ABC記譜法

ABC記譜法（ABC music notation）は、イギリスのChris Walshaw氏によって考案された、コンピュータ上で音楽を記述するためのテキストベースの言語です。単に「ABC」または小文字で「abc」とも呼ばれます。この記譜法は、音の高さを表すアルファベット、音の長さを表す数字、そしてその他の記号を組み合わせて音楽を表現します。

概要

ABC記譜法の最大の特徴は、アスキー文字のみを使用して譜面を記述できる点です。これにより、特別なソフトウェアを必要とせず、テキストエディタだけで楽譜を作成・編集できます。また、テキスト形式であるため、電子メールやインターネット上での共有が非常に容易であり、主に欧米のネットユーザー間で普及しました。特に、単音で構成されたシンプルな旋律の記述に適しています。

ABC譜を五線譜やMIDIデータに変換するフリーウェアやシェアウェアも多数開発されており、これらを活用することで、より直感的に音楽を扱うことができます。また、ABC記譜法に慣れていれば、変換せずにメロディーを読み取ることも可能です。

欧米の音楽関連サイトでは、特に民族音楽を中心に、ABC譜で記述された膨大な楽曲データが公開されています。このため、ABC記譜法を習得することで、耳で聞いた曲の一部をABC譜に変換し、それを検索エンジンに入力して曲を特定するといった使い方も可能です。

表記法

ABC記譜法の表記法は、比較的シンプルで覚えやすい構造になっています。以下に、基本的なルールを説明します。

音高: アルファベットの「CDEFGAB」がそれぞれ「ドレミファソラシ」を表します。絶対音高のドをCとした場合です。
オクターブ: 1オクターブ高い音は小文字（cdefgab）で、さらに1オクターブ高い音は小文字に「'」を付加して表します。1オクターブ低い音は、文字の直後に「,」を付加します。例：C, は、Cよりも1オクターブ低い音を表します。
音長: 各アルファベットの後に数字を記述することで音の長さを表します。例えば、L:1/8（1文字の長さを8分音符とする）の場合、「D2」は「D」の2倍の長さ（4分音符）、「D1/2」は「D」の半分の長さ（16分音符）を表します。
休符: 休符は「z」で表します。
拍子記号: 「M:」の後に拍子を指定します。例：M:2/4は4分の2拍子を示します。
音符の長さ: 「L:」の後に音符の基本となる長さを指定します。例：L:1/8は8分音符を基本とします。
調号: 「K:」の後に調号を指定します。例：K:Fはヘ長調を示します。
小節線: 「|」で小節の区切りを表します。スペースは、見やすくするためのもので、意味は持ちません。

以下に、日本の民謡「ソーラン節」の旋律をABC記譜法で表した例を示します。

abc
X:1
T:sooranbushi
M:2/4
L:1/8
K:F
C2 DF | A2 GF | A2 GF | G2 FC | D2 FC | D2 D2 | z2 z2 ||
zG AA | GA AA | GA AA | GF D2 | zA, CA, | CD GF | zG AF | DC FD | D z CC |
DF A2| A3 c | G F2 C | D2 D2 | D2 z2||

この例では、

X:1: は、ファイルナンバーの1を示します。
T:sooranbushi: は、タイトルが「ソーランブシ」であることを示します。
M:2/4: は、4分の2拍子であることを示します。
L:1/8: は、1文字の長さを8分音符とすることを指定しています。
K:F: は、調がヘ長調であることを示します。

関連項目

楽譜
数字譜
工尺譜
Music Macro Language

外部リンク

abc notation home page(英文)
* abc 記譜法

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