7.62x25mmトカレフ弾

7.62x25mmトカレフ弾：高い貫通力を誇る拳銃弾

7.62x25mmトカレフ弾は、旧ソ連とその周辺国で広く使用されてきた拳銃弾です。その特徴的なボトルネック形状と高い貫通力は、世界中の軍事史に影響を与えました。本稿では、その設計、運用、派生型について詳細に解説します。

設計：マウザー弾を参考に、高い貫通力を実現

トカレフ弾は、拳銃弾としては珍しいボトルネック型を採用しています。これは、ドイツの7.63x25mmマウザー弾を設計参考にしているためです。寸法が類似していることから、一部の銃器ではトカレフ弾とマウザー弾の両方を発射可能ですが、トカレフ弾はマウザー弾より硬度の高い鋼製ジャケットを用いる場合が多く、マウザー弾専用銃器での使用は銃身磨耗につながる可能性があります。

トカレフ弾の平均銃口初速は約400m/s、運動エネルギーは約600Jと高出力です。そのため発射音と閃光は比較的大きくなります。西側諸国の9x19mmパラベラム弾と比較すると、その貫通力は際立っています。NIJ規格タイプIIIA未満の防弾チョッキでは防御しきれないほどの威力があり、これはトカレフ弾に多く用いられる鉄製弾芯と、防弾チョッキの構造に起因します。鉄製弾芯は鉛資源の節約に貢献する一方、小口径で高初速の弾丸に対して弱い防弾チョッキの特性と相まって高い貫通力を実現しています。実験結果では、7ヤードの距離から発射された9x19mm弾が1mm厚の鉄板を約4枚貫通するのに対し、トカレフ弾は6枚を貫通するというデータもあります。これは、アーマーピアシング弾を意図した設計ではないにも関わらず、高い貫通能力を示す結果となっています。

運用：ソ連軍、そして世界へ

ソ連では、短機関銃用の弾薬として大量生産され、ワルシャワ条約機構加盟国などにも輸出されました。その後、主力軍用拳銃弾は9x18mmマカロフ弾へと移行しましたが、ロシアや中国の警察・特殊部隊の一部では、その高い貫通力から現在も使用されています。冷戦終結後には、使用銃器と共に旧西側諸国にも流入し、現在も生産が続けられています。

トカレフ弾を採用する銃器は多数存在します。代表的なものとしては、トカレフTT-33拳銃、そしてソ連製のPPD-34、PPD-38、PPD-40、PPSh-41、PPS、PP-19 Bizon、チェコスロバキアのVz.24、Vz.26、Vz.52、北朝鮮の68式拳銃、中国の80式自動拳銃、64式微声冲锋枪、79式衝鋒槍、85式衝鋒槍、Norinco NP762(PX-3)、K14-VNなどがあります。これらは、拳銃から短機関銃まで多様な銃器に採用されていることを示しています。

派生型：より高性能な弾薬、そして消音弾

チェコスロバキアでは、短機関銃用強装弾の伝統を受け継ぎ、現在も強装トカレフ弾であるチェコM48を製造しています。M48弾は通常のトカレフ弾より発射圧が18%高く、射程とエネルギーが向上していますが、Vz.52拳銃など高いロック強度を持つ銃器以外での使用は、銃器へのダメージリスクがあります。

一方、中国製の7.62mm Type Pは、亜音速弾で消音器と併用することで発射音を低減する目的で開発されました。

まとめ

7.62x25mmトカレフ弾は、その高い貫通力と、数多くの銃器への採用、そして現在も続く生産によって、軍事史、そして銃器史において重要な位置を占める拳銃弾です。その設計思想、運用実績、そして派生型を理解することで、現代の銃器事情をより深く理解することができるでしょう。

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