1993年ヨーロッパグランプリ

1993年F1世界選手権第3戦、ヨーロッパグランプリは、1993年4月11日、イギリスのドニントン・パークで開催されました。当初、日本・オートポリスでアジアGPが開催予定でしたが、サーキット運営会社の倒産によりキャンセルされたため、代替地としてヨーロッパGPが開催されることになったのです。1985年のブランズハッチ以来となるヨーロッパGP、そしてドニントン・パークではF1世界選手権初開催という歴史的なレースとなりました。

前戦ブラジルGP後には、ジョーダンからイヴァン・カペリが解雇され、そのシートにはティエリー・ブーツェンが着任するという人事異動もありました。

予選では金曜日のセッションはウェットコンディション。マクラーレンのアイルトン・セナが暫定ポールポジションを獲得しました。しかし、土曜日の予選2回目はドライコンディションとなり、ウィリアムズの真価が発揮されます。アラン・プロストは開幕3戦連続ポールポジションを獲得。チームメイトのデイモン・ヒルも0.3秒差の2位と好成績を残しました。ベネトンは最新鋭マシンB193Bを投入しましたが、まだトラクションコントロールシステムを搭載しておらず、ミハエル・シューマッハは3位に甘んじ、プロストから1.5秒遅れました。プロストは決勝への自信を覗かせつつも、ウェットコンディションへの懸念を示した一方、セナは雨を期待するコメントを残しました。

決勝日は気温9度、まさにブリティッシュウェザーと呼ぶにふさわしい変わりやすい天候となりました。スタート時は雨が上がっていましたが、路面はセミウェット。アルボレートを除く全車がレインタイヤを装着してスタートしました。

スタート直後、ウィリアムズ勢が好スタートを切り、シューマッハとセナが接触する隙をついて、ヴェンドリンガーが3番手につけます。セナは一時5番手に落ちましたが、次々と順位を上げ、最終的にメルボルンヘアピンでプロストを抜き、トップに立ちました。セナのチームメイトであるアンドレッティは上位進出を狙いましたが、ヴェンドリンガーとの接触によりリタイアとなってしまいました。

タイヤが温まりきるまではセナが圧倒的なペースで周回を重ね、プロストを大きく引き離しました。その後ろにはバリチェロ、アレジ、シューマッハが続いていました。しかし、路面状況は刻々と変化し、ピットでのタイヤ交換作業は慌ただしく行われました。

路面が乾き始めると、各車スリックタイヤに交換を始めましたが、再び雨が降り出し、22周目にはシューマッハがスピンしてリタイア。プロストはスリックからレインタイヤ、そして再びスリックとタイヤ交換を繰り返しました。セナも同様にタイヤ交換を繰り返しましたが、34周目のピットインで右リアタイヤ交換に手間取り、プロストにトップを奪われてしまいます。

プロストは状況変化に対応し、レインタイヤに交換しますが、雨量が予想より少なく、スリックタイヤで走り続けたセナに再び逆転されてしまいます。さらに48周目、スリックタイヤに戻した際にピットでエンジンストールし、コース復帰したときにはセナに周回遅れにされていました。

2位争いを演じていたバリチェロは、残り6周で燃圧低下によりリタイア。ピットストップ1回で走り続けたハーバートは2戦連続4位入賞、バルバッツァは6位で初ポイントを獲得しました。

セナは2位ヒルに1分23秒の大差をつけて優勝。ブラジルGPに続く、雨のレースでの勝利となりました。レース後の会見では、ギアボックスのトラブルを訴えたプロストに対し、「僕のマシンと交換してあげようか？」とセナは冗談を飛ばしました。

このレースでは、ピットストップが延べ68回も記録され、セナ5回、ヒル6回、プロスト7回と上位陣も頻繁にピットインしました。

57周目にセナが記録したファステストラップは、ピットレーンを通過した際に記録されたという珍しい記録でした。ピットインしたセナはタイヤ交換の準備が整っていないのを見て、そのままピットを素通りしコースに戻ったのです。ドニントンのコースレイアウトと、当時のピットレーン速度制限がないことが、この珍事を起こした要因です。

このレースは、ウィリアムズのサブスポンサーであるセガが冠スポンサーを務め、大々的なプロモーションが行われました。セガの人気キャラクター、ソニック・ザ・ヘッジホッグを模した優勝トロフィーが制作されましたが、皮肉にもそれを手にしたのは、ウィリアムズを破ったセナでした。

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