1992年のラジオ (日本)

1992年、日本のラジオは技術と制度、そして番組内容の両面で大きな変革期を迎えました。

最も顕著な動きの一つは、AMステレオ放送の本格的な開始です。3月15日には、東京の主要局であるTBSラジオ、文化放送、ニッポン放送と、関西の朝日放送、毎日放送の計5社が同日午前9時にAMステレオ放送を開始し、記念特別番組を放送しました。これにより、それまでのモノラル放送では得られなかった豊かな音響での番組提供が可能となりました。この動きは全国に広がり、4月1日にはRKB毎日放送と九州朝日放送が、4月4日には中部日本放送と東海ラジオが、8月1日には北海道放送が、10月1日には中国放送が、そして10月5日には山陽放送がそれぞれAMステレオ放送を開始。主要なAM局の多くでステレオ化が進んだ一年となりました。

また、この年はコミュニティ放送（コミュニティFM）が制度化された年でもあります。1月には放送法施行規則が改正され、地域に根ざした小規模なFM放送局の設立が可能となりました。そして12月24日には、日本初のコミュニティFM局となるFMいるかが開局。これは、後の地域密着型ラジオ局の展開の嚆矢となる出来事でした。

新しいFM局の開局も相次ぎました。4月1日にはエフエム徳島、エフエム高知、エフエム佐賀の3局が、10月1日にはエフエム鹿児島が開局。これにより、それまでFM放送が十分に普及していなかった地域でも、新たな選択肢がリスナーに提供されることになりました。

番組の面でも様々な動きがありました。長年親しまれた番組がその歴史に幕を下ろす一方、数多くの新番組が誕生しました。例えば、1965年から27年以上にわたり続いたABCラジオの長寿番組『サンデーダークダックス』が3月29日に終了しました。また、ニッポン放送制作の平日昼間の帯番組『クラウンレコード1万円クイズ』も月末に終了しています。

その一方で、4月6日からはニッポン放送制作の新たな平日昼間の裏送り番組として『ミュージックスクランブル』がスタート。これは各地の放送局で多くのリスナーに聞かれる番組となりました。そして、深夜ラジオの人気番組『オールナイトニッポン』も秋に大きな改編を実施。長年番組を支えてきたパーソナリティの一部が交代し、月曜は加藤いづみ、火曜は電気グルーヴ、水曜は裕木奈江、木曜は福山雅治といった新しい顔ぶれが登場し、新たなリスナー層を獲得していきました。この他にも、ニュース、音楽、バラエティ、教養など、多岐にわたるジャンルで数多くの新番組が各局で開始され、番組ラインナップが大きく刷新されました。

特別な取り組みも行われました。4月18日には、NHKラジオ第1放送が異例の試みとして、ニュースなどを除くほとんどの時間を大阪弁のみで進行する9時間の特別番組『大阪弁でしゃべるデー』を全国放送しました。これはNHKの全国放送としては初めて特定の地域方言を長時間使用する実験的な企画でした。また、7月26日の第16回参議院議員通常選挙に際しては、各局がそれぞれ趣向を凝らした開票特別番組を深夜まで放送し、選挙結果や政治情勢を速報・解説しました。

1992年は、AMステレオ放送の普及、コミュニティFMの誕生、多数の新規FM局の開局といったハード・ソフト両面の進化に加え、多様な新番組や実験的な企画が生まれるなど、日本のラジオ放送が変化と発展を遂げた意義深い一年であったと言えるでしょう。

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