アメリカ級強襲揚陸艦

アメリカ級強襲揚陸艦：進化する海兵隊の拠点

アメリカ海軍の強襲揚陸艦「アメリカ級」は、従来のワスプ級を基に、航空運用能力を大幅に向上させた艦艇です。その誕生には、アメリカ海軍の水陸両用作戦における揚陸艦の進化の歴史が深く関わっています。

海上機動部隊の変遷：LPHからLHA(R)へ

1950年代後半、アメリカ海軍はヘリコプター運用を重視した新たな揚陸艦の開発に着手しました。イオー・ジマ級ヘリコプター揚陸艦（LPH）やローリー級ドック型輸送揚陸艦（LPD）の建造を経て、ヘリコプター運用とドック機能を統合したタラワ級強襲揚陸艦（LHA）が誕生します。高コストのため建造数は削減されましたが、その後、エア・クッション型揚陸艇に対応したワスプ級（LHD）が7隻建造されました。

2000年代半ば、タラワ級の老朽化に伴い、後継艦の建造が決定。まず「マキン・アイランド」(LHD-8)が建造され、これをベースに、抜本的な設計見直しが行われたのがアメリカ級です。当初は、全長50,000トン級の大型艦や、革新的な飛行甲板レイアウト案も検討されました。しかし、コスト面を考慮し、「マキン・アイランド」をベースとした設計が採用されました。

初期建造艦2隻（フライト0）は、ウェルドックを廃止し航空運用能力を重視した設計でしたが、揚陸能力の不足が課題となりました。そのため、3番艦以降（フライト1）ではウェルドックが復活し、エア・クッション型揚陸艇の運用能力が追加されました。

設計と能力：航空力と揚陸力のバランス

アメリカ級は、ワスプ級をベースとしながらも、排水量は2,000トン強増加しました。最大の変更点は推進システムで、CODLOG方式（電気・ガスタービン複合推進）を採用し、低燃費性を実現しています。

航空運用能力はワスプ級と同等の飛行甲板（249.6×36.0メートル）を有し、ヘリコプター発着スポット9ヶ所、デッキサイド式エレベーター2基を備えています。スキージャンプ台は採用されませんでしたが、F-35Bの運用に対応するため飛行甲板の強化などが行われています。格納庫はワスプ級より拡張され、MV-22B、CH-53E/K、AH-1Z、UH-1Y、F-35Bなど多様な機体の搭載が可能です。「ライトニング空母」としての運用も想定されており、F-35Bを20機程度搭載することも可能です。航空燃料搭載量も大幅に増加しています。

一方、フライト0ではウェルドックの廃止により、揚陸能力はワスプ級より低下しました。フライト1ではウェルドックが復活しましたが、搭載できるエア・クッション型揚陸艇の数は減少しています。上陸部隊の収容能力や医療機能もワスプ級より削減されています。

兵装とセンサー：高度な戦闘能力

兵装は、ESSM、RAM、ファランクスCIWS、25mm機関砲などを搭載。C4Iシステム、各種レーダー、電子戦装置も装備し、高度な戦闘能力を備えています。フライト1では、AN/SPY-6(V)2 エンタープライズ対空捜索レーダーへの換装など、電測兵装の近代化が予定されています。

アメリカ級の将来

アメリカ級は、11隻の建造が予定されています。フライト1以降は、設計変更によりウェルドックを備えた改良型が建造される予定です。建造計画は予算状況なども影響を受け変動する可能性があります。アメリカ級は、今後長きにわたって、アメリカ海兵隊の水陸両用作戦の中核を担う存在となるでしょう。

参考文献

「世界の艦船」各号（海人社）
「軍事研究」（ジャパン・ミリタリー・レビュー）
Jane's Fighting Ships
The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World

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