AN/SQS-56

AN/SQS-56：フリゲート用ソナーの概要

AN/SQS-56は、アメリカのレイセオン社によって開発された、フリゲート艦に使用されるソナーシステムです。このソナーは、後にDE-1160としても知られるバリエーションが生まれ、多くの国に輸出されました。これを理解するためには、その技術の背景や設計理念を知ることが重要です。

来歴

1960年代中盤、アメリカ海軍は護衛駆逐艦（DE）において、新しいソナーシステムの開発に取り組むようになりました。その以前に標準装備されていたAN/SQS-26|AN_SQS-26は、低周波・大出力の特性を持つもので、前のモデルAN/SQS-23による技術的成果を踏襲したものでした。このシステムは、特定の条件下で探知能力を向上させることを目的とし、大洋の特性に適した設計となっていました。しかし、低周波による探知は長距離探知を可能にする一方で、分解能の低下も伴っていました。このため、潜水艦からの攻撃を察知できない「スリップ」という問題が指摘されるようになりました。

その後、1970年代に入るとアメリカ海軍は新たにパトロール・フリゲート（PF）の開発に着手しました。このプロジェクトでは、遠距離の対潜探知を戦術曳航ソナーやLAMPS（ヘリコプター）に依存し、艦に装備するソナーはより分解能の高い中周波を採用する方向にシフトしました。このような背景の中で、カナダのSQS-505を手本にしてAN/SQS-56の開発が進められました。1974年から1975年にかけては、ミサイルフリゲート「タルボット」での評価試験が行われ、1977年に技術開発が完了しました。その後1979年から量産が開始され、AN/SQS-56はフリゲート艦の重要な装備品となりました。

設計

AN/SQS-56は、前のモデルであるAN/SQS-26|AN_SQS-26に替わることにより、フリゲート艦の排水量を約600トン削減できたと考えられています。しかし、収束帯（CZ）などには対応しておらず、直接探知範囲に限られていたため、探知距離はおおよそ8km程度であると推測されています。

このソナーは複数の送信モードを備えており、全方向送信（ODT）、逐次方向送信（RDT）、三重逐次方向送信（TRDT）、広域逐次方向送信（wide RDT）などがあります。ODTはパルス幅が5.0-160ミリ秒で、音源レベルは218 dB、RDTはパルス幅5.0-2,180ミリ秒で音源レベルは232 dBという特性を持っています。また各モードにより、探知状況に応じた効果的な運用が可能となっています。

AN/SQS-56には情報処理装置が5台、操作コンソールが1台備わっており、戦術曳航ソナーや多用途ヘリコプターからの情報を統合する AN/SQQ-89|AN_SQQ-89というシステムに連接されています。このシステムにより、フリゲート艦は効果的な対潜戦の運用が実現されました。

空冷版とその多数バリエーション

AN/SQS-56を基にして、DE-1160シリーズとして以下のバリエーションが開発されました：

• - DE-1160B：標準的な輸出版で、音響尖頭出力は30 kW、価格は約350-450万ドル。
• - DE-1160C：DE-1160Bの改良版にあたる。
• - DE-1160LF：3.75キロヘルツの低周波に対応するモデルで、通常は艦首に装備される。
• - DE-1163：DE-1160Bを可変深度ソナーに改良したもの。
• - DE-1164：DE-1160とDE-1163を統合したシステム。
• - DE-1167（AN/SQS-58）：DE-1160の小型版、周波数は12または18 kHz。
• - DE-1167LF：低周波化したDE-1167、周波数は7.5 kHz。

採用国と搭載艦

AN/SQS-56は、主にオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートやそのライセンス生産版に使用されています。映える採用国には海上自衛隊があり、その運用する中周波アクティブ・ソナーOQS-8はDE-1160シリーズに相当するとされています。搭載艦の一例として、あぶくま型護衛艦や潜水艦救難艦「ちはや」が挙げられます。このように、AN/SQS-56とその派生型は海上での潜水艇探知能力を大きく進化させ、その影響力は現在も続いています。

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