Sempron

Sempron (センプロン)とは

Sempronは、AMDが製造・販売していた、低価格帯パーソナルコンピュータ向けのマイクロプロセッサのシリーズ名です。Duronシリーズの後継として、ローエンド市場における競争力を強化するために開発されました。

当初は、ハイエンド向けであったAthlon XPのアーキテクチャをベースにしたものが投入されました。その後、Athlon 64、Athlon II X2、モバイル向けにはTurion 64をベースにしたモデルも登場しました。これらのモデルは、Socket A、Socket 754、Socket 939、Socket AM2、Socket AM3、Socket S1といった、複数のソケット規格に対応しています。

開発の背景

21世紀初頭まで、CPUの性能は主に動作クロック数で評価される傾向がありました。AMDとIntelはクロック数の向上を競っていましたが、AMDは動作クロックを抑えつつ高性能を実現する戦略を取っていました。しかし、世間一般の認識がクロック数に偏っていたため、AMDは自社のCPUの性能を正当に評価してもらうために、モデルナンバーを導入しました。これは、性能的に相当するIntelのCPUのクロック数に合わせることで、消費者にわかりやすく性能を示すための措置でした。

しかし、Intelはローエンド市場でCeleronブランドを展開しており、Pentium 4の性能を抑えた低価格製品を提供していました。Celeronは、Pentium 4よりも高い動作クロックを持ち、消費者には価格訴求力が高く映りました。そのため、AMDはAthlon XPのモデルナンバーだけではCeleronに対抗することが難しくなりました。

そこで、AMDはCeleronに対抗するために、モデルナンバーを調整した新たなブランド「Sempron」を立ち上げました。Sempronでは、マルチメディア処理の評価を外し、モデルナンバーを高くすることで、Celeronに対抗しました。これにより、Sempronのモデルナンバーは、Athlon XPのモデルナンバーとは異なる基準で設定されることになり、消費者にとって混乱を招く要因となりました。

また、法人向けパソコンでは、Sempronのステッカーではなく、「Business Class」と表記されたステッカーが貼られることもありました。

歴史

• - 2004年6月7日: Sempronシリーズが発表されました。
• - 2004年7月28日: モバイルSempronが正式に発表されました。
• - 2005年7月6日: SempronがAMD64に対応しました。
• - 2005年8月25日: 富士通のパソコンにSocket 939版Sempronが搭載されました。
• - 2006年3月: Socket 939版Sempronが一部でバルク品として販売開始されました。
• - 2006年5月23日: Socket AM2版Sempronの出荷が開始されました。
• - 2008年3月22日: デュアルコアのSempron X2が出荷開始されました。
• - 2009年1月6日: Ultrathin Notebooks向けのSempronが正式発表されました。
• - 2009年1月13日: NECのノートパソコンにSempron X2 Dual-Core for Notebooksが搭載されました。

製品

デスクトップ用

Sempronは、Socket A、Socket 754、Socket 939、Socket AM2、Socket AM3に対応するモデルが展開されました。

Socket A版

Athlon XPをベースとした廉価製品で、多くの製品が非公式にSMPをサポートしていました。

Socket 754版

• - Paris (130 nm SOI): L2キャッシュ 256KiB
• - Palermo (90 nm SOI): L2キャッシュ 128KiBまたは256KiB, SSE3、AMD64に対応したモデルも存在

Socket 939版

OEM向けに出荷され、2006年3月より一部でバルク販売もされました。

• - Palermo (90 nm SOI): L2キャッシュ 128KiBまたは256KiB, SSE3、AMD64に対応

Socket AM2版

• - Manila (90 nm SOI): L2キャッシュ 128KiBまたは256KiB, AMD64に対応
• - Sparta (65 nm SOI): L2キャッシュ 256KiBまたは512KiB, AMD64に対応
• - Brisbane-256K (65 nm SOI): デュアルコア, L2キャッシュ 256KiBまたは512KiB, Athlon X2ベース

Socket AM3版

• - Sargas (45 nm SOI): シングルコア, L2キャッシュ 1024KiB, Athlon IIベース
• - Regor (45 nm SOI): デュアルコア, L2キャッシュ 1024KiB, Athlon IIベース

モバイルSempron

モバイルSempronは、ノートパソコン向けのローエンドCPUシリーズです。
デスクトップ版とは異なり、K7ベースのモデルは存在せず、モバイルAthlon 64/Turion 64をベースにしています。

Socket 754版とは異なりヒートスプレッダを搭載せず、PowerNow!による省電力機能も搭載しています。より熱設計電力（TDP）を抑えた低電力モバイルSempronも存在します。

Socket S1に対応したモバイルSempronはTurion 64 X2/Athlon 64 X2 Dual-Core for Notebooksをベースにシングルコア仕様に再設計し、L2キャッシュが512KBへ変更となり、拡張命令セットSSE3にも対応しています。また、2009年以降よりOEM向け専用としてLionコアのTurion X2をベースとしたSempron X2 Dual-Core for Notebooksが