3つの世界論

三つの世界論

「三つの世界論」は、1970年代に中国共産党の指導者であった毛沢東が提唱した国際関係を分析する理論です。この理論は、世界を政治的、経済的な力関係に基づいて三つの異なるグループに分類するものでした。

理論の概要

毛沢東の三つの世界論における各世界の定義は以下の通りです。

第一世界: 当時の超大国、すなわちアメリカ合衆国とソビエト連邦。
第二世界: 第一世界に属する超大国と同盟関係にある国々。
第三世界: どの超大国にも与しない非同盟諸国。

毛沢東は、米ソ両国を第一世界とみなし、帝国主義的な覇権を追求していると批判しました。そして、中国自身を第三世界の一員と位置づけ、第三世界諸国との連帯を呼びかけました。この理論に基づき、中国はアジア、ラテンアメリカ、アフリカなどの発展途上国との関係を強化しました。特に、反共的な右派政権とも国交を結び、協力関係を築いたことは注目に値します。

西側の類似理論との違い

西側にも「三つの世界モデル」と呼ばれる類似の理論が存在しましたが、その内容は毛沢東の理論とは異なっていました。西側の理論では、第一世界はアメリカ合衆国とその同盟国（西側諸国）、第二世界はソビエト連邦とその同盟国（東側諸国）、そして第三世界は非同盟中立諸国と定義されていました。この西側の理論では、中国は第三世界ではなく第二世界に分類されていました。

理論の変遷と影響

三つの世界論は、社会主義陣営内での中国とソ連の対立を背景に生まれました。しかし、この理論は、それまで中国と連携していた一部の反修正主義的な政治勢力を幻滅させる結果となりました。特にアルバニアでは、エンヴェル・ホッジャ率いるアルバニア労働党が、三つの世界論とソ連共産党の双方に反対する立場を明確にしました。ホッジャは、毛沢東の死後、中国が「第三世界の超大国」になろうとしていると非難し、中ア関係は悪化の一途をたどりました。

三つの世界論は、1982年の中国共産党第12回大会で公式には取り下げられました。その後、中国共産党・中国政府の公式見解として言及されることはなくなり、ソ連や東欧の共産党を修正主義と呼ぶこともなくなりました。中国は次第にソ連や東欧諸国との関係を正常化しましたが、西側諸国との関係も重視し、バランスの取れた外交を展開しました。ソ連との完全な関係正常化は、1989年のゴルバチョフ書記長の訪中まで待たなければなりませんでした。

三つの世界論は、冷戦時代の国際関係を理解する上で重要な視点を提供してくれます。また、中国が第三世界との連帯を重視する外交政策のルーツを知る上でも、重要な意味を持っています。

関連項目

77ヶ国グループ
後発開発途上国（「第四世界」と呼ばれることもある）
反修正主義
* 覇権主義

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