1988年の航空
1988年は、航空の歴史において様々な記録の更新、新しい技術の登場、そして残念ながら複数の痛ましい事故が起こった激動の一年でした。
年明け早々の1月26日には、航空機技術の進化を示す出来事がありました。大型旅客機であるボーイング747型機が、無着陸での世界一周飛行に挑戦し、36時間54分という驚異的な記録を樹立しました。
春には企業の動きが見られました。日本の航空会社である東亜国内航空が、4月1日付けで社名を日本エアシステムへと変更しました。これは、その後の日本の航空業界の再編を予感させる動きでもありました。
4月23日には、人力飛行機の分野で画期的な記録が生まれました。ギリシャのカネロス・カネロプーロス氏が、マサチューセッツ工科大学が開発した人力飛行機「ダイダロス号」を駆り、クレタ島からサントリーニ島までの119キロメートルを約4時間かけて飛行しました。これは人力飛行機による最長飛行記録として、今もその名を残しています。
新しい機材の導入も進みました。5月10日には、エアバス社が開発したエアバスA300型機がアメリカン航空に引き渡され、商業運航を開始しました。また、5月23日にはサウスウエスト航空が、鯨をモチーフにした特別な塗装を施したボーイング737-300型機「シャムワン」の運航を開始し、注目を集めました。
航空業界の再編としては、5月24日にイギリスのブリティッシュ・エアウェイズが、ブリティッシュ・カレドニアン航空を吸収合併したことも大きなニュースでした。
6月には、スウェーデン生まれの冒険家ペール・リンドストランド氏が、テキサス州で熱気球による高度飛行記録を樹立しました。その高度は19,811メートル（約6万5千フィート）に達し、熱気球による世界最高高度記録となりました。
しかし、この年は複数の悲劇的な航空事故や事件も発生しました。6月26日、フランスのミュールーズ・アブザイムで開催されたエアショーにおいて、デモンストレーション飛行を行っていたエールフランスのエアバスA320型機が墜落し、乗客3名が犠牲となる事故（エールフランス296便事故）が発生しました。この事故は、当時最新鋭であったA320型機のフライ・バイ・ワイヤシステムの運用や、低空での飛行に関する議論を呼びました。
軍用機の分野では、6月28日にソビエト連邦のスホーイ35（Su-35）戦闘機が初飛行を行いました。また、12月9日にはスウェーデンの新型戦闘機、サーブ 39 グリペンも初飛行を成功させています。
7月3日には、アメリカ海軍のイージス巡洋艦「ヴィンセンス」が、ペルシャ湾上空を飛行していたイラン航空のエアバスA300型機を誤って攻撃し、撃墜するという悲惨な事件が発生しました。このイラン航空655便撃墜事件により、乗員・乗客合わせて290名全員が犠牲となりました。
また、この夏には、11歳の少年クリス・マーシャル氏が操縦するムーニー M20型機が、サンディエゴからパリまでの大西洋横断飛行を達成したという注目すべき出来事もありました（7月8日～13日）。
日本の航空インフラにおいても進展がありました。7月20日に、北海道の新しい玄関口となる新千歳空港が開港しました。
8月28日には、西ドイツ（当時）のラムシュタイン空軍基地で開催されたエアショーで、イタリアの曲技飛行隊「フレッチェ・トリコローリ」の航空機が衝突し墜落する事故が発生し、パイロットを含む33名の犠牲者が出ました。
秋には、ニアミス事件も報告されています。10月12日、バー・ハーバー航空のATR-42型機が、時の大統領専用機であるエアフォースワンと1000フィート（約300メートル）以内という危険な距離まで接近しました。
旅客機の開発も継続され、10月27日にはイタリアとフランスが共同開発したターボプロップ双発旅客機、ATR 72が初飛行を行いました。
ステルス技術の実用化を示す重要な発表もありました。11月10日、アメリカ空軍はそれまで極秘であったステルス戦闘機、F-117 ナイトホークの存在を初めて公式に公開しました。
そして、年末の12月21日、ロンドンからニューヨークへ向かっていたパンアメリカン航空103便、ボーイング747型機が、スコットランド上空でリビアのテロリストによって仕掛けられた爆弾により空中分解し墜落しました。このパンアメリカン航空103便爆破事件、通称「ロッカビー事件」では、搭乗者全員と地上の犠牲者を合わせて270名が命を落としました。
このように、1988年は航空技術の発展や記録樹立、企業の動きが見られる一方で、複数の悲劇的な事故や事件が起こり、航空の安全性と向き合うことの重要性を改めて認識させられた一年となりました。
この年、航空分野で顕著な功績を挙げた人々が様々な賞を受賞しています。ハーモン・トロフィーは、人力飛行機で記録を樹立したカネロス・カネロプーロス氏、アン・バドゥール氏、そして熱気球の高度記録を樹立したペール・リンドストランド氏らに贈られました。FAI・ゴールド・エア・メダルはオーガスト・クリストフ・カバクチエフ氏に、イギリス飛行クラブ金賞はペール・リンドストランド氏に授与されています。
1988年の航空界は、栄光と悲劇が交錯する、歴史に刻まれる一年であったと言えるでしょう。
