AN/SQS-26

AN/SQS-26は、アメリカ合衆国のゼネラル・エレクトリック社とEDO社が共同開発した軍用ソナーシステムです。3kHz級の低周波を使用し、捜索と精密追尾の両方の機能を兼ね備えたマルチモード・ソナーとして、アメリカ海軍の対潜戦能力を大きく向上させました。その後、改良型のAN/SQS-53が開発され、多くの艦艇に搭載されました。

開発の背景

1950年代後半、アスロック対潜ミサイルの艦隊配備が進む中、アメリカ海軍はより高性能なソナーを求めていました。当時、5kHz級のAN/SQS-23ソナーが主力でしたが、ソ連海軍の潜水艦戦力の増強に対抗するため、更なる長距離探知が可能なソナーが必要とされていました。このような背景から、1955年にEDOとゼネラル・エレクトリックによってAN/SQS-26の開発が開始されました。

1961年には試作機XN-1が完成し、同年中に初期生産の契約が締結されました。

特徴

AN/SQS-26は、探信儀として3.05 - 4.5kHz、聴音機として1.5kHzまでの音波を検知可能です。直接探知範囲は約18.3kmですが、収束帯（CZ）や海底反跳（BB）といった特殊な音響環境を利用することで、最大64km近い探知距離を実現するとされていました。大型の艦首ドームに収容された送振機は、高さ1.68m、直径4.88m、重量27,216kgにも及びます。72本のステーブには、それぞれ8個の素子が備えられており、37個のコンピュータによって制御されます。

初期生産型のAN/SQS-26 AXは、1963年半ばから配備が開始されました。EDO社もほぼ同一設計のAN/SQS-26 BXを受注し、1966年から運用を開始しました。1964年には、ゼネラル・エレクトリック社に対して改良型のAN/SQS-26 CXが発注され、1969年から就役しました。また、既存のAN/SQS-26 AXを改修するAN/SQS-26 AXRの開発も進められ、最終的には全ての装備艦が改修を受けました。

AN/SQS-53

AN/SQS-26 CXをソリッドステート化し、新型のMk.116水中攻撃指揮装置に対応させたものが、AN/SQS-53として制式化されました。AN/SQS-53には、アナログ式のAN/SQS-53A、デジタル化されたAN/SQS-53B、コンピュータ制御のAN/SQS-53C、そして53A/53BをCOTS化したAN/SQS-53Dなどの派生型が存在します。

AN/SQS-26と同様に、AN/SQS-53の最大探知距離もCZ利用時に64km弱ですが、平均探知距離はダイレクトパスで9km以内でした。AN/SQS-53は後に、Mk.116水中攻撃指揮装置、AN/SQR-19戦術曳航ソナーと共に、AN/SQQ-89|AN_SQQ-89統合対潜戦システム（ASWCS）のサブシステムとして統合されました。

採用国と搭載艦

AN/SQS-26およびAN/SQS-53は、以下に示す国々と艦艇で採用されました。

AN/SQS-26
アメリカ海軍：ベルナップ級ミサイル巡洋艦、原子力ミサイル巡洋艦「トラクスタン」、カリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦、ブロンシュタイン級フリゲート、ガーシア級フリゲート、ブルーク級ミサイルフリゲート、ノックス級フリゲート
エジプト海軍：ダムヤット級
タイ海軍：プチャヨファ・チュラロク級
台湾海軍：済陽級
トルコ海軍：ムアヴェネト級
メキシコ海軍：アレンデ級

AN/SQS-53
アメリカ海軍：バージニア級原子力ミサイル巡洋艦、スプルーアンス級駆逐艦、キッド級ミサイル駆逐艦、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦
台湾海軍：基隆級
海上自衛隊：あたご型護衛艦、まや型護衛艦（イージスシステム搭載艦）
ベネズエラ海軍：マリスカル・スクレ級フリゲート

AN/SQS-26およびAN/SQS-53は、冷戦時代から現代に至るまで、各国の海軍において重要な役割を果たし、対潜戦能力の向上に大きく貢献しました。

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