HIDE YOUR FACE
hideのソロデビューアルバム『HIDE YOUR FACE』は、1994年2月23日にMCAビクターからリリースされました。X JAPANのギタリストとして活躍していたhideが、自身の音楽性を深く追求した意欲作であり、ソロ活動開始にあたり、名義を「hide」と小文字表記に変更したことでも話題を呼びました。このアルバムは、オリコンアルバムチャートで初回盤が初登場1位、通常盤が9位を記録し、その人気と音楽性の高さを示しました。
MCAビクターからのソロデビューのオファーを受けたhideは、自身の音楽的ルーツであるエース・フレーリーのソロアルバムに感銘を受け、その影響を強く受けて制作を開始しました。hideは、ギタリストでありながらも、ギターロックアルバムにとどまらず、歌を主体としたロックアルバムを創造したいと考えました。アルバム制作は1993年7月から8月にかけて、ロサンゼルスのアパートでI.N.Aと共にデモテープ制作から始まりました。Macintosh Quadraを使用し、I.N.Aがドラムパートを打ち込み、hideがギターとボーカルを担当しました。
楽曲の骨組みやコード進行は、ほぼ即興で制作され、閃いたアイデアを優先しました。デモテープの段階で、16曲中14曲が大まかなアレンジとハーモニーを終え、ロサンゼルスのスタジオでの本格的なレコーディングへと進みました。hideは、人間が生み出すグルーヴを重視し、コンピューターによるリズムとミュージシャンによるリズムを楽曲ごとに使い分けるというコンセプトを打ち出しました。
ドラマーには当初、日本のミュージシャンを予定していましたが、ロサンゼルスで生のドラマーを起用する契約となっていたため、テリー・ボジオにオファーを出しました。ベーシストのT.M.スティーヴンスは、テリーの推薦で参加が決定。ブラスセクションにはジェリー・ヘイを起用し、フィドルやコーラス担当も選定されました。リズムパートのレコーディングは、1993年9月29日から30日の2日間、ロサンゼルスのOne On One Recordingで行われました。
デモテープを基に、hideのアイデアとテリーの解釈が組み合わさり、新たなグルーヴが生まれました。スティーヴンスは独自のコード進行をメモに書き留め、hideとI.N.Aのデモテープのコード進行を全く覚えずにレコーディングに臨みました。レコーディング中には彼の叫び声もマイクに拾われましたが、hideはこれを面白いと感じ、全て採用しました。こうして、ジャムセッションから生まれた相乗効果に、hideは大きな喜びを感じたと言います。
ボーカルについては、当初、複数のボーカリストを起用する案も検討していましたが、最終的にはhide自身が歌うことを決意しました。ボーカリストとしての経験が浅かったため、自分の歌の良し悪しを客観的に判断することに苦労したそうです。しかし、ボイストレーナーの言葉に救われ、自信を持って歌い上げることができました。一方、ボーカルディレクションを担当したI.N.Aは、デモテープ以上の完成度を目指し、妥協を許さない姿勢でレコーディングに臨みました。その結果、ボーカルレコーディング作業が終わる頃には、I.N.Aはボーカルレコーディング作業が嫌いになったという逸話も残っています。
楽曲のジャンルが多岐にわたるため、短いインスト楽曲を橋渡しとして挿入しました。楽曲が完成した後、hideは、1993年10月中旬から、日本の一口坂スタジオでギターとボーカルの最終テイク選定、トラックダウンの最終作業に入りました。シングルのミックスに不満を持っていたhideは、ミキシングをやり直しました。
hideは、子供の頃にラジオから流れてきた時の高揚感と、X JAPANではできない遊び心をアルバムに盛り込みたいと考えていました。森雪之丞に一部の歌詞を依頼したのは、自分には書けない歌詞を求めたためでした。アルバムタイトルはプリプロダクション時に決定され、「HIDE」という名前と、「頭隠して尻隠さず」という意味を込めたそうです。
アルバムのアートワークは、塚本晋也の『鉄男』からインスピレーションを得た漫画と、H.R.ギーガーの作品を組み合わせたものです。ギーガーの個展作品「Watchguardian, head V」を気に入り、仮面に自分の目を合成することを提案し、ギーガーもこれを了承しました。初回盤には、この仮面を立体化したオブジェが付属しています。この様な経緯から、ライナーノーツのビジュアルとアルバムのコンセプトは直接的な関係はありません。アルバムタイトルから着想を得て制作されました。
アルバムには、全16曲が収録されており、hideの多様な音楽性を堪能できます。
PSYCHOMMUNITY: マーチングバンドの要素を取り入れた、ライブのオープニングを意識したインスト曲です。
SCANNER: hideが個人的に頭に来た人物をモデルにした攻撃的な楽曲。
