A/UX

A/UX（エーユーエックス）は、Appleが1980年代後半から1990年代にかけて開発・販売した、68k Macintoshシリーズ向けのUNIXオペレーティングシステムです。System V Release 2.2をベースとして、System V Release 3、同Release 4、4.2BSD、4.3BSDの成果を取り入れた、当時の最先端技術を融合したOSでした。

主な特徴

A/UXの最大の特徴は、Mac OSアプリケーションのエミュレーション機能でした。これにより、Mac OS向けに開発されたアプリケーションをA/UX上で動作させることが可能となり、UNIX環境でありながら、Macintoshの豊富なソフトウェア資産を活用できるという画期的なものでした。また、ユーザーインターフェースにおいては、Finder 24bit、Finder 32bit、コンソール、X Window Systemの四つのモードを備えており、特に標準インターフェースである32bit Finderモードは、当時のMac OSと同様のGUIを提供し、Unix系OSの持つ難解なイメージを払拭しました。さらに、Finder上で動作するXサーバアプリケーション「Mac X」も提供され、FinderモードでもX Window System向けのアプリケーションを利用することができました。

歴史

A/UX 1.0は、1988年2月のUniforum会議で発表されましたが、当初のスケジュールより7ヶ月遅れての登場となりました。主なターゲットは、大学や付加価値再販業者（VAR）などの既存のUNIXユーザーでした。最初のリリースと同時に、IngresデータベースやStatView、開発者向けツール、各種生産性ソフトウェアなどがサードパーティから提供されました。このバージョンはAT&TのUnix System V2.2をベースとしており、BSDからの機能も追加されていました。ネットワーク機能としては、UniSoftが開発したTCP/IP、AppleTalk、NFSが実装されました。初期バージョンではGUIは提供されておらず、コマンドラインのみでの操作でしたが、System 6のインターフェースを使い、一度に一つのMacアプリケーションを実行することができました。ただし、動作可能なMacソフトウェアは全体の10%程度にとどまりました。

1989年にリリースされたA/UX 1.1では、Finder、Chooser、デスクアクセサリ、コントロールパネルなどのSystem 6の基本的なGUIが提供され、操作性が大幅に向上しました。POSIX標準のドラフトやX Window System（X11R3）のGUIも搭載され、ローエンドのSunワークステーションと比較して、全体的な速度が改善されました。その後、1991年初頭にはApple Computer JapanからA/UX 2.0が販売開始され、SE/30、II、IIx、IIxc、IIci、IIfxなどの機種に対応しました。

1991年11月には、A/UX 3.0がリリースされ、A/UXとSystem 7のリリーススケジュールを同期化する計画が発表されました。この際、A/UX 4.0が1993年または1994年にリリースされることも予告され、IBMのPOWERやPowerPCのハードウェア、そしてAppleのPowerPCベースのハードウェアで実行できるようになることが期待されました。しかし、実際にはA/UX 4.0はリリースされませんでした。

また、1992年4月にはC2レベルのセキュアなバージョンのA/UXもリリースされています。A/UXの最後のリリースとなったのは、1995年にリリースされたバージョン3.1.1でした。

開発の終焉

A/UXは1988年から1990年代半ばまで開発が続けられましたが、Appleがプロセッサを68kからPowerPCに移行するにあたり、PowerPCへの移植は行われず、その歴史に幕を閉じました。一時的にAIXベースのプラットフォーム構想が持ち上がり、AIX標準搭載のApple Network Serverも発売されましたが、1年未満で販売終了となりました。その後、Mac OSとUNIXが再び交わるまでには、NeXTSTEPをベースとしたMac OS X Server 1.0の登場を待つことになります。

関連項目

オペレーティングシステム
Classic Mac OS
macOS
macOS Server
Darwin
NeXTSTEP
* OPENSTEP

脚注

[参考文献] 「SuperASCII 1991年4月号」第2巻第4号、株式会社アスキー出版、1991年4月1日。

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