AIX

AIX（Advanced Interactive Executive）とは



AIXは、IBMが開発したUNIXオペレーティングシステムのブランド名です。The Open GroupのUNIX認証を受けており、IBMのPower Systemsサーバーを中心に、幅広いプラットフォームで利用されています。

概要



AIXは、UNIX System V Release 3 (SVR3) をベースとしており、BSDやSystem V Release 4 (SVR4) などの機能も取り込んでいます。IBMのRT-PC、RS/6000、pSeries、System p、Power Systemsシリーズだけでなく、フランスのBullや日立製作所のEP8000シリーズ、SR16000シリーズなど、他社製のサーバーでも採用されています。

最新版のAIX 7.3.1では、64ビットカーネルが採用され、POWER8、POWER9、POWER10といったPOWER系のCPUをサポートしています。

特徴



コマンド体系



AIXのコマンド体系は、SVR3をベースにしつつ、BSDやSVR4のコマンドも追加されているため、他の商用UNIX（Solarisなど）やLinuxとは多少異なります。AIX V3まではBourne Shellがデフォルトでしたが、AIX V4以降はXPG4とPOSIXに準拠するため、KornShell (ksh88) がデフォルトとなっています。

また、ロードモジュール (LM) のオブジェクトフォーマットには、Powerチップ間の非互換性を吸収するために、ELFではなくCOFFの拡張であるXCOFF (XCOFF32およびXCOFF64) が使用されています。

論理ボリュームマネージャ



AIXは、論理ボリュームマネージャ (LVM) を比較的早い段階から採用しており、ディスク装置のミラーリングやストライピングをサポートしています。AIX 5L 5.2以降では稼働中のバックアップ機能 (split copy) が、AIX 5L V5.3以降ではスケーラブル・ボリュームグループが、AIX V6.1ではログ収集機能が強化されています。

ジャーナルファイルシステム



ジャーナルファイルシステムとして、JFSおよびJFS2を実装しています。JFSはディスク障害時の回復時間を短縮するファイルシステムで、最大64GiBのファイルと1TiBのファイルシステムを作成できます。JFS2では、AIX 5L V5.2以降で最大1TiB（AIX 5L V5.2以降では最大16TiB）のファイルおよびファイルシステムを作成できます。また、スナップショットバックアップやファイルシステムサイズの動的縮小、暗号化ファイルシステムなどの機能も提供しています。

デスクトップ環境



標準のデスクトップ環境はCDEです。AIX Toolbox for Linux ApplicationsにはKDEやGNOMEも含まれています。

管理ツール



AIXの特徴的な点として、システム設定を階層型の管理画面であるSMITから行うことが挙げられます。主要なシステム設定情報はODMというデータベースにバイナリ形式で格納されるため、コマンドに詳しくないユーザーでも操作しやすい一方で、データベース情報の不整合が発生した場合には専門知識が必要です。

大規模ワークロードサポート



AIX 7では、最大256プロセッサコア、1024スレッドをサポートし、大規模なワークロードに対応できます。

仮想化



ハードウェアと連携した高度な仮想化機能もAIXの強みです。論理区画 (LPAR)、動的なリソース割り当て (Dynamic Logical Partitioning)、CPUを細かく分割するMicro-Partitioning、1つのAIXインスタンス内で複数のAIX環境を作成できるWorkload Partition (WPAR)、稼働中のLPARを別の物理マシンへ移動するLive Partition Mobility、x86 Linuxアプリケーションを無修正で実行できるLx86など、多様な仮想化技術を提供しています。これらの機能はPowerVMとして総称されています。

Linuxとの親和性



AIX Toolbox for Linux Applicationsには、GNUプロジェクトやオープンソースのツールが含まれています。AIX 5Lでは、Linuxとの親和性 (Linux Affinity) を高め、Linuxプログラムソースの移植性を向上させました。

パッチ



累積フィックスであるフィックスパック (Fix Pack) は、IBMのサイトからダウンロードできます。TL（Technology Level）、SP（Service Pack）、CSP（Concluding Service Pack）の組み合わせで提供されていましたが、現在はTLとSPの組み合わせに変更されています。また、緊急性の高い問題には暫定フィックス (iFix) が提供される場合があります。

歴史



AIXは、1986年にIBM RT-PCで動作するAIX V1として登場しました。その後、RS/6000シリーズのOSとして採用され、UNIX戦争ではOSF/1のカーネルとして採用されました。1994年にはSMP対応が行われ、2001年にはAIX 5Lが登場し、エンタープライズ領域での利用が拡大しました。

AIXは、可用性やスケーラビリティの高さ、CPU性能の向上を武器に、基幹系システムにおける商用UNIXとして主流となっています。

サポートするアーキテクチャ



AIXは、IBM PS/2 Micro Channel Architecture PC、IBM RT、POWERアーキテクチャ、PowerPCアーキテクチャなど、様々なプラットフォームをサポートしてきました。

メインフレームでのAIX



かつてはIBMのメインフレームであるSystem/370で動作するAIX/370、System/390で動作するAIX/ESAが存在しましたが、現在はLinux on System zにその座を譲っています。

アップル製ハードでのAIX



1996年には、Apple ComputerがAIXを標準OSとするApple Network Serverを開発しましたが、短命に終わりました。

日立製ハードでのAIX



日立製作所のエンタープライズサーバEP8000シリーズや、スーパーテクニカルサーバSRシリーズでは、AIXが採用されています。

バージョン



AIXには、様々なバージョンが存在します。

  • - AIX v1 (1986年)
  • - AIX v2 (1987年)
  • - AIX v3 (1990年)
  • - AIX v3.1 (JFSサポート)
  • - AIX 4.1 (1994年、SMPサポート)
  • - AIX 4.2.1 (1997年4月、NFS Version 3サポート)
  • - AIX 4.3 (1997年10月、64ビットCPU、UNIX98認証、IPv6サポート)
  • - AIX 4.3.3 (1999年9月、オンラインバックアップ、WLMサポート)
  • - AIX 5L 5.1 (2001年5月、64ビットカーネル、POWER4サポート、LPAR、JFS2サポート)
  • - AIX 5L 5.2 (2002年10月、POWER4+、マルチパスI/O、iSCSI、D-LPARサポート)
  • - AIX 5L 5.3 (2004年8月、POWER5、マイクロパーティション、VIOS、NFS Version 4、JFS2クォータ、JFS2ファイルシステム縮小、SMTサポート)
  • - AIX 6.1 (2007年11月、WPARs、Live Partition Mobility、RBACなど)
  • - AIX 7.1 (2010年8月、Express、Standard、Enterpriseの3エディション)
  • - AIX 7.2 (2015年10月、AIX Live Updateなど)
  • - AIX 7.3 (2021年12月発表)
  • - AIX 7.3.1 (2022年12月発表)

脚注




関連項目



  • - UNIX
  • - IBM
  • - Project Monterey
  • - IBM i 統合オペレーティング環境

外部リンク



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