2018年トロント車両暴走事件

2018年トロント車両暴走事件

2018年4月23日、カナダ・オンタリオ州トロントで発生した車両暴走事件は、11名が死亡、15名が負傷するという痛ましい結果をもたらしました。この事件は、25歳の男が運転するレンタカーが、ノースヨーク・シティセンターのヤング・ストリートを走行中に、歩行者を次々とはねたもので、カナダ史上最悪の車両暴走事件となりました。

事件の発生と状況

事件は、午後1時25分頃、フィンチ・アベニューとヤング・ストリートの交差点付近で始まりました。犯人は、歩道に乗り上げ、南へ向かって数ブロックにわたり暴走を続け、歩行者を次々とはねました。この間、犯人の車は何度も車道と歩道を往復し、最終的にシェパード・アベニュー付近で停止しました。

犠牲者のうち9名は女性であり、この事件が女性への憎悪を動機とした「ミソジニー」によるテロ攻撃であるという見方が強まりました。警察官が現場に駆け付け、犯人を逮捕したのは、最初の通報からわずか7分後の午後1時32分でした。逮捕時、犯人は警察に対し、自身が「インセル」（不本意な独身者）であると語り、自身の犯行を「インセルの反乱」の一部であると主張しました。

犯人の背景

犯人のアレク・ミナシアンは、ソフトウェア開発者であり、過去には軍に入隊していたものの、数ヶ月で自ら退役していました。ミナシアンは、小学生時代には特殊教育学級に在籍し、自閉スペクトラム症を抱えていたとされています。事件前には、自身のSNSで、女性から性的および社会的に拒絶されたことへの復讐をほのめかす投稿を行っていました。犯行声明では、2014年にカリフォルニア州で発生した銃乱射事件の犯人を称賛する言葉も記しており、自身の犯行を社会への反抗と捉えていたことが伺えます。

裁判の経過

ミナシアンは、10件の第一級殺人罪と16件の殺人未遂罪で起訴されました。裁判では、犯行を認めたものの、責任能力がないとして無罪を主張しました。しかし、判事は、ミナシアンの動機は名声を得ることであり、自閉症を理由にした無罪主張は退けられました。2021年3月、ミナシアンは全件で有罪となり、2022年6月には仮釈放なしの終身刑が確定しました。

犠牲者

事件により亡くなった11名の方々は以下の通りです。

Beutis Renuka Amarasinghe (45歳、栄養士)
Andrea Knafelc Bradden (33歳、アカウントエグゼクティブ)
Geraldine Brad (83歳、エイボン・プロダクツ社の販売員)
So He Chung (22歳、トロント大学の学生)
Anne Marie D'Amico (30歳、証券アナリスト)
Mary Elizabeth "Betty" Forsyth (94歳、退職者)
Chul Min "Eddie" Kang (45歳、料理人)
Ji Hun Kim (22歳、韓国人留学生)
Munir Najjar (85歳、ヨルダン人の退職者)
Dorothy Sewell (80歳、退職者)
Amaresh Tesfamariam (65歳、看護師)

この他に15名が負傷し、うち12名は氏名が公表されています。

事件後の社会の反応

事件後、トロントでは追悼式典が開かれ、多くの人々が犠牲者を悼みました。また、市内各所で献花やメッセージが手向けられ、事件の影響の大きさが伺えます。地元住民による追悼式は、オリーブ・スクエア公園で始まり、その後、メル・ラストマン広場へと広がりました。市当局は、犠牲者とその家族を支援するための基金を設立しました。

スポーツイベントでは、事件発生時、アイスホッケーの試合が行われていたスタジアム周辺の道路が閉鎖され、警備が強化されました。また、試合前には犠牲者を悼む黙祷が捧げられました。

事件は、ミソジニーやインセルといった社会問題にも注目を集めるきっかけとなりました。この事件は、社会における差別や偏見が、いかに悲劇的な事件を引き起こすかということを示唆しています。

その他の影響

事件発生時、トロント市内の交通機関は一時的に麻痺し、商業施設も閉鎖されました。また、この時期には、G7の国防担当閣僚会合がトロントで開催されており、テロ対策強化の必要性が議論されました。

まとめ

2018年のトロント車両暴走事件は、単なる交通事故ではなく、社会の深い闇を映し出す事件でした。この事件を教訓に、より安全で公正な社会を築くための努力が必要とされています。

関連項目

反フェミニズム
フェミサイド
女性差別
女性に対する暴力
モントリオール理工科大学虐殺事件
トロント・マチェテ殺傷事件
ソウル江南トイレ殺人事件
* 小田急線刺傷事件

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