ARIEL (宇宙望遠鏡)

ARIEL（系外惑星大気赤外線分光サーベイ衛星計画）

ARIEL（Atmospheric Remote-sensing Infrared Exoplanet Large-survey）は、欧州宇宙機関 (ESA) のコスミック・ビジョン計画における中規模宇宙ミッションであり、系外惑星の大気組成を詳細に調査することを目的としています。このミッションでは、トランジット法を用いて既知の1,000個以上の系外惑星を観測し、それらの惑星大気の化学組成や熱構造を研究・特性評価します。

ミッションの概要

ARIELミッションは、遠方の恒星を周回する多数の惑星を観測し、系外惑星の大気に関する大規模なデータセットを構築します。このデータに基づいて、惑星系がどのように形成され、進化するのかという根源的な疑問に答えることを目指します。搭載される分光計は、惑星の大気中のガスを分析し、その化学的特徴を特定します。これにより、惑星の化学組成が形成環境とどのように関連しているか、そしてその形成と進化が主星によってどのように影響を受けるのかを理解することに繋がります。

ARIELは、多様な環境下にある様々な系外惑星を研究対象としますが、特に恒星に近い軌道を持つ温暖な惑星に焦点を当てます。これらの惑星の大気を詳細に分析することで、生命が存在しうる環境の可能性や、惑星の進化の過程をより深く理解することが期待されています。

国際協力体制

ARIELミッションは、ESAの11の加盟国における様々な機関からなるコンソーシアムによって開発が進められています。さらに、4カ国からの国際的な貢献者も参加しており、国際協力体制でプロジェクトが進められています。プロジェクトは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのジョバンナ・ティネッティ教授が主導しています。

ミッションの運用と宇宙機の管理は、ESAとミッション開発コンソーシアムが共同で行い、調整された装置運用および科学データセンター (IOSDC) を通じて実施されます。ミッション運用センター (MOC) はドイツのダルムシュタットにある欧州宇宙運用センター (ESOC) に設置され、Ariel科学運用センター (SOC) はスペインのマドリード近郊にある欧州宇宙天文学センター (ESAC) に設置される予定です。MOCは宇宙機そのものを担当し、SOCはミッションデータと宇宙機からダウンリンクされた科学データのアーカイブを担当します。IOSDCは、SOCが受信したデータに基づいてミッションからの成果を開発する手助けを行います。

NASAもこのミッションに貢献しており、Ariel宇宙機に高精度ガイダンスセンサーを提供し、その見返りとして米国の科学者がミッションに参加します。

2021年12月には、ESAがArielの建設に関する契約をAirbus Defence and Spaceに授与し、2023年12月には建設が承認され、2029年の打ち上げが予定されています。

宇宙機の設計

ARIELの宇宙機は、サービスモジュール (SVM) とペイロードモジュール (PLM) の2つのモジュールで構成されています。PLMには、科学機器と主鏡が搭載されています。打ち上げ時の宇宙機の重量は1300キログラムで、PLMはその質量の約300キログラムを占める予定です。

望遠鏡は、オフアクシスのカセグレン望遠鏡で構成されており、可視光および近赤外線スペクトルで画像を取得します。望遠鏡の赤外線分光器を動作させるために、望遠鏡は55Kの温度まで冷却されます。

打ち上げと軌道

ARIELは、アリアンスペースのアリアン62ロケットにより、2029年にコメット・インターセプターとともに打ち上げられる予定です。打ち上げ場所は、フランス領ギアナのクールーにあるギアナ宇宙センターです。ARIELは地球から150万キロメートルの距離にあるL2ラグランジュ点に向けて打ち上げられ、そこで系外惑星の観測に必要な安定した環境に置かれる予定です。

ARIELミッションは、系外惑星研究に新たな地平を開き、宇宙における生命の可能性を探求する上で重要な役割を果たすことが期待されています。

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