EYES LOVE YOU (T.T.VERSION): シングルバージョンをテリーとT.M.スティーヴンス主導で再レコーディング。
DRINK OR DIE: 酒をテーマにした歌詞と、メタリカとミスフィッツを合わせたようなサウンドが特徴。
CRIME OF BREEN St.: エンジニアのリッチ・ブリーンのピアノ演奏を基に作られたインタールード。
A STORY: アコースティックギターが中心の、砂漠でセッションする原始人をイメージした曲。
FROZEN BUG '93 (DIGGERS VERSION): MxAxSxSというユニットで制作された曲をインダストリアルアレンジした楽曲。
T.T.GROOVE: サウンドチェック時に録音された音源に、hideのギターリフを重ねたインタールード。
BLUE SKY COMPLEX: ファンク調の管楽器を取り入れた楽曲。
OBLAAT (REMIX VERSION): シングルバージョンよりもギターの音量を強調したリミックスバージョン。
TELL ME: アコースティックギターを基調としたポップな楽曲。ドラムは「MITSUKO AKAI」という架空の人物による打ち込みという設定。
HONEY BLADE: 歪んだ愛をテーマにした、美しいメロディーと裏腹な歌詞を持つ楽曲。
50% & 50% (CRISTAL LAKE VERSION): カントリー風のフィドルをフィーチャーした、シングルバージョンとは異なるアレンジ。
PSYCHOMMUNITY EXIT: アルバムの最後に収録された、音飛びを模した特殊効果が施された楽曲。
I.N.A（コンピュータ・プログラミング）、テリー・ボジオ（ドラムス）、T.M.スティーヴンス（ベース）、リッチ・ブリーン（ローズ・ピアノ）、ジェリー・ヘイ（フリューゲルホルン）など、豪華なミュージシャンが参加しています。
音楽評論家の山崎洋一郎は、本作を「アメリカのオルタナティブ・ロックにヘヴィメタルとギターポップを注入した」と評しました。鹿野淳は「ギシャギシャしているのに、何か可愛い曲が多い」と評し、hideの柔軟な音楽性を評価しました。また、X JAPANでの経験も生かされているが、Xでの手法とは異なり、一曲ごとに財産を使い切るスタイルも評価されています。
『HIDE YOUR FACE』は、hideの音楽的な多様性と実験精神が詰まった、唯一無二の作品と言えるでしょう。2024年にはリマスターされたボックスセットも発売され、今もなお、多くのファンに愛され続けています。
アルバム制作の背景
MCAビクターからのソロデビューのオファーを受けたhideは、自身の音楽的ルーツであるエース・フレーリーのソロアルバムに感銘を受け、その影響を強く受けて制作を開始しました。hideは、ギタリストでありながらも、ギターロックアルバムにとどまらず、歌を主体としたロックアルバムを創造したいと考えました。アルバム制作は1993年7月から8月にかけて、ロサンゼルスのアパートでI.N.Aと共にデモテープ制作から始まりました。Macintosh Quadraを使用し、I.N.Aがドラムパートを打ち込み、hideがギターとボーカルを担当しました。
楽曲の骨組みやコード進行は、ほぼ即興で制作され、閃いたアイデアを優先しました。デモテープの段階で、16曲中14曲が大まかなアレンジとハーモニーを終え、ロサンゼルスのスタジオでの本格的なレコーディングへと進みました。hideは、人間が生み出すグルーヴを重視し、コンピューターによるリズムとミュージシャンによるリズムを楽曲ごとに使い分けるというコンセプトを打ち出しました。
レコーディング
ドラマーには当初、日本のミュージシャンを予定していましたが、ロサンゼルスで生のドラマーを起用する契約となっていたため、テリー・ボジオにオファーを出しました。ベーシストのT.M.スティーヴンスは、テリーの推薦で参加が決定。ブラスセクションにはジェリー・ヘイを起用し、フィドルやコーラス担当も選定されました。リズムパートのレコーディングは、1993年9月29日から30日の2日間、ロサンゼルスのOne On One Recordingで行われました。
デモテープを基に、hideのアイデアとテリーの解釈が組み合わさり、新たなグルーヴが生まれました。スティーヴンスは独自のコード進行をメモに書き留め、hideとI.N.Aのデモテープのコード進行を全く覚えずにレコーディングに臨みました。レコーディング中には彼の叫び声もマイクに拾われましたが、hideはこれを面白いと感じ、全て採用しました。こうして、ジャムセッションから生まれた相乗効果に、hideは大きな喜びを感じたと言います。
