3・2・1
『3・2・1』（スリー・トゥー・ワン）は、hide率いるロックバンド「zilch」の1枚目のオリジナルアルバムです。
概要
元キリング・ジョークのポール・レイヴンと元プロフェッショナルズのレイ・マクヴェイを迎え、ニューヨークで結成されたzilchのデビュー作です。hideのソロツアー終盤に、音楽関係者から渡された音源がきっかけとなり、このプロジェクトが始まりました。アルバムには、hideの2ndアルバム『PSYENCE』に収録された「DAMAGE」の未発表バージョンも存在し、hideミュージアムなどで公開されましたが、2018年5月現在、音源化の予定はありません。
録音
レコーディングは1996年から1997年の2年間におよびました。アルバムの歌詞カードにはトラックごとの制作時期が記載されています。初回限定盤の歌詞カードには、メンバーによるhideへのメッセージがローマ字で書かれています。I.N.Aは、インダストリアルサウンドに精通していたBill Kennedyの勧めで、プログラマーのEric CaudieuxからPro Toolsのテクニックを学びました。これにより、以前使用していたDigital PerformerからPro Toolsに移行し、波形編集を徹底的に行いました。1曲あたり1万箇所以上の編集を要するこの作業は大変なものでしたが、その結果、ナイン・インチ・ネイルズのようなインダストリアルサウンド特有の「グルーヴ無きグルーヴ」を手に入れることができました。Billによるギターサウンドの構築も独特で、複数のギターアンプを同時に鳴らし、それぞれの音を抽出して編集する手法がとられました。このために使用されたスプリッターは、特殊なもので、カナダのメーカーから個人輸入したものでした。また、録音機材には1970年代から1980年代に活躍したStuder A800を使用し、録音した素材をコンピューターに取り込んで編集するという方法が採用されました。
しかし、実際の制作現場は、おもちゃが散乱し、スタッフがビールを飲み、放送禁止用語が飛び交うような、混沌とした状況でした。hideとI.N.Aが不在の間には、遊びに来たミュージシャンが次々とレコーディングに参加し、自由な創作活動が行われました。この状況は、zilchのコンセプトを見失わせ、制作を困難にしましたが、hideはI.N.Aを一時的に避難させ、自ら環境を整備し、アルバムを完成へと導きました。
音楽性とテーマ
楽曲の制作は、hideが日本語で歌った曲に、レイが「hideの発音に近い英語」を当てはめていくという独特な方法で行われました。この結果、英語でありながら日本語のように聞こえる曲が生まれました。コンセプトは「後先考えない」ことであり、音色の練り上げとアレンジに重点が置かれました。この経験はhideに自身の方向性が間違っていないことを確信させ、その後の作品に繋がりました。
アートワーク
ジャケットデザインは、マリリン・マンソンなどを手がけた映像作家・写真家のディーン・カーが担当しました。「ELECTRIC CUCUMBER」のミュージックビデオも彼によって制作され、その内容は、hideがゴキブリを体に貼り付け、ボンテージ姿の老婆を抑えつけるという、衝撃的なものでした。hideは大のゴキブリ嫌いでありながら、自らゴキブリを体に貼り付けることを選んだというエピソードもあります。
プロモーション
アルバムは1997年に完成していましたが、「大人の事情」により発売が遅れ、hideの死後2ヶ月後に発売されました。アメリカでのレコード契約交渉が難航していたことが、発売遅延の原因でした。hideは、アメリカでの活動に制約のあるメジャーレーベルではなく、インディーズレーベルからリリースすることを選択し、日本での活動をメインにしつつ、アメリカで徐々に展開していくという戦略を取りました。プロモーションは、1998年1月1日に「ELECTRIC CUCUMBER」のMVを匿名で公開し、その後、限定的なメディアで情報を断片的に流していくという手法で行われました。
