7月17日革命

1968年イラク7月17日革命：バアス党の再台頭とサッダーム・フセインの影

1968年7月17日、イラクで起こった7月17日革命は、アラブ社会主義バアス党による無血クーデターでした。このクーデターによって、アブドッラフマーン・アーリフ大統領率いる政権は崩壊し、バアス党が再びイラクの政権を掌握することになります。

クーデターの首謀者は、アフマド・ハサン・アル＝バクルでした。彼はクーデター成功後、大統領に就任します。しかし、この革命の陰には、後にイラクの独裁者となるサッダーム・フセインや、のちに反体制派に加わるサーラフ・オマル・アル＝アリといった重要人物が関わっていたことが知られています。彼らはバクルと共にクーデターを成功に導き、新たなバアス党政権の基盤を築きました。

バアス党は、1963年2月のラマダーン革命で一度政権を獲得していました。しかし、内部対立やアーリフ兄弟（アブドッラフマーン・アーリフ大統領とその弟）との権力闘争の結果、同年11月のクーデターで政権を追放されていました。7月17日革命は、失われた権力を奪還するための、綿密に計画された行動だったと言えるでしょう。

クーデターは、アーリフ大統領が就寝中の早朝に実行されました。バクル率いるバアス党員は、バグダードのラジオ局と国防省を迅速に占拠。クーデターの成功を宣言すると同時に、アーリフ大統領に圧力をかけました。国防大臣に任命されたハーダン・アル・ティクリーティは、アーリフ大統領に電話をかけ、大統領職からの辞任を要求したのです。反撃の余地がないと悟ったアーリフ大統領は、辞任に応じ、安全を保障された上でトルコに亡命しました。

この7月17日革命は、いわゆる「第二次バアス党政権」の始まりを告げました。この政権は、1979年にアル＝バクルからサッダーム・フセインへと大統領職が引き継がれ、その後も長期にわたってイラクを支配することになります。フセインによる強権的な統治は、イラク社会に大きな影響を与え、国際社会からも批判を集めました。

このバアス党政権は、2003年のアメリカ合衆国とイギリスによるイラク侵攻（イラク戦争）まで続きました。戦争の結果、フセイン政権は崩壊し、イラクは多国籍軍による軍事占領下に置かれることになります。7月17日革命は、イラク近代史において、重要な転換点であり、その後数十年にわたるイラクの政治・社会情勢を大きく変えた出来事と言えるでしょう。

なお、7月17日革命は、1958年に発生した7月14日革命と混同されやすいですが、両者は別個のクーデターです。7月14日革命は、エジプトのナセル大統領の汎アラブ主義に影響を受けた自由将校団が、ハーシム王政を倒した革命です。興味深いことに、アル＝バクルとアーリフは、この7月14日革命にも参加していたという共通点があります。しかし、10年後の7月17日革命では、立場が逆転し、アーリフはクーデターの犠牲者となったのです。この両革命を比較することで、イラクの複雑な政治状況と、バアス党の台頭と没落のプロセスをより深く理解することができます。

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