4月19日運動

4月19日運動（M-19）とは

4月19日運動（スペイン語: Movimiento 19 de Abril、略称M-19）は、1970年代から1990年代初頭にかけてコロンビアで活動した左翼ゲリラ組織です。1990年に武装解除し、合法政党「M-19民主同盟」（Alianza Democrática M-19）として政治活動を行うようになりました。

M-19の誕生

M-19は、1970年のコロンビア大統領選挙における不正疑惑を背景に、1973年に結成されました。当時、軍事政権時代の指導者であったグスタボ・ロハス・ピニージャ将軍が「全国人民同盟（ANAPO）」から大統領選に出馬しましたが、保守党候補に僅差で敗北しました。反政府勢力はこれを不正選挙とみなし、抗議運動を展開。こうした政治的混乱の中、ANAPOの活動家を中心にM-19が組織されました。

M-19は、反米、民族主義、反共を掲げ、ハイメ・バテマン・カジョンやカルロス・トレード・プラタらが指導しました。

M-19の活動

M-19は、初期には象徴的な行動を通じてその存在をアピールしました。1974年には、ボゴタの博物館からシモン・ボリバルの剣を奪い、「彼の遺志が達成されるまで返還しない」と宣言しました。その後、誘拐や襲撃事件を繰り返し、政府への圧力を強めました。

1980年には、ボゴタのドミニカ共和国大使館を占拠し、各国大使を含む多数の人質を取るという大胆な行動に出ました（在コロンビア・ドミニカ共和国大使館占拠事件）。この事件は、日本赤軍によるクアラルンプール事件を参考にしたとも言われています。M-19は政治犯の釈放などを要求しましたが、コロンビア政府は一部要求に応じ、犯行グループはキューバへ出国し、事件は無血解決しました。

1985年には、コロンビア最高裁判所を占拠し、政府との直接交渉を要求しましたが、政府はこれを拒否。軍と警察が突入し、M-19のメンバー全員が殺害され、多数の判事や市民も犠牲となりました（コロンビア最高裁占拠事件）。この事件は、麻薬カルテルが関係していたとも言われています。

武装解除と政治参加

最高裁占拠事件後、M-19は国内外からの批判を浴び、孤立を深めました。また、東西冷戦の終結により、東ドイツからの武器援助も得られなくなり、武装闘争の継続が困難となりました。1989年、M-19は政府との和平協定に調印し、1990年に武装解除しました。

その後、M-19は合法政党「M-19民主同盟」として政治活動を開始しました。1990年の大統領選挙には、カルロス・ピサロが立候補しましたが、暗殺されました。しかし、M-19は制憲議会選挙で議席を獲得するなど、一定の政治的影響力を持ちました。2022年には、元M-19の構成員であったグスタボ・ペトロが大統領に選出されています。

M-19は、コロンビアの現代史において、暴力と政治参加という二つの側面を持つ複雑な存在として記憶されています。

もう一度検索