1999年の航空

1999年 航空界の記録

1999年は、航空技術の進歩を示す新型機の登場や、人類の冒険心を象徴する歴史的な飛行が達成された一方で、航空事故という悲劇も刻まれた、多様な出来事に彩られた一年でした。

年の初め、2月11日にはロシアで開発された中短距離向けの新たなジェット旅客機、ツポレフTu-334が最初のテスト飛行を実施しました。将来の地域間輸送を担う可能性を秘めた機体の誕生です。

3月に入ると、民間の宇宙開発分野から興味深い構想が披露されました。3月1日、ロータリー・ロケット社は、将来的な宇宙往還を目指す再利用型ロケット「ロートンATV」のモデルを発表しました。この機体は、先端に4枚の翼を持つプロペラを備え、帰還時の着陸プロセスでプロペラを展開・回転させて減速し、垂直に着地するというユニークな設計思想が示されていました。

同じく3月には、航空史に名を刻む偉業が達成されました。3月1日から21日にかけて、スイスの冒険家ベルトラン・ピカールとイギリスの気球操縦士ブライアン・ジョーンズが、「ブライトリング オービター 3」と名付けられたロジェ気球を用い、人類史上初となる無着陸での世界一周飛行を見事に成功させたのです。彼らは約20日間のフライトで40,814キロメートルの距離を飛び、477時間47分という長時間を空の上で過ごしました。この偉業は世界中に感動と驚きをもたらしました。

春を迎える4月14日には、かつて超音速の夢を乗せて飛んだロシアの超音速輸送機ツポレフTu-144が、モスクワ近郊のジュコフスキー飛行場で最後の飛行を行い、その歴史に幕を下ろしました。一方、4月27日には、ビジネスジェットの分野で定評のあるセスナ社から、新たなサイテーションジェットが最初のフライトを行いました。

夏には、日本の空で衝撃的な事件が発生しました。7月23日、全日空61便がハイジャックされ、尊い機長の命が奪われた上、犯人が操縦桿を握るという、日本の航空史上空前の事態となりました。この事件は、航空機のセキュリティに対する認識を改めて問い直すきっかけとなりました。

夏が終わりに近づく8月17日には、ロシア製の新型ヘリコプター、カザンAnsatが初のテスト飛行を実施し、その開発が進んでいることを示しました。

秋の10月には、日本の大手航空会社である全日本空輸（ANA）が、世界の主要航空会社が加盟する国際的な航空連合「スターアライアンス」に加わりました。この加盟により、ANAのネットワークは世界規模に拡大し、利用者の利便性が向上しました。同年には、ニュージーランド航空やアンセット・オーストラリア航空もこのアライアンスに加わっており、世界の航空業界における連携強化が進んだ年でもありました。

しかし、この年も悲劇的な事故が発生しました。10月31日、エジプト航空990便（ボーイング767-300ER）が大西洋上で墜落しました。調査の結果、副操縦士による異常な操縦が原因とされ、搭乗者217名全員が犠牲となる痛ましい事故となりました。この事故は、航空機の安全運航における人的要因の重要性を改めて浮き彫りにしました。

こうした航空界の様々な出来事の中で、特に顕著な功績を挙げた個人には、権威ある賞が贈られました。気球による無着陸世界一周を成し遂げたベルトラン・ピカールとブライアン・ジョーンズは、その偉業によりハーモン・トロフィー、FAI・ゴールド・エア・メダル、そしてフランス飛行クラブ大賞といった複数の重要な賞を受賞し、その功績が広く認められました。また、ハーモン・トロフィーはドン・キャメロン氏にも授与されています。デラボー賞は、宇宙飛行士のセルゲイ・アヴデエフ氏に贈られました。

1999年に発生したこれらの出来事は、航空に関する年表や、不幸にも発生した航空事故の一覧といった記録に後世へと語り継がれています。また、この年の宇宙飛行に関する出来事も、航空分野と関連する形で記録されています。1999年は、技術革新と人類の挑戦が進む一方で、安全への課題も改めて浮き彫りになった、航空史において重要な意味を持つ一年と言えるでしょう。

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