2020年東京オリンピックの聖火リレー

2020年東京オリンピック聖火リレーの詳細

2020年東京オリンピックの聖火リレーは、世界的なパンデミックという未曾有の状況下で行われました。2020年3月12日にギリシャのオリンピアで採火された聖火は、当初の計画では日本国内を巡る予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、大幅な延期と変更を余儀なくされました。しかし、翌2021年、聖火は人々の希望を乗せて日本全国を駆け巡り、オリンピックの開会式へと繋がりました。

概要

聖火は、2020年3月12日に古代オリンピック発祥の地であるギリシャ・オリンピアで採火されました。その後、日本に到着し、宮城県、岩手県、福島県で展示された後、新型コロナウイルスの影響によりリレー自体が延期されました。翌年の2021年3月25日、福島県のJヴィレッジをスタート地点として、121日間をかけて全国857の市区町村を巡りました。そして、7月23日の開会式で、最終ランナーの大坂なおみ選手によって聖火台に点火されました。

聖火ランナーは、一般公募により約1万人が選ばれました。組織委員会によると、スポンサー企業と各都道府県実行委員会によるランナー公募には、延べ53万5717件の応募があったと発表されています。日本人最初の聖火ランナーには、2004年アテネオリンピック女子マラソン金メダリストの野口みずきさんが選ばれ、日本国内を最初に走るランナーには、2011 FIFA女子ワールドカップ優勝時の日本女子代表メンバーが選ばれました。

開会式では、聖火は様々な人々によって繋がれました。元レスリング選手の吉田沙保里さんと元柔道選手の野村忠宏さん、元野球選手の長嶋茂雄さん、王貞治さん、松井秀喜さんの３名、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の集団感染に対応した医師の大橋博樹さんと看護師の北川純子さん、東京パラリンピック・トライアスロン出場予定選手の土田和歌子さん、東日本大震災の被災地である岩手、宮城、福島の児童６名が聖火を引き継ぎ、最終ランナーの大坂なおみ選手が聖火台に点火しました。点火時には、冨田勲氏作曲の「ドクター・コッペリウス」より「第7楽章 日の出 Rise of The Planet 9」が演奏されました。

聖火のその後

聖火は、消防法の関係で開会式後、オリンピックスタジアムから江東区の夢の大橋に移され、元バドミントン選手の高橋礼華さんが再度点火しました。閉会式では、大竹しのぶさんと杉並児童合唱団が宮沢賢治の「星めぐりの歌」を歌い、聖火納火時には、冨田勲氏によるドビュッシーの「月の光」のアレンジが流れる中、17日間の大会が幕を閉じました。

聖火リレートーチと聖火皿のデザイン

聖火リレートーチと聖火皿のデザインは、著名なデザイナーである吉岡徳仁さんが担当しました。トーチは、震災後の仮設住宅で使用されていたアルミニウムを再利用して作られており、その革新的なデザインは世界中で話題となりました。

採火式と聖火の移動

採火式は、2020年3月12日にギリシャ・オリンピアのヘーラー神殿前で行われました。巫女役の女性が凹面鏡で太陽光を集め、聖火が灯されました。最初のランナーは、2016年リオデジャネイロオリンピックの射撃競技金メダリストのアンナ・コラカキさん、そして、2番目のランナーには、2004年アテネオリンピックの女子マラソン金メダリストである野口みずきさんが務めました。ギリシャ国内でのリレーは、新型コロナウイルスの影響で中止となり、聖火は3月19日にアテネで組織委員会に引き継がれました。

聖火の展示と日本国内リレー

聖火は、2020年3月20日に特別輸送機で日本に到着し、東日本大震災の被災地で展示されました。宮城県、岩手県、福島県では「復興の火」として、三陸鉄道などを巡り、リレーに先駆けて展示されました。聖火皿は、リレートーチと同じく桜の花をモチーフにしたデザインで、高さ約150センチメートル、重量約200キログラム、一部に復興仮設住宅のアルミ廃材が使用されました。

オリンピックの延期決定後、聖火は日本オリンピックミュージアムで展示され、その後、14道府県の73市町村で巡回展示されました。

リレーの方式

2020年東京オリンピックの聖火リレーでは、1964年の東京オリンピックとは異なり、多くの区間で車両輸送が採用されました。ランナーの数は約1万人に削減され、各ランナーが200メートル程度を走り、約2分間かけて聖火を繋ぎました。1964年とは異なり、伴走者も一部区間を除いて許可されませんでした。聖火ランナーは、警察官に護衛されながら走り、万が一トーチの火が消えてしまっても、ランタンに保管された種火を使ってリレーが続けられました。各日の最終到着地点では、「セレブレーション」が開催され、聖火到着を祝いました。

日本国内ルートと変更点

日本国内ルートは、東日本大震災の被災地である福島県からスタートしました。聖火リレーの日数は、当初国際オリンピック委員会の内規で100日以内と定められていましたが、延長が承認されました。ルートは、被災地の復興のシンボルである奇跡の一本松や熊本城、世界遺産などを通過しました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、いくつかの都道府県でルート変更や形式変更が行われました。

大阪府: 公道でのリレーを中止し、万博記念公園内の周回コースで無観客で開催。
愛媛県: 松山市でのリレーを中止し、点火セレモニーに変更。
沖縄県: 沖縄本島での公道リレーを中止し、一部地域で無観客開催。石垣市では公道で実施し、座間味村ではランナーがサバニに乗って聖火を繋ぐ。
福岡県: リレーを中止し、式典の舞台上で点火セレモニーを開催。
山口県: 1日目はセレモニーのみ、2日目は一部公道で実施。
広島県: 2日間とも公道リレー中止、点火セレモニーを実施。
岡山県: 2日間とも公道リレー中止、点火セレモニーを実施。
兵庫県: 2日間とも公道リレー中止、点火セレモニーを実施。
京都府: 2日間とも公道リレー中止、スタジアム内でのリレーに変更。
石川県: 2日間とも公道リレー中止、点火セレモニーを実施。

パートナー

聖火リレーは、多くのパートナー企業の支援によって運営されました。プレゼンティングパートナーには、日本コカ・コーラ、トヨタ自動車、日本生命保険、NTTコミュニケーションズが名を連ね、その他、パナソニック、ENEOS、日本郵政、全日本空輸、日本航空、NEC、Visaなどがサポーティングパートナーやアソシエーティングパートナーとして貢献しました。リレーでは、スポンサー車両が音楽をかけながら走行し、最長で1キロにも及ぶ車列が形成されました。

トラブル・事件

聖火リレー中には、いくつかのトラブルや事件も発生しました。

長野県: オリンピック開催反対運動による騒動が発生し、NHKのストリーミング配信が一時的に消音された。
京都府: リレーで使用した保護材が芝生を傷め、約1600万円をかけて芝生を張り替える事態となった。
茨城県: 水鉄砲で聖火リレーを妨害した女性が逮捕された。
東京都: 点火セレモニーで爆竹を投げつけた男性が逮捕された。

まとめ

2020年東京オリンピックの聖火リレーは、パンデミックという困難な状況下で、多くの人々の努力と熱意によって実現しました。ルート変更や形式変更を余儀なくされたものの、聖火は全国を巡り、多くの感動と希望を人々に届けました。このリレーは、オリンピックの歴史においても特別な出来事として記憶されることでしょう。

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