グスタボ・ロハス・ピニージャ:コロンビアの軍人、政治家、そして大統領
グスタボ・ロハス・ピニージャ (
1900年3月12日-
1975年1月17日)は、20世紀
コロンビアの歴史に大きな足跡を残した人物です。
軍人としての輝かしい経歴、無血
クーデターによる大統領就任、そして独裁政権への転落、そして政界復帰への試みまで、彼の生涯は劇的な出来事に満ち溢れていました。本稿では、ロハス・ピニージャの生涯を詳細にたどりながら、彼の業績と、
コロンビア社会への影響を多角的に考察します。
生い立ちと軍歴
ボヤカ県トゥンハに生まれたロハス・ピニージャは、トゥンハ・レイバ師範学校で中等教育を受け、その後ホセ・マリア・コルドバ
陸軍士官学校を卒業しました。
少尉として卒業後、アメリカに留学し土木工学の
学位を取得。帰国後は土木工事に従事し、インフラ整備に貢献しました。
1932年、
陸軍に復帰したロハス・ピニージャは、
コロンビア・ペルー戦争ではブエナベントゥーラ湾岸砲台の指揮を執り、戦争終結に貢献しました。その後も、
陸軍の弾薬工場の主任技術者や、航空局長などを歴任し、軍における地位を着実に高めていきました。ナチス・
ドイツへの特使として派遣された経験や、アメリカでの武器調達任務も経験しており、国際的な視野も培っていました。
1948年には
ボゴタ・アソラト(
ボゴタ暴動)の鎮圧に貢献し、その手腕は高く評価されました。階級も着実に上がり、
1949年には
陸軍大将に昇進しています。
軍での経験を活かし、
1949年には
郵政大臣に就任。その後、国連代表も務めました。
朝鮮戦争では、
コロンビア軍の活動を視察した経験もあります。
1952年には
コロンビア軍参謀総長に就任し、軍の最高責任者となりました。
1953年6月13日、ロハス・ピニージャは、国内の平和と秩序の回復を名目に無血
クーデターを実行、大統領
ラウレアーノ・ゴメス・カストロを打倒し、政権を掌握しました。
大統領在任中の政策と独裁化
大統領に就任したロハス・ピニージャは、女性
参政権の付与や、インフラ整備、教育・医療施設の建設など、積極的な政策を展開しました。
大西洋鉄道や
水力発電ダム、石油精製所の建設など、国家プロジェクトを推進し、
コロンビアの近代化に貢献しました。また、社会復帰救済局を設置し、
農地改革にも着手しました。しかし、彼の政策は、大地主との対立や、ゴメシスタと呼ばれる政治テロリストへの
恩赦など、社会不安を増幅させる要因にもなりました。
当初、大衆迎合的なポプリスモ政策で民衆の支持を集めましたが、保守派や自由派の反発を招き、独裁的な傾向を強めていきました。「牛の首輪虐殺事件」と呼ばれる弾圧事件も発生し、国内の反ロハス感情は高まりました。
自由党と保守党による「国民戦線」の合意や、国内の反政府運動の高まりを受け、ロハス・ピニージャは
1957年5月10日、大統領を辞任し、
スペインに
亡命しました。彼の失脚は、「世論の
クーデター」と呼ばれています。その後、
軍事政権が一時的に復活した後、
コロンビアは民政に戻りました。
政界復帰への試みと最期
亡命後もロハス・ピニージャは政治活動を続け、
1962年と
1970年の大統領選挙に立候補しました。
1970年の選挙では僅差で敗れましたが、選挙不正の疑いが浮上し、激しい抗議活動を引き起こしました。この抗議活動は、M-19
ゲリラ組織の結成にもつながっています。
1975年1月17日、ロハス・ピニージャは74歳で亡くなりました。
評価
ロハス・ピニージャの功績と過ちは複雑に絡み合っています。インフラ整備や社会政策による貢献は評価される一方、独裁的傾向や弾圧、選挙不正疑惑など、批判も少なくありません。彼の生涯は、
コロンビアの歴史における重要な転換期を象徴するものであり、現代においても議論の的となっています。