1996年中華民国総統選挙

1996年中華民国総統選挙の概略

1996年3月23日、台湾において行われた中華民国総統選挙は、歴史的な瞬間となりました。この選挙は中華民国史上初めての総統直接選挙であり、従来の個別選出方式から、総統および副総統のペア候補が同時に投票されるシステムに変更されました。本選挙は台湾の民主化において重要なステップを象徴しています。

選挙の背景

1995年9月5日に中央選挙委員会は、総統選挙の日程を1996年3月23日に設定しました。この選挙には、中国国民党の現職総統・李登輝が立候補し、彼の副総統候補は行政院長の連戦です。これに対抗して、元司法院長の林洋港と元行政院長の郝柏村が新しい政党の支援を受けながら無所属候補として立ち上がりました。

また、この選挙には民主進歩党から彭明敏と謝長廷が、元監察院長の陳履安と元監察委員の王清峰が無所属で立候補するなど、多様な候補者が乱立しました。

中華人民共和国の反発

台湾の住民による指導者選出が国際的な波紋を呼び起こし、中国政府は強く反発しました。特に李登輝の民主化政策に対しては「祖国の分断」と非難され、彭明敏への対応としては「戦争を選ぶことになる」と警告しました。これに対し、中国人民解放軍はミサイル演習を実施し、台湾周辺の軍事緊張は高まりました。この状況に対しアメリカ合衆国も第7艦隊を派遣する事態となり、両岸関係は一気に緊迫化しました。

選挙制度

李登輝の進めた民主化により、1994年には憲法と選挙法が改正され、国民による直接選挙が導入されました。総統と副総統はペアで出馬し、当選者は比較多数の候補者ペアから選ばれることとなりました。総統任期は6年から4年に短縮され、引き続き連続再選は3回目まで禁止されています。

選挙権は20歳以上の中華民国国民が与えられ、被選挙権を得るには40歳以上で15年以上中華民国国民であることが求められました。無所属で立候補する場合は、有権者の署名を一定数集める必要がありました。

候補者の動向

中国国民党は1995年の党大会で李登輝を正式に総統候補に選出し、その後連戦を副総統に指名しました。これに対し、民主進歩党は彭明敏を総統候補に選出し、彼は立法委員の謝長廷を副総統に指名しました。

一方で、無所属で出馬した元監察院長や元監察委員は、反李登輝グループに属しており、党内の対立が見られました。

選挙結果

最終的に、李登輝は有効投票数の過半数を獲得し、総得票数は5,813,699票（得票率54.00%）に達しました。全25の県市中、24件での圧倒的な支持を集め、特に台北県では80%を超える得票率を記録しました。無所属の林洋港が唯一南投県で李登輝を上回る得票を果たしましたが、全体としては李登輝が勝利し、台湾の政治構図を一変させる結果となりました。

この選挙は台湾の民主主義にとって重要な転換点となり、今後の台湾の政治のあり方に大きな影響を与えました。

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