収録曲
1. ELECTRIC CUCUMBER
2. INSIDE THE PERVERT MOUND
3. WHAT'S UP MR.JONES?
4. FUCTRACK#6
5. DOUBT
6. POSE
7. EASY JESUS
楽曲解説
ELECTRIC CUCUMBER: X JAPANの写真展のBGM「COMMENT」が原型。
INSIDE THE PERVERT MOUND: hideのアルバム「Ja,Zoo」に収録された「LEATHER FACE」のzilchバージョン。
WHAT'S UP MR.JONES?: X JAPANのアルバム『DAHLIA』収録の「DRAIN」のセルフカバー。
FUCTRACK#6: hideのアルバム「HIDE YOUR FACE」収録の「FROZEN BUG '93」を再構築。
DOUBT: hideのシングル「50%&50%」収録の同名曲のカバー。「タモリ倶楽部」の空耳アワーにもなった。
POSE: hideのアルバム『PSYENCE』収録の同名曲のカバー。英語詞に作り変えられた。
EASY JESUS: hideのシングル「Beauty & Stupid」のカップリング曲「Squeeze IT!!」を再構築。
参加ミュージシャン
hide - ボーカル、ギター
I.N.A - プログラミング
レイ・マクヴェイ - ボーカル、ギター、コーラス、プログラミング
ポール・レイヴン - ベース、コーラス
Joey Castillo - ドラムス
Scott Garrett - ドラムス
Joseph Bishara - プログラミング
Eric Caudieux - プログラミング
Korey Clarke - ゲストボーカル
James Hall - ゲストボーカル・ピアノ
Jaz Coleman - ゲストボーカル
評価
佐々木敦は、このアルバムを「hideのオルタナ精神がみなぎった音」と評し、X JAPANやソロ活動とは異なるハードコアでヘヴィなサウンドを評価しました。鹿野淳は、hideがX JAPANの活動が停滞していた時期に、ロックへの情熱を新たな形で表現した作品であり、海外のミュージシャンとの協業によって、hideのオリジナリティがより際立っていると評しました。また、彼らがこのアルバム制作を通してポジティブなエネルギーを得たという点も強調しています。
概要
元キリング・ジョークのポール・レイヴンと元プロフェッショナルズのレイ・マクヴェイを迎え、ニューヨークで結成されたzilchのデビュー作です。hideのソロツアー終盤に、音楽関係者から渡された音源がきっかけとなり、このプロジェクトが始まりました。アルバムには、hideの2ndアルバム『PSYENCE』に収録された「DAMAGE」の未発表バージョンも存在し、hideミュージアムなどで公開されましたが、2018年5月現在、音源化の予定はありません。
録音
レコーディングは1996年から1997年の2年間におよびました。アルバムの歌詞カードにはトラックごとの制作時期が記載されています。初回限定盤の歌詞カードには、メンバーによるhideへのメッセージがローマ字で書かれています。I.N.Aは、インダストリアルサウンドに精通していたBill Kennedyの勧めで、プログラマーのEric CaudieuxからPro Toolsのテクニックを学びました。これにより、以前使用していたDigital PerformerからPro Toolsに移行し、波形編集を徹底的に行いました。1曲あたり1万箇所以上の編集を要するこの作業は大変なものでしたが、その結果、ナイン・インチ・ネイルズのようなインダストリアルサウンド特有の「グルーヴ無きグルーヴ」を手に入れることができました。Billによるギターサウンドの構築も独特で、複数のギターアンプを同時に鳴らし、それぞれの音を抽出して編集する手法がとられました。このために使用されたスプリッターは、特殊なもので、カナダのメーカーから個人輸入したものでした。また、録音機材には1970年代から1980年代に活躍したStuder A800を使用し、録音した素材をコンピューターに取り込んで編集するという方法が採用されました。
