ファブレス

ファブレスとは

ファブレスとは、自社で工場（fab）を持たない企業のことです。製品の企画、設計、開発は自社で行いますが、製造は外部のEMS（Electronics Manufacturing Service）企業に委託します。製品はOEM供給を受け、自社ブランドとして販売します。このビジネスモデルは、特に半導体産業で一般的になり、現在ではコンピュータ、食品、玩具など、様々な業界で見られるようになりました。

ファブレスの概要

ファブレス企業は、自社で製造設備を持たないため、製造にかかる巨額の投資や、技術革新に伴う設備の陳腐化のリスクを回避できます。これにより、研究開発や製品企画に経営資源を集中させることができます。半導体産業では、以前は設計から製造までを自社で行う垂直統合型が主流でしたが、製造設備のコスト高騰や、シリコンサイクルによる減価償却期間の短さから、ファブレスという水平分業型が増加しました。

ファブレス企業は、設計した半導体を、半導体総合企業やシリコンファウンドリと呼ばれる半導体製造専業企業に製造委託します。この分業体制により、各企業はそれぞれの得意分野に特化し、より効率的な事業運営が可能になります。

ファブレスの分類

ファブレス企業は、製造業に分類されますが、その基準は曖昧な部分もあります。海外から製品を仕入れて自社ブランドのJANコードを添付するだけの卸売業者も、ファブレス企業として製造業を名乗ることが可能です。また、ファブレス企業でも、修理工場などの機能を持つ場合はあります。日本標準産業分類では、自社で製造を行わず、原材料を下請け工場に支給して製品を製造する企業は卸売業に分類されます。

ファブレスの歴史

ファブレスというビジネスモデルの起源は、1916年にジョン・T・トンプソンがトンプソン・サブマシンガンを開発した際に、技術者のみで会社を設立し、製造を他社に委託したことに遡ります。現代のファブレス企業の原型は、1980年代のアメリカ・シリコンバレーで、半導体設計に特化した企業が、製品生産を日本の工場に委託したのが始まりとされています。日本では、バブル崩壊以降、製造業のあり方が変化し、1990年代に自動車用タイヤホイールメーカーのカービングがファブレス経営を取り入れたのが最初とされています。

ファブレスのメリットとデメリット

メリット:

製造設備への巨額投資が不要
技術革新に伴う設備陳腐化のリスクを回避できる
研究開発や製品企画に資源を集中できる
市場変化に柔軟に対応できる

デメリット:

製造を外部に委託するため、品質管理が重要
技術流出のリスクがある
製造委託先の状況に左右される

まとめ

ファブレスは、自社工場を持たずに事業を行うことで、製造コストを抑え、研究開発に注力できるビジネスモデルです。半導体産業を中心に広まり、様々な業界で見られるようになりました。グローバル化が進む現代において、ファブレスはより効率的で柔軟なビジネス運営を可能にする重要な選択肢の一つとなっています。

関連項目

ファブライト
ファウンドリ
垂直統合型デバイスメーカー
EMS (製造業)
OEM

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