Amiga CD32

Amiga CD³²：ヨーロッパ初の32ビットゲーム機とその短い生涯

1993年9月、世界的なコンピューターメーカーとして知られていたコモドール社は、新たなゲーム機Amiga CD³²を市場に投入しました。これは、同社が誇るAmigaシリーズのパソコン技術を基盤とした、CD-ROMドライブを搭載した家庭用ゲーム機です。ヨーロッパにおける初の32ビットゲーム機という触れ込みで注目を集めましたが、その歴史は短く、数々の要因が絡み合って、商業的な成功を収めることなく幕を閉じました。

コモドールの野望と次世代機戦争

コモドール社は、1990年代半ばに勃興しつつあった次世代ゲーム機市場にいち早く参入しようと、CD-ROMベースのマルチメディア機器に注目していました。先行して発売されたCommodore CDTVはマルチメディア機器としてのコンセプトが曖昧だったこともあり、商業的には失敗に終わりました。その反省を踏まえ、Amiga CD³²はゲーム機として開発されました。これは、Amigaシリーズが元々はゲーム機として企画されていたという事実を考えれば、原点回帰とも言うべき試みだったと言えるでしょう。

Amiga CD³²は世界初の32ビットゲーム機を謳い文句としていましたが、実際にはFM TOWNS マーティーの方が先に発売されていました。それでも、当時最先端技術であったMPEG-1デコーダーを搭載し、ビデオCDによる映画鑑賞を可能にした点は大きな魅力でした。

しかし、コモドール社は既に北米市場でのシェアを失っており、ヨーロッパ市場に活路を見出そうとしていました。ライバルとして、当時欧州で圧倒的な人気を誇っていたセガのメガドライブ、そしてその拡張機器であるメガCDが意識されていました。コモドール社は、Amiga CD³²のハードウェア性能を前面に押し出す戦略を取りましたが、その性能は旧世代機であるAmiga 1200をベースとしたものであり、当時登場しつつあったAtari Jaguarや3DOといった次世代機と比較すると見劣りするものでした。

さらに、アメリカ市場への進出は、特許問題により頓挫しました。この問題の解決に時間を費やしているうちに、コモドール社は倒産という事態を迎えてしまったのです。

マーケティング上の失敗とソフトウェアの不足

Amiga CD³²の失敗には、マーケティング上の不備も大きな原因として挙げられます。前世代機のCDTVも、Amiga 500のハードウェアを流用したものであり、ユーザーからすればわざわざCDTVを購入する必要がありませんでした。Amiga CD³²もAmiga 1200のハードウェアをベースとしており、既存のAmigaユーザーにとっては魅力が薄かったのです。

また、当時台頭しつつあったFPSや対戦型格闘ゲームといった新ジャンルに対応できるサードパーティーの開発力が不足していました。そのため、Amiga CD³²のゲームソフトは、既存のフロッピーディスクベースのゲームをCD-ROMに移植しただけのものが多く、次世代機としての革新性に欠けていました。

一時的成功と悲しい結末

これらの問題にもかかわらず、Amiga CD³²は1993年のクリスマス商戦において、特にAmigaが人気だったイギリスで大きな成功を収めました。メガCDを上回る市場シェアを獲得し、CD-ROM搭載ゲーム機としては最も販売台数の多い機種となりました。しかし、この成功はコモドール社の経営を立て直すには不十分であり、1994年4月、同社は倒産しました。

Amiga CD³²は、リリースからわずか半年でメーカーが倒産するという、不幸な運命を辿りました。しかし、1993年のクリスマス商戦での成功は、死に体となっていたコモドール社を半年間延命させたとも言えます。また、`ZOOL`などの良作ゲームも誕生しており、Amigaシリーズの高い人気もあって、ソフトウェアの供給は1997年頃まで続きました。Amiga CD³²は、その短くも激しい生涯の中で、ゲーム史に小さなながらも確かな足跡を残したと言えるでしょう。

Amiga CD³²の技術仕様と周辺機器

（このセクションでは、Amiga CD³²の具体的な技術仕様、搭載チップ、対応周辺機器などを記述します。必要に応じて、表などを用いて分かりやすくまとめます。）

関連製品

CD-i (Philips): 1991年にフィリップスが発売したマルチメディア機器。
メガCD (Sega): セガのメガドライブ用CD-ROMドライブ。
* FM TOWNS マーティー (Fujitsu): 富士通が発売した、パソコンFM TOWNSをベースにしたゲーム機。

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