2021 GW4

小惑星「2021 GW4」は、2021年4月8日にアメリカ合衆国アリゾナ州にあるレモン山サーベイの観測プログラムによって発見された天体です。この天体は、地球の軌道に比較的近い距離を通過する「地球近傍天体（NEO: Near Earth Object）」の一つに分類されます。特に、その軌道が地球軌道を横断する可能性があることから、「アポロ群」と呼ばれる小惑星グループに属しています。2021 GW4の大きさは、推定約5メートル（約16フィート）とされており、これは小惑星としては小規模な部類に入ります。

2021 GW4は、発見からわずか数日後の2021年4月12日の協定世界時13時01分に、地球へ最も近い距離まで接近しました。その際の観測で得られた地球表面からの最短距離は、約19821キロメートルでした。この接近距離の測定には、およそ±30キロメートルというわずかな不確実性が伴いました。この距離は、地表から見て静止軌道衛星などよりも外側ではありますが、宇宙空間においては非常に近い通過と言えます。

地球への接近は、2021 GW4の軌道に無視できない影響を与えました。小惑星が地球の比較的近くを通過したことで、地球の重力が天体の運動に作用し、軌道が変化したのです。具体的には、2021 GW4の太陽を公転する軌道は、全体として以前よりもやや内側、つまり太陽に近づく形へと変化しました。この軌道変更に伴い、小惑星が太陽の周りを一周するのにかかる時間、すなわち公転周期も短縮されました。地球接近前の公転周期は約678日でしたが、接近後は約607日となり、その差はおよそ71日にも及びます。公転周期が短くなった結果、太陽に最も接近する軌道上の点である近日点への到達時期も前倒しされ、2021 GW4は2021年5月6日に新たな軌道での近日点を通過しました。これは、地球近傍天体の軌道が惑星の重力によって動的に変化しうることを示す典型的な例と言えます。

地球近傍天体の接近に関連して、その天体が地球の大気圏に突入し、明るい火球や流星となって観測されるのではないかという関心が寄せられることがあります。2021 GW4の接近後、特に2021年4月13日の協定世界時2時16分頃にアメリカ合衆国の南フロリダ周辺で観測された明るい火球現象との関連性が、一部で議論の対象となりました。しかし、流星現象の研究を専門とするピーター・ブラウン氏をはじめ、天文学者のジョナサン・マクダウェル氏やMichael Busch氏といった専門家チームによる詳細な軌道計算および現象の解析の結果、この南フロリダで観測された火球は、小惑星2021 GW4とは物理的に全く関連がないことが明確に示されました。この無関係とされた火球現象自体は、推定高度約100キロメートルで見え始め、高度約37キロメートル付近で激しく空中爆発（または分裂）を起こし、その後は地上からの光学観測が困難になる「ダークフライト」状態を経て、最終的に大西洋上のどこかに落下したと考えられています。このような火球現象は、宇宙空間にある小さな塵や岩石の塊が大気圏に高速で突入する際に生じるごく一般的な現象であり、実際には毎日世界中の様々な場所で何千もの火球が発生しています。特定の小惑星の接近と特定の火球を結びつける際には、科学的なデータに基づいた慎重な検証が不可欠であることを、この事例は改めて示唆しています。

2021 GW4の事例は、比較的小さな地球近傍天体であっても、地球に接近し、その重力によって軌道が変化し得るという事実を示しています。地球近傍天体の中には、将来的に地球に衝突する可能性があると評価されている「潜在的に危険な天体」も存在するため、このような天体を早期に発見し、その軌道を精密に追跡・計算することは、惑星保護（プラネタリー・ディフェンス）の観点から非常に重要な取り組みです。レモン山サーベイのような自動観測プログラムや、その後の詳細な軌道計算は、これらの天体の将来的な位置を予測し、万が一の事態に備える上で不可欠な役割を果たしています。2021 GW4のように無事に地球から離れていった天体であっても、その正確な軌道や地球接近による影響に関するデータは、地球近傍天体の集団全体の動態や進化を理解する上で貴重な情報源となります。

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