1982年サンマリノグランプリ

1982年サンマリノグランプリ：ボイコットとフェラーリ内紛の影

1982年4月25日、イタリア・イモラ・サーキットで開催されたF1世界選手権第4戦サンマリノグランプリは、数々のドラマを生んだ忘れられない一戦となりました。その背景には、前戦までの出来事が大きく影響しています。

第2戦ブラジルグランプリで優勝したネルソン・ピケ（ブラバム）と2位ケケ・ロズベルグ（ウィリアムズ）の車両に搭載されていた水タンクを巡り、国際自動車スポーツ連盟(FISA)が抗議。当初は認められましたが、続くアメリカ西グランプリ後に両者失格処分が下され、水タンクの使用も禁止されました。

この裁定に反発した[フォーミュラ・ワン・コンストラクターズ・アソシエーション]に所属するブラバム、ウィリアムズ、ロータス、マクラーレンなど多くのチームがサンマリノグランプリへのボイコットを決定。マクラーレンのニキ・ラウダがレース参加を訴えかけましたが、ボイコットは覆りませんでした。

結果、レースに参加したのはフェラーリ、ルノー、アルファロメオの3チームと、FOCA所属ながら参加したティレル（イタリア企業からのスポンサーシップ）、トールマン、ATS、オゼッラの7チーム14台のみという異例の事態となりました。ティレルは、新しいスポンサーがイタリア企業だったことが参加の理由でした。

予選ではルノーのルネ・アルヌーがポールポジションを獲得。チームメイトのアラン・プロストが2位に続き、ルノーがフロントローを独占しました。3位にはジル・ヴィルヌーヴ、4位にはディディエ・ピローニと、地元フェラーリ勢が続きました。

決勝レースは、13台でのスタートとなりました。オゼッラのリカルド・パレッティはエンジントラブルによりピットスタートでした。序盤はルノーの2台がリードを奪いましたが、プロストが6周目にリタイヤ。アルヌーがトップを快走する展開に。フェラーリのヴィルヌーヴとピローニが追いかける展開となりました。

しかし、アルヌーも44周目にエンジントラブルでリタイヤ。ヴィルヌーヴがトップに躍り出ます。その後ろにはファステストラップを記録したピローニがぴったりとつけ、激しい接戦が繰り広げられました。3位を走行するミケーレ・アルボレート（ティレル）との差は40秒。燃料切れを懸念したチームからフェラーリの2台に「SLOW」の指示が出されました。ヴィルヌーヴは指示に従いますが、53周目にピローニがトップに立ちます。

その後、ヴィルヌーヴが59周目に再びトップに立ちますが、両者再びペースダウン。しかし、最終周のトサコーナー手前でピローニがヴィルヌーヴを抜き去り、優勝を掴みました。このまさかの展開にヴィルヌーヴは激怒。レース後のパレードへの同乗を拒否し、表彰式でも終始憮然とした表情でピローニを無視して、ヘリコプターでモナコへと帰っていきました。ヴィルヌーヴは「二度とピローニと話さない」とまで語ったと言われています。この出来事が、続くベルギーグランプリ予選でのヴィルヌーヴの事故死につながったという見方もあります。

このレースには、後にF1ドライバーとして活躍するゲルハルト・ベルガーが観客として訪れていました。彼は、ティレルで3位表彰台を獲得したアルボレートのコーナリングスピードに驚き、「こんなクレイジーな真似はできない」と感じたと言います。

1982年サンマリノグランプリは、ボイコットという異例の状況下、フェラーリ勢の激しい争い、そしてドライバー間の確執という、多くのドラマが凝縮されたレースとして記憶されています。このレースは、F1の歴史において重要な転換点の一つとして語られるべきでしょう。

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