しかし、実際の制作現場は、おもちゃが散乱し、スタッフがビールを飲み、放送禁止用語が飛び交うような、混沌とした状況でした。hideとI.N.Aが不在の間には、遊びに来たミュージシャンが次々とレコーディングに参加し、自由な創作活動が行われました。この状況は、zilchのコンセプトを見失わせ、制作を困難にしましたが、hideはI.N.Aを一時的に避難させ、自ら環境を整備し、アルバムを完成へと導きました。
音楽性とテーマ
楽曲の制作は、hideが日本語で歌った曲に、レイが「hideの発音に近い英語」を当てはめていくという独特な方法で行われました。この結果、英語でありながら日本語のように聞こえる曲が生まれました。コンセプトは「後先考えない」ことであり、音色の練り上げとアレンジに重点が置かれました。この経験はhideに自身の方向性が間違っていないことを確信させ、その後の作品に繋がりました。
アートワーク
ジャケットデザインは、マリリン・マンソンなどを手がけた映像作家・写真家のディーン・カーが担当しました。「ELECTRIC CUCUMBER」のミュージックビデオも彼によって制作され、その内容は、hideがゴキブリを体に貼り付け、ボンテージ姿の老婆を抑えつけるという、衝撃的なものでした。hideは大のゴキブリ嫌いでありながら、自らゴキブリを体に貼り付けることを選んだというエピソードもあります。
プロモーション
アルバムは1997年に完成していましたが、「大人の事情」により発売が遅れ、hideの死後2ヶ月後に発売されました。アメリカでのレコード契約交渉が難航していたことが、発売遅延の原因でした。hideは、アメリカでの活動に制約のあるメジャーレーベルではなく、インディーズレーベルからリリースすることを選択し、日本での活動をメインにしつつ、アメリカで徐々に展開していくという戦略を取りました。プロモーションは、1998年1月1日に「ELECTRIC CUCUMBER」のMVを匿名で公開し、その後、限定的なメディアで情報を断片的に流していくという手法で行われました。
収録曲
1. ELECTRIC CUCUMBER
2. INSIDE THE PERVERT MOUND
3. WHAT'S UP MR.JONES?
4. FUCTRACK#6
5. DOUBT
6. POSE
7. EASY JESUS
楽曲解説
ELECTRIC CUCUMBER: X JAPANの写真展のBGM「COMMENT」が原型。
INSIDE THE PERVERT MOUND: hideのアルバム「Ja,Zoo」に収録された「LEATHER FACE」のzilchバージョン。
WHAT'S UP MR.JONES?: X JAPANのアルバム『DAHLIA』収録の「DRAIN」のセルフカバー。
FUCTRACK#6: hideのアルバム「HIDE YOUR FACE」収録の「FROZEN BUG '93」を再構築。
DOUBT: hideのシングル「50%&50%」収録の同名曲のカバー。「タモリ倶楽部」の空耳アワーにもなった。
POSE: hideのアルバム『PSYENCE』収録の同名曲のカバー。英語詞に作り変えられた。
EASY JESUS: hideのシングル「Beauty & Stupid」のカップリング曲「Squeeze IT!!」を再構築。
参加ミュージシャン
hide - ボーカル、ギター
I.N.A - プログラミング
レイ・マクヴェイ - ボーカル、ギター、コーラス、プログラミング
ポール・レイヴン - ベース、コーラス
Joey Castillo - ドラムス
Scott Garrett - ドラムス
Joseph Bishara - プログラミング
Eric Caudieux - プログラミング
Korey Clarke - ゲストボーカル
James Hall - ゲストボーカル・ピアノ
Jaz Coleman - ゲストボーカル
評価
佐々木敦は、このアルバムを「hideのオルタナ精神がみなぎった音」と評し、X JAPANやソロ活動とは異なるハードコアでヘヴィなサウンドを評価しました。鹿野淳は、hideがX JAPANの活動が停滞していた時期に、ロックへの情熱を新たな形で表現した作品であり、海外のミュージシャンとの協業によって、hideのオリジナリティがより際立っていると評しました。また、彼らがこのアルバム制作を通してポジティブなエネルギーを得たという点も強調しています。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。