25カ条綱領
25か条綱領の背景と意義
25か条綱領は、ナチス党（国民社会主義ドイツ労働者党）が1920年2月24日にミュンヘンで開催した党大会で採択された重要な文書です。この綱領は、ナチス党の政策や信念を表すものであり、当時のドイツの社会的・政治的状況を反映しています。
この党の前身はドイツ労働者党であり、創設者であるアントン・ドレクスラーがまず「原則」を策定しましたが、正式な綱領は存在しませんでした。この原則は、熟練労働者を保護し中産階級を拡大すること、不労所得への反対、さらにはユダヤ教に対する敵対といった内容を含んでいて、党の社会主義的な性格を強調していました。
1919年にダイレクトに党に参加したアドルフ・ヒトラーは、その後の党内での急速な台頭を示すことになります。彼は綱領の制定を通じて、党の運動を広げる必要性を唱え、トゥーレ協会の支持を背景に、当時の第一議長カール・ハラーと対立しました。ヒトラーはドレクスラーと手を結び、党規則を改定してハラーを追放。その後、ドレクスラーとヒトラーは、5人の委員会を設立しして綱領の策定に取り組みました。
ナチス・ドイツ時代には、綱領がヒトラー一人によって作成されたという誤解が広まることになりますが、最近の研究ではドレクスラーとヒトラーの共同作業であったとの見解が一般的です。特に、コンラート・ハイデンや村瀬興雄といった研究者たちは、外交政策の実行部分にはヒトラーの影響が、経済的側面にはゴットフリート・フェーダーの主張が、その他の人種政策に関してはディートリヒ・エッカートが寄与したと述べています。
完成された25か条綱領は、ビアホール・ホフブロイハウスでの党大会で正式に発表され、この場でヒトラーは聴衆に向けて一項目ずつ問いかけながら紹介しました。ヒトラーはこの瞬間を『我が闘争』の中で「承認は歓呼の声で迎えられ、全会一致で採択された」と述べていますが、実際には党支持者と反対者の間に緊張感も存在していたとされています。それでも、彼の演説の結びには賛成の嵐が巻き起こることになりました。
だが、1921年にヒトラーが第一議長の地位を得た後、党綱領の重要性は次第に薄れていきました。その背景には、彼が独裁的な権力を握ると、党の光を放つ綱領の意義が劣化していったという現実があります。特に、ミュンヘン一揆でヒトラーが投獄された際、党内の左派独自の綱領改定案が提唱されましたが、彼は再び自らの権力を強化するために「指導者原理」の重要性を強調し、反対派を黙らせました。
ヒトラーは1926年に出版した『我が闘争』の第二部で、綱領は「論理的に完全なものとは言えない」と認めつつも、政党の信条であるため変更されるべきではないと強調しました。綱領の変更は党内での対立を引き起こし、党員の信念を揺るがす要因になると警告したのです。こうして、25か条綱領はナチス党にとっての基盤でありながらも、次第に権力掌握に吸収されていったのです。
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