2020年新北市ヘリコプター墜落事故

2020年新北市ヘリコプター墜落事故

2020年1月2日、台湾空軍のUH-60Mブラックホークヘリコプターが、新北市烏来区の山中に墜落しました。この事故により、搭乗していた13名のうち8名が死亡するという痛ましい結果となりました。死亡者の中には、国防部参謀総長の沈一鳴氏も含まれており、台湾社会に大きな衝撃を与えました。

事故の経緯

事故当日、UH-60Mブラックホークは、旧正月前の挨拶のため、沈一鳴参謀総長を含む13名を乗せ、台北市の松山空軍基地から宜蘭県の東澳嶺レーダー基地へ向かって飛行していました。しかし、離陸からわずか13分後の午前8時7分、新北市烏来区の烘爐地山付近の渓谷に墜落。機影はレーダーから消失しました。

事故発生後、宜蘭県、新北市、基隆市の消防局が直ちに救助活動を開始しました。また、国防部は内政部の空中勤務総隊や特別捜索救助隊の派遣を要請し、捜索活動を支援しました。墜落から約5時間後の午後1時30分、最初の救助隊が生存者と接触。最終的に、搭乗者13名のうち5名が救助され、8名の死亡が確認されました。

搭乗者

事故機には以下の13名が搭乗していました。

死亡：
沈一鳴（国防部参謀総長）
韓正宏（政戦局副局長）
黄聖航（総士督長）
于親文（情報参謀次長室後勤処処長）
葉建儀（空軍司令部中校）
劉鎮富（空軍司令部上尉）
許鴻彬（参謀総長室侍従）
その他1名
生存：
* 不明

事故調査

事故発生後、空軍司令官は事故原因を調査するためのタスクフォースを設置しました。翌日には、墜落機のブラックボックスが発見され、国家運輸安全調査委員会に送られました。ブラックボックス内の専用ハードウェアは、製造元のシコルスキー・エアクラフトに送られ、詳細な解析が行われました。

事故の影響

半旗掲揚と選挙活動の一時停止

事故を受け、蔡英文総統は宜蘭の部隊を訪問し、救助活動を指示。また、国防部隊に対し、半旗を掲げるよう指示しました。

事故は総統選挙と立法委員選挙の直前に発生したため、各政党は選挙活動を一時的に自粛しました。

追悼式典

蔡英文総統は、犠牲者を追悼するため、台北賓館を一般公開しました。当初2日間とされた公開期間は、国民からの要望を受け、延長されました。

移棺と葬儀

1月13日には、三軍総合病院から松山空軍基地への移棺式が行われ、蔡英文総統をはじめとする多くの関係者が犠牲者を見送りました。翌14日には、松山基地で合同葬儀が執り行われ、蔡英文総統の主催のもと、贈位・叙勲、回顧映画の再生、弔砲など様々な儀式が行われました。葬儀には、国内外の多数の要人が参列しました。

葬儀後、沈一鳴氏らは五指山の国軍示範公墓へ、他の犠牲者は碧潭の空軍烈士公墓へそれぞれ埋葬されました。

追悼施設

2020年3月29日には、殉職者8名を追悼する「0102殉職将士紀念専区」が落成され、蔡英文総統も参列しました。

各国の反応

アメリカ合衆国

アメリカ軍統合参謀本部議長は、台湾軍に対し、哀悼の意を表明しました。また、米国在台湾協会は、犠牲者の家族や関係団体に対し、哀悼の意を表するとともに、台湾への支援を約束しました。

日本

日本台湾交流協会は、沈一鳴参謀総長らの殉職に深い悲しみを表明。犠牲者の冥福を祈り、生存者と関係者に見舞いの言葉を送りました。

その他の国

オーストラリアやドイツ、イギリス、ポーランドなどの駐台外交機関や、ハイチ大統領、パラグアイ国防大臣、セントクリストファー・ネイビス外務大臣など、多くの海外政府高官がSNSなどで哀悼の意を表明しました。

関連事故

2020年には、この事故以外にも、台湾でヘリコプターの事故が複数発生しました。4月には高雄国際空港で防災ヘリが、5月には台南市で陸軍のヘリが墜落する事故が発生しています。

これらの事故は、台湾の航空安全に対する意識を高めるきっかけとなりました。

この事故は、台湾社会に大きな衝撃を与え、航空安全への関心を高める出来事となりました。犠牲者の冥福を祈るとともに、今後の航空安全対策の徹底が望まれます。

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