2003年の航空

2003年は、航空と宇宙開発の分野で大きな出来事が相次いだ年でした。悲劇的な事故や歴史的な機体の退役があった一方で、新たな技術の萌芽や記録への挑戦も活発に行われました。

事故と時代の終焉

まず、年明け早々の2月1日には、アメリカのスペースシャトル・コロンビア号が、地球帰還の途上、大気圏再突入時に機体が分解するという痛ましい事故が発生し、搭乗していた7名の宇宙飛行士全員の命が失われました。これは、スペースシャトル計画における二度目の大惨事となり、宇宙開発史に深い傷跡を残しました。

また、超音速旅客機として一時代を築いたコンコルドも、この年をもってその歴史に幕を下ろすことが決まりました。4月10日に定期運行からの撤退が発表され、エールフランスが5月31日、ブリティッシュ・エアウェイズが10月24日にそれぞれ最後の商業フライトを実施し、約30年にわたる商業運航を終え、静かに退役しました。

業界の動き

企業の再編・統合も進みました。9月30日には、フランスのエールフランスとオランダのKLMオランダ航空が、持ち株会社方式での経営統合を発表し、欧州航空業界の再編を象徴する動きとなりました。

一方で、フランスの航空会社Air Libが2月17日に倒産するなど、厳しい経営環境に直面する企業もありました。プエルトリコでは、7月15日に新たな航空会社であるフィナ航空 (Fina Air) が運航を開始しました。

新たな技術と機体

次世代の技術開発も進展しました。2月23日には、バート・ルータン率いるスケールド・コンポジッツ社によって開発された無人戦闘攻撃機の技術実証機であるX-47Aが、モハーヴェ砂漠で初めて空を飛びました。これは、将来の無人航空機開発に向けた重要な一歩となりました。

練習機分野では、インドの中間練習機HJT-36 シターラが3月7日に、中国のジェット練習機JL-9が12月13日にそれぞれ初飛行しました。また、戦闘機開発では、中国とパキスタンが共同開発した単座式全天候型多用途戦闘機FC-1が、9月3日に最初のフライトを行いました。

ビジネスジェット分野では、日本のホンダが開発を進めていたHondaJet（ホンダジェット）が、12月3日に歴史的な初飛行を成功させ、日本の航空機産業における新たな可能性を示しました。

宇宙への挑戦と民間宇宙旅行の萌芽

宇宙開発の分野では、中国が大きな一歩を記しました。10月15日には、初の中国人宇宙飛行士となる楊利偉氏を乗せた有人宇宙船神舟5号を搭載した長征2号F型ロケットの打ち上げが成功し、中国は旧ソ連、アメリカに次いで世界で3番目の独自有人宇宙飛行達成国となりました。

そして、12月17日、ライト兄弟が動力飛行に成功してからちょうど100周年の記念すべき日に、スケールド・コンポジッツ社が開発した民間宇宙飛行船スペースシップワンが、有人での民間機として初めて音速を突破しました。これは、後の民間宇宙旅行時代の幕開けを予感させる画期的な出来事でした。

記録への挑戦

航空機による長距離・高高度飛行の挑戦も続けられました。6月には、Hokan Colting氏とTim Buss氏が飛行船の新たな高度記録として6,234メートルを樹立しました。8月15日には、コンピュータ制御の模型飛行機「The Spirit of Butts Farm」が、完全自律飛行による初の大西洋横断を、ニューファンドランド島からアイルランドまで達成しました。また、9月22日には、イギリスの冒険家ディヴィド・ヘンプルマン＝アダムス氏が、開放式バスケットを持つロジェ気球によって、カナダのニューブランズウィック州からイギリスのブラックプール北部までの単独大西洋横断飛行を初めて成功させました。

受賞者

これらの多岐にわたる活動の中、航空分野の功績を称える賞も授与されました。ハーモン・トロフィーはリチャード・アブルッツォ氏に、デラボー賞は飛行船の高度記録を樹立したHokan Colting氏とTim Buss氏に贈られました。

2003年は、過去の遺産が終わりを告げると同時に、無人技術、民間宇宙、そして従来の枠を超えた飛行への挑戦といった未来に向けた多様な技術開発と記録樹立が活発に行われた、まさに変革の年と言えるでしょう。

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