年明け早々の1月26日には、航空機技術の進化を示す出来事がありました。大型旅客機であるボーイング747型機が、無着陸での世界一周飛行に挑戦し、36時間54分という驚異的な記録を樹立しました。
春には企業の動きが見られました。日本の航空会社である東亜国内航空が、4月1日付けで社名を日本エアシステムへと変更しました。これは、その後の日本の航空業界の再編を予感させる動きでもありました。
4月23日には、人力飛行機の分野で画期的な記録が生まれました。ギリシャのカネロス・カネロプーロス氏が、マサチューセッツ工科大学が開発した人力飛行機「ダイダロス号」を駆り、クレタ島からサントリーニ島までの119キロメートルを約4時間かけて飛行しました。これは人力飛行機による最長飛行記録として、今もその名を残しています。
新しい機材の導入も進みました。5月10日には、エアバス社が開発したエアバスA300型機がアメリカン航空に引き渡され、商業運航を開始しました。また、5月23日にはサウスウエスト航空が、鯨をモチーフにした特別な塗装を施したボーイング737-300型機「シャムワン」の運航を開始し、注目を集めました。
航空業界の再編としては、5月24日にイギリスのブリティッシュ・エアウェイズが、ブリティッシュ・カレドニアン航空を吸収合併したことも大きなニュースでした。
6月には、スウェーデン生まれの冒険家ペール・リンドストランド氏が、テキサス州で熱気球による高度飛行記録を樹立しました。その高度は19,811メートル（約6万5千フィート）に達し、熱気球による世界最高高度記録となりました。
しかし、この年は複数の悲劇的な航空事故や事件も発生しました。6月26日、フランスのミュールーズ・アブザイムで開催されたエアショーにおいて、デモンストレーション飛行を行っていたエールフランスのエアバスA320型機が墜落し、乗客3名が犠牲となる事故（エールフランス296便事故）が発生しました。この事故は、当時最新鋭であったA320型機のフライ・バイ・ワイヤシステムの運用や、低空での飛行に関する議論を呼びました。
軍用機の分野では、6月28日にソビエト連邦のスホーイ35（Su-35）戦闘機が初飛行を行いました。また、12月9日にはスウェーデンの新型戦闘機、サーブ 39 グリペンも初飛行を成功させています。
7月3日には、アメリカ海軍のイージス巡洋艦「ヴィンセンス」が、ペルシャ湾上空を飛行していたイラン航空のエアバスA300型機を誤って攻撃し、撃墜するという悲惨な事件が発生しました。このイラン航空655便撃墜事件により、乗員・乗客合わせて290名全員が犠牲となりました。
また、この夏には、11歳の少年クリス・マーシャル氏が操縦するムーニー M20型機が、サンディエゴからパリまでの大西洋横断飛行を達成したという注目すべき出来事もありました（7月8日～13日）。
日本の航空インフラにおいても進展がありました。7月20日に、北海道の新しい玄関口となる新千歳空港が開港しました。
8月28日には、西ドイツ（当時）のラムシュタイン空軍基地で開催されたエアショーで、イタリアの曲技飛行隊「フレッチェ・トリコローリ」の航空機が衝突し墜落する事故が発生し、パイロットを含む33名の犠牲者が出ました。
秋には、ニアミス事件も報告されています。10月12日、バー・ハーバー航空のATR-42型機が、時の大統領専用機であるエアフォースワンと1000フィート（約300メートル）以内という危険な距離まで接近しました。
旅客機の開発も継続され、10月27日にはイタリアとフランスが共同開発したターボプロップ双発旅客機、ATR 72が初飛行を行いました。
ステルス技術の実用化を示す重要な発表もありました。11月10日、アメリカ空軍はそれまで極秘であったステルス戦闘機、F-117 ナイトホークの存在を初めて公式に公開しました。
そして、年末の12月21日、ロンドンからニューヨークへ向かっていたパンアメリカン航空103便、ボーイング747型機が、スコットランド上空でリビアのテロリストによって仕掛けられた爆弾により空中分解し墜落しました。このパンアメリカン航空103便爆破事件、通称「ロッカビー事件」では、搭乗者全員と地上の犠牲者を合わせて270名が命を落としました。
このように、1988年は航空技術の発展や記録樹立、企業の動きが見られる一方で、複数の悲劇的な事故や事件が起こり、航空の安全性と向き合うことの重要性を改めて認識させられた一年となりました。
この年、航空分野で顕著な功績を挙げた人々が様々な賞を受賞しています。ハーモン・トロフィーは、人力飛行機で記録を樹立したカネロス・カネロプーロス氏、アン・バドゥール氏、そして熱気球の高度記録を樹立したペール・リンドストランド氏らに贈られました。FAI・ゴールド・エア・メダルはオーガスト・クリストフ・カバクチエフ氏に、イギリス飛行クラブ金賞はペール・リンドストランド氏に授与されています。
1988年の航空界は、栄光と悲劇が交錯する、歴史に刻まれる一年であったと言えるでしょう。
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