久喜町へと移転を完了しました。この移転に伴い、送信出力が従来の100kWから300kWへと大幅に引き上げられました。これにより、首都圏およびその周辺地域におけるNHKラジオ第1の聴取環境が著しく改善され、より多くのリスナーにクリアな音声を安定して届けられるようになりました。

この年はまた、FM放送の全国的な広がりを示す年でもありました。各地で新しいFM放送局が相次いで産声を上げました。2月1日には愛媛県でエフエム愛媛が開局。その後も、9月15日に北海道でエフエム北海道（AIR-G'）、10月1日に長崎県でエフエム長崎（FM Nagasaki）、12月1日には宮城県でエフエム仙台（Date fm）、そして12月5日には広島県で広島エフエム放送（HFM）が開局しました。これらの新局誕生は、その地域の音楽文化の振興や、きめ細かい地域情報の発信に大きく寄与し、リスナーにとってラジオの選択肢がさらに多様化する契機となりました。

番組編成の面では、長年親しまれてきた番組が惜しまれつつ終了する一方で、新たな人気番組が多数登場し、ラジオの風景を塗り替えました。

終了した主な番組:
長きにわたり深夜放送を牽引してきたTBSラジオの看板番組『パックインミュージック』が、7月末にその歴史に幕を下ろしました。深夜ラジオの一つの時代が終わったことを象徴する出来事でした。他にも、文化放送の夕方の顔だった『桂竜也の夕焼けワイド』が10月に、ニッポン放送の若者向け人気番組『ザ・パンチ・パンチ・パンチ』が12月に終了するなど、多くのリスナーに親しまれた番組がその役割を終えました。

新たに開始された主な番組:
新しい番組としては、NHKでは、硬派なニュース・情報番組『NHKジャーナル』や、最先端科学を紹介する『サイエンスウィークリー』、多様な文化に触れる『文化時評』などがラジオ第1・第2でスタートしました。民放では、ニッポン放送で『桑田佳祐のミスターポップス!』、『谷山浩子のオールナイトニッポン』といった、後に人気を博す深夜番組が始まりました。TBSラジオでは『るんるんナイト ワオ!』、文化放送では辛口の時評で話題を呼んだ『世相ホットライン ハイ!竹村健一です』、そして各地で個性的なワイド番組（例: CBCラジオ『小堀勝啓のわ!Wide とにかく今夜がパラダイス』、MBSラジオ『おはよう上田彰です』など）や深夜番組（例: ラジオたんぱ『セクシー・オールナイト』）が開始され、リスナー層の拡大と多様なニーズに応えようとする動きが見られました。

* 特別番組と記念企画:
放送局の節目を祝う特別番組も多数企画されました。文化放送は30時間におよぶ長時間の特別企画『30時間キンキンキラキラ大放送 ラジオはくらしの太陽だ』を実施。東北放送や北日本放送、中国放送、静岡放送なども、開局30周年などを記念した長時間特番を放送し、リスナーと共に歩んだ歴史を振り返り、感謝の気持ちを伝えました。

1982年は、技術インフラの強化、新しい放送局の設立、そして番組の多様化と世代交代という、ラジオ界の多岐にわたる側面で大きな動きが見られた年であり、その後の日本のラジオ文化の発展に向けた重要な転換点の一つとなったと言えるでしょう。

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