ATI Technologies
ATIテクノロジーズの歴史
ATIテクノロジーズ（ATI Technologies Inc.）は、1985年に何国源（ホー・クォックユェン）らによってカナダで設立された半導体設計会社です。当初は低価格ながらも堅実な製品「Mach」シリーズを開発し、アセンブリメーカーに半製品として販売していました。1990年代中期には、多くのメーカーがビデオ市場に参入し、ATIもその一つとして認識されていましたが、競合他社が撤退していく中で、Rageシリーズの成功を収め、その後継であるRadeonシリーズのヒットにより、インテルやNVIDIAと並ぶ大手ビデオチップメーカーへと成長しました。
また、ゲーム機であるニンテンドーゲームキューブのビデオチップを開発したArtXを買収し、チップセット市場にも参入しましたが、品質面でNVIDIAに後れを取っていました。2006年、ATIはAMDに総額54億ドルで買収され、AMDのグラフィック部門として再編されました。この買収により、ATIはAMDのプラットフォーム専用の部品供給を行う部門となり、インテル向けの製品開発は終了しました。買収前はATIの収益の大部分がインテル向け製品からだったため、この買収は業界内で驚きをもって迎えられました。
ビデオカードの特徴
ATIのビデオカードは、ライバルであるNVIDIAと常に激しい性能競争を繰り広げており、特定の用途においてどちらが優れているかを断定できないほど実力が拮抗しています。ドライバの更新頻度はNVIDIAよりも遅いと言われることもありますが、画質や発色では優れているとの評価もあります。動画再生支援技術には昔から力を入れており、安定性よりも先進性を重視した製品開発を行っています。業界初の55nm、40nmプロセスを導入し、最新メモリ規格であるGDDR4やGDDR5を搭載したグラフィックボードを世界で初めてリリースしました。
コストパフォーマンスの高さから自作パソコンユーザーに支持され、販売実績を伸ばしています。画像処理に高い水準を求めるグラフィックデザイナーやHTPC（ホームシアターPC）環境を構築するユーザーにも人気があります。また、大手PCベンダーへの大量供給に強く、デル、ヒューレット・パッカード、エイサー、レノボ、NEC、ソニー、富士通、エプソンダイレクトなど、多くのメーカー製PCに搭載されています。特にBTOやCTO販売を行うメーカーでは、Radeonを選択できることが多く、標準搭載またはカスタマイズによってRadeonを利用できます。Macintoshでは、以前は全機種にATIのビデオチップが搭載されていましたが、近年はNVIDIA製品やIntelの内蔵グラフィックスエンジンも採用されています。AMDとの合併後は、AMDプロセッサ搭載パソコンのチップセット内蔵グラフィックスとして、Radeon 4000シリーズなどが使用されています。ノートパソコンのディスクリートグラフィックとしても搭載されることが多く、2009年第2四半期時点では、ノートPC向け単体GPU製品の出荷数でNVIDIAを上回っていたとされています。
マイクロソフトのXbox 360や任天堂のWiiにもATIの技術が採用され、HPC業界向けのFireStreamも販売していました。また、ES1000などのサーバー向け内蔵グラフィックスは、デルやヒューレット・パッカード、IBM、NECなどのサーバー製品に広く搭載されており、大きなシェアを持っていました。
チップセットについて
ATIは、かつて買収したArtXがALiと共同開発したグラフィック統合チップセット「ALADDiN7」を持っていましたが、Radeonグラフィック製品の成功以降、グラフィック機能内蔵のチップセットの開発にも注力しました。RADEON IGP/XPRESSシリーズはPCベンダーに広く採用されましたが、ATI Technologies社時代に発表した製品はサウスブリッジに問題を抱えていることが多く、VIAやULiのサウスブリッジで代用するマザーボードベンダーも存在しました。AMDとの合併後は、ATIチームが開発するチップセットはAMDプラットフォームの純正チップセットという位置づけとなり、インテルプラットフォーム向けの製品開発は終了しました。
システムオンチップ
ATIは2002年からSoC（システムオンチップ）「Imageon」を発売しました。Imageonは2Dや3Dグラフィック処理が可能で、携帯電話やタブレットPC向けに出荷されていましたが、AMDへの事業売却後、2009年にはクアルコムに売却され、現在はAdrenoというブランドで展開されています。また、2006年にはデジタルテレビチューナー「Imageon TV」を発売しました。
ATIテクノロジーズは、その革新的な技術と製品で、グラフィック業界に大きな足跡を残しました。現在はAMDの一部門として、その技術が受け継がれています。
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