ボーカルについては、当初、複数のボーカリストを起用する案も検討していましたが、最終的にはhide自身が歌うことを決意しました。ボーカリストとしての経験が浅かったため、自分の歌の良し悪しを客観的に判断することに苦労したそうです。しかし、ボイストレーナーの言葉に救われ、自信を持って歌い上げることができました。一方、ボーカルディレクションを担当したI.N.Aは、デモテープ以上の完成度を目指し、妥協を許さない姿勢でレコーディングに臨みました。その結果、ボーカルレコーディング作業が終わる頃には、I.N.Aはボーカルレコーディング作業が嫌いになったという逸話も残っています。
楽曲のジャンルが多岐にわたるため、短いインスト楽曲を橋渡しとして挿入しました。楽曲が完成した後、hideは、1993年10月中旬から、日本の一口坂スタジオでギターとボーカルの最終テイク選定、トラックダウンの最終作業に入りました。シングルのミックスに不満を持っていたhideは、ミキシングをやり直しました。
音楽性とテーマ
hideは、子供の頃にラジオから流れてきた時の高揚感と、X JAPANではできない遊び心をアルバムに盛り込みたいと考えていました。森雪之丞に一部の歌詞を依頼したのは、自分には書けない歌詞を求めたためでした。アルバムタイトルはプリプロダクション時に決定され、「HIDE」という名前と、「頭隠して尻隠さず」という意味を込めたそうです。
アートワーク
アルバムのアートワークは、塚本晋也の『鉄男』からインスピレーションを得た漫画と、H.R.ギーガーの作品を組み合わせたものです。ギーガーの個展作品「Watchguardian, head V」を気に入り、仮面に自分の目を合成することを提案し、ギーガーもこれを了承しました。初回盤には、この仮面を立体化したオブジェが付属しています。この様な経緯から、ライナーノーツのビジュアルとアルバムのコンセプトは直接的な関係はありません。アルバムタイトルから着想を得て制作されました。
収録曲について
アルバムには、全16曲が収録されており、hideの多様な音楽性を堪能できます。
PSYCHOMMUNITY: マーチングバンドの要素を取り入れた、ライブのオープニングを意識したインスト曲です。
SCANNER: hideが個人的に頭に来た人物をモデルにした攻撃的な楽曲。
EYES LOVE YOU (T.T.VERSION): シングルバージョンをテリーとT.M.スティーヴンス主導で再レコーディング。
DRINK OR DIE: 酒をテーマにした歌詞と、メタリカとミスフィッツを合わせたようなサウンドが特徴。
CRIME OF BREEN St.: エンジニアのリッチ・ブリーンのピアノ演奏を基に作られたインタールード。
A STORY: アコースティックギターが中心の、砂漠でセッションする原始人をイメージした曲。
FROZEN BUG '93 (DIGGERS VERSION): MxAxSxSというユニットで制作された曲をインダストリアルアレンジした楽曲。
T.T.GROOVE: サウンドチェック時に録音された音源に、hideのギターリフを重ねたインタールード。
BLUE SKY COMPLEX: ファンク調の管楽器を取り入れた楽曲。
OBLAAT (REMIX VERSION): シングルバージョンよりもギターの音量を強調したリミックスバージョン。
TELL ME: アコースティックギターを基調としたポップな楽曲。ドラムは「MITSUKO AKAI」という架空の人物による打ち込みという設定。
HONEY BLADE: 歪んだ愛をテーマにした、美しいメロディーと裏腹な歌詞を持つ楽曲。
50% & 50% (CRISTAL LAKE VERSION): カントリー風のフィドルをフィーチャーした、シングルバージョンとは異なるアレンジ。
PSYCHOMMUNITY EXIT: アルバムの最後に収録された、音飛びを模した特殊効果が施された楽曲。
参加ミュージシャン
I.N.A（コンピュータ・プログラミング）、テリー・ボジオ（ドラムス）、T.M.スティーヴンス（ベース）、リッチ・ブリーン（ローズ・ピアノ）、ジェリー・ヘイ（フリューゲルホルン）など、豪華なミュージシャンが参加しています。
評価
音楽評論家の山崎洋一郎は、本作を「アメリカのオルタナティブ・ロックにヘヴィメタルとギターポップを注入した」と評しました。鹿野淳は「ギシャギシャしているのに、何か可愛い曲が多い」と評し、hideの柔軟な音楽性を評価しました。また、X JAPANでの経験も生かされているが、Xでの手法とは異なり、一曲ごとに財産を使い切るスタイルも評価されています。
『HIDE YOUR FACE』は、hideの音楽的な多様性と実験精神が詰まった、唯一無二の作品と言えるでしょう。2024年にはリマスターされたボックスセットも発売され、今もなお、多くのファンに愛され続けています。
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