ABS樹脂

ABS樹脂について

ABS樹脂（アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂）は、合成樹脂の一種で、主にアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンが共重合されて作られます。一般的に耐熱性や機械的特性に優れており、耐衝撃性も高く、様々な製品の素材として広く採用されています。常用の耐熱温度は70〜100℃で、特定の改良により耐熱性を120℃以上に引き上げることも可能です。

特徴

ABS樹脂の外観は常温で薄い橙色の固体で、特定のグレードは薄黄色がかった透明度を持つものもあります。この樹脂は、硬度や剛性に優れ、加工が容易であり、耐衝撃性や曲げ疲労性においてもバランスが良い機械的特性を有します。また、表面が美しく印刷特性にも優れています。成形性も良好で、特に薄肉品の製造に適しています。化学的には、有機溶剤には溶けるものの、酸性やアルカリ性の溶液には不溶です。耐候性は劣るため、直射日光に長時間さらされると劣化が起こることがあります。さらに、アルコール類や強酸、強アルカリなどの影響で劣化する場合もあります。

改質

ABS樹脂はその特性から、さまざまな改質が行われています。

• - 難燃ABS樹脂（FR-ABS）: ブタジエンの比率を調整することで、難燃性を高めることができます。
• - 強化ABS樹脂: 剛性を向上させるために、ガラス繊維や炭素繊維などが添加されます。
• - α-メチルスチレン系ABS樹脂: スチレンの部分をα-メチルスチレンに置き換えたもので、耐熱性が向上します。
• - ASA樹脂: アクリルゴムを使用することで、耐衝撃性と耐候性を両立した樹脂です。
• - AES樹脂: エチレン系ゴムを重合させたもので、ABS同等の機械的特性がありながら、耐候性も保持しています。

歴史

ABS樹脂は1948年に特許を取得し、1954年に初の製品化がなされました。その高機能性からエンジニアリングプラスチックとして広く分類され、筐体や内装、建材といった多様な分野で使われています。テレビなどの電気機器にも難燃性の特性が求められ、多くの用途に適合しています。近年は他の素材に取って代わられることもありますが、依然として特定の機構部品など、繊維強化グレードとしての重要性は保持されています。

用途

ABS樹脂は、家電や電子機器の外装、筐体、機構部品だけでなく、自動車の内装、文房具、雑貨、事務用家具など広く用いられています。また、リコーダーなどの楽器、柔らかいおもちゃや模型の部品としても一般的です。さらに樹脂製の鉄道模型の車両や透明部品以外にも幅広く利用され、生活のあらゆる場面で触れることができます。

このように、ABS樹脂は多彩な特性を持ち、様々な分野での活用が期待される素材です。

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