2つの悲しき旋律

『2つの悲しき旋律』作品34について

『2つの悲しき旋律』（ノルウェー語: To elegiske melodier）作品34は、ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグが1880年に作曲した、2曲からなる弦楽合奏曲です。『2つの悲歌的旋律』とも訳されます。

この作品は、ノルウェーの農民詩人オスムン・オラヴソン・ヴィニエの詩による歌曲集『12のメロディ』作品33から2曲を選んで編曲したものです。グリーグは、ヴィニエの詩に触発され、多くの歌曲を作曲しました。その中でも特に、『12のメロディ』は重要な位置を占めています。この歌曲集から選ばれた2曲が、弦楽合奏のために編曲され、『2つの悲しき旋律』として新たな命を吹き込まれました。

作曲の経緯

ヴィニエは、ランスモール（ニーノシュク）による詩作の先駆者であり、グリーグは彼の詩に大きな影響を受けました。グリーグは、1873年から1880年にかけてヴィニエの詩に曲をつけ、そのうち12曲が『12のメロディ』として出版されました。

1880年、グリーグはベルゲンのオーケストラ「ハルモニエン」の指揮者に就任。このオーケストラでの演奏を想定し、歌曲集から2曲を選び、弦楽合奏用に編曲しました。初演は同年、グリーグ自身の指揮で行われたと考えられていますが、正確な月日は不明です。

1881年には、ライプツィヒのペータース社から出版され、友人であるハインリヒ・フォン・ヘルツォーゲンベルクに献呈されました。また、ピアノ独奏版や連弾版も編曲され、1887年に出版されています。

さらに、『12のメロディ』からはもう1曲が、『2つのメロディ』作品53の第1曲として、1891年に弦楽合奏用に編曲されています。

楽器編成

弦楽合奏のために書かれており、通常の5部構成ではなく、第2ヴァイオリンとヴィオラがそれぞれ2部に分かれた7部構成を基本としています。特に「春」では、第1ヴァイオリンとチェロも2部に分かれ、9部構成となる点が特徴です。

演奏時間

• - 第1曲「傷ついた心」：約3-4分
• - 第2曲「春」：約5-6分

楽曲の内容

第1曲「傷ついた心」

原題はHjertesårで、「胸の痛手」とも訳されます。原曲は『12のメロディ』作品33の第3曲。生活に疲れ傷ついた詩人の心が、春の訪れと共に蘇る様子を描いています。編曲では、原曲の第1節と第3節のメロディやハーモニーにわずかな変更が加えられています。

楽曲構成はシンプルで、主題旋律が楽器や伴奏を変えながら3回繰り返されます。このシンプルな構成の中に、詩人の感情の機微が繊細に表現されています。

第2曲「春」

原題はVårenです。ペータース社から出版された際、初版ではドイツ語で「Der Frühling」と訳されましたが、後に「Letzter Frühling」（最後の春）と改題されました。この改題が誤訳され、「過ぎにし春」あるいは「過ぎた春」と呼ばれることもあります。

詩の内容は、その年に訪れた春を、これが自分にとって最後の春であろうという感慨と共に眺めるというものです。グリーグの代表的な歌曲の一つであり、1894年には管弦楽伴奏版も作られています。

この曲は、原曲の4節のうち第2節を用いて編曲されており、主題旋律が2回繰り返されるだけのシンプルな構成です。しかし、その旋律は非常に美しく、聴く人の心を深く捉えます。

『2つの悲しき旋律』は、グリーグの音楽の中でも特に親しみやすく、弦楽合奏の美しい響きを通して、彼の音楽世界を堪能できる作品です。それぞれの曲が持つ繊細な感情表現は、聴く人の心を深く揺さぶります。

参考文献

• - 『作曲家別名曲解説ライブラリー18 北欧の巨匠』（音楽之友社、1994年）「2つの悲歌的旋律 op.34」p.30-32、「春 op.33―2」p.92-93（菅野宏和執筆）

外部リンク

• - 2つの悲しき旋律の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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