2ストロークオイル

2ストロークオイル：2ストロークエンジンの心臓部を潤滑する特殊オイル

2ストロークオイルは、その名のとおり2ストロークエンジン専用の潤滑油です。2サイクルオイル、2ストオイル、2stオイルなどとも呼ばれ、4ストロークエンジンオイルとは異なる特性を持ちます。この記事では、2ストロークオイルの特性、様々な規格、そして混合燃料についても詳しく解説します。

2ストロークエンジンとオイルの役割

2ストロークエンジンは、ピストンが上下する1サイクルで吸気、圧縮、燃焼、排気を完了させるため、クランクケース自体が吸気の一部を担います。そのため、エンジンオイルは燃料と混合され、潤滑と同時に燃焼・排出される設計となっています。この用途に最適化されたオイルが2ストロークオイルです。

2ストロークオイルの構成と種類

2ストロークオイルの基油は、鉱物油、植物油（ひまし油など）、半化学合成油、化学合成油（エステル、ポリブテン）など多岐に渡ります。燃料との混和性を高めるため、灯油が添加されることもあります。

古くは燃料とオイルを予め混合する混合給油方式が一般的でしたが、近年は潤滑性能向上のため、燃料タンクとは別にオイルタンクを設け、オイルポンプで供給する分離給油方式が主流となっています。多くの市販オイルは混合給油と分離給油の両方に対応しますが、混合給油専用オイルも存在します。

混合比とオイルの性能

燃料とオイルの混合比は、エンジン設計やオイルメーカーの指定によって異なります（16:1～100:1）。適切な混合比を守ることが非常に重要です。オイルが濃すぎるとカーボンスラッジの堆積、排気煙の増加、排気管の閉塞などを招きます。逆に薄すぎると潤滑不良によるエンジンの損傷リスクが高まります。オイルの粘度も混合比に影響し、粘度が高いほど供給量が減って混合比が薄くなるため注意が必要です。

2ストロークオイルに求められる性能

2ストロークオイルには、以下の性能が求められます。

燃焼時の灰分が少ないこと（完全燃焼性）
ガソリンへの良好な溶解性
優れた耐摩耗性、潤滑性、耐食性、熱的特性
高い流動性
* 船舶用オイルの場合、水中での生分解性

規格と基準

2ストロークオイルの性能は、JASO規格、ISO規格、API規格、ICOMIA規格、CEC規格、OECD規格など、様々な規格によって規定されています。それぞれの規格には、排気煙量、ピストン清浄性、防錆性、生分解性など、様々な項目が盛り込まれています。代表的な規格を以下に示します。

JASO M345: 日本自動車規格機構（JASO）による規格。FA～FDのグレードがあり、FDが最も環境性能に優れています。

ISO規格: ISO規格は、JASO規格にピストン清浄性を加えた規格です。

API規格: アメリカ石油協会（API）による規格。現在はTC規格以降が主流です。

ICOMIA（NMMA）規格: 国際海洋産業協会評議会（ICOMIA）傘下の米国舟艇工業会（NMMA）による船外機用オイルの規格。TC-W3が最高グレードです。

CEC規格、OECD規格: 欧州規格諮問委員会（CEC）や経済協力開発機構（OECD）による環境性能に関する規格です。

排気系閉塞性とポリブテン

排気系閉塞を防ぐため、スモークレスタイプのオイル（FC、FD規格）にはポリブテンが添加されることが多いです。ポリブテンは排気煙や閉塞を抑制しますが、粘度が高いため、特に高回転エンジンではベアリング潤滑性を低下させる可能性があります。そのため、ポリブテンの添加量は適切に管理する必要があります。

4ストロークオイルとの違い

4ストロークオイルとは異なり、2ストロークオイルは燃焼・排出されるため、高温耐久性や酸化安定性はそれほど重要ではありません。一方、燃焼室や点火プラグの汚損を防ぐ性能、スラッジの発生を抑制する性能が特に重要となります。そのため、4ストロークオイルに多く含まれるZnDTPなどの添加剤は、ほとんど含まれていません。

混合燃料

燃料と2ストロークオイルを混合した混合燃料は、混合給油方式で用いられます。混合比は体積比で表され、適切な混合比を守る必要があります。混合燃料は、粘度や気化性が元の燃料と異なるため、空燃比にも影響を与えます。

まとめ

2ストロークオイルは、エンジンの種類、用途、性能要求などに応じて適切なものを選択することが重要です。規格や混合比を理解し、適切なオイルを使用することで、エンジンの寿命を延ばし、性能を維持することができます。

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