AN/SPY-6

AN/SPY-6: 次世代フェーズドアレイレーダー

AN/SPY-6は、アメリカ合衆国のレイセオン社により設計された高性能なフェーズドアレイレーダーです。このレーダーは、主に二つの派生型で構成されています。一つは多機能レーダーのSPY-6(V)1 AMDR（Air and Missile Defense Radar）であり、もう一つは対空捜索専用のSPY-6(V)2/3 EASR（Enterprise Air Surveillance Radar）です。

来歴

このレーダーの開発は、2011年度から海軍が開始したCG(X)計画に基づいています。2009年からのコンセプト開発において、アメリカ海軍は防空およびミサイル防衛の用途を目的としたAMDRの開発に取り組みました。

AMDRは、SバンドでのAMDR-SとXバンドでのAMDR-Xで構成され、アクティブ・フェーズドアレイ・アンテナ（AESA）を活用しています。AMDR-Sは長距離の対空探知やミサイルの制御を行い、AMDR-Xは対水上捜索や精密追尾を担当します。

2009年6月、海軍はノースロップ・グラマン、ロッキード・マーティン、レイセオンの三社とコンセプト契約を結び、続いて技術開発契約やプロトタイプ技術試験を行いました。2010年にはCG(X)計画が中止されたものの、AMDRはアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フライトIIIに向けて開発が続けられました。

2013年にはレイセオンが開発契約を取得し、498億円の契約でAMDR-Sの技術生産開発が始まりました。一方、ロッキード・マーティンが異議を唱えたことで、計画は一時中断しましたが、翌年に異議が取り下げられ、開発が本格的に進むようになりました。

2024年1月、米海軍はSPY-6が期待通りの性能を発揮し、従来のSPY-1では困難だった目標の検出が可能であることを発表しました。

設計

AMDR-SはSバンドで動作し、最新のAESAアンテナを使用することで、高い探知能力を実現しています。AESAアンテナの送受信モジュールには、ヒ化ガリウムの代わりに窒化ガリウムが使用され、出力密度が向上しています。AMDR-Sは、24個のTRIMM（Transmit Receive Integrated Multi-channel Module）モジュールを使用した立方体形状のRMA（Radar Module Assembly）から構成されています。

AN/SPY-6(V)1では、37個のRMAを配置し、直径4.27メートルの固定式アンテナを作成しています。この設計により、従来レーダーよりも15デシベルの性能向上が見込まれ、対象物を倍の距離で捉える能力があります。最大探知距離は1,000キロメートル以上と考えられています。また、送信出力は35倍増加していますが、電力消費も相応に増加します。

ビームフォーミング技術にはデジタル技術（DBF）を用いており、特にシークリッターや電波妨害時でも複数目標の探知と追尾が可能です。さらに、他のレーダーとの情報共有を行うネットワーク化協力レーダー（NCR）やパッシブレーダー機能を持つ受信専用協調レーダー（ROCR）などの開発も行われており、電子攻撃能力を持たせる計画も進められています。

派生型

AN/SPY-6の派生型にはいくつかのバリエーションがあります。具体的には、

• - AN/SPY-6(V)1: アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フライトIII向けに37個のRMAモジュールを搭載。
• - AN/SPY-6(V)2: エンタープライズ対空監視レーダー（EASR）として、9個のRMAで構成される回転型アンテナを採用。アメリカ級強襲揚陸艦フライトIやサン・アントニオ級に搭載予定。
• - AN/SPY-6(V)3: 同EASRの系譜で、9個のRMAによる3面固定型アンテナを設置。ジェラルド・R・フォード級航空母艦に搭載予定。
• - AN/SPY-6(V)4: 24個のRMAによる4面固定配置のアンテナで、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フライトIIAの近代化に用いられます。

まとめ

AN/SPY-6はその革新的な設計と機能により、未来の海上戦術に大きな影響を与えるレーダーシステムです。多くの艦船に搭載されることで、より高い防空能力とミサイル防衛機能を提供することが期待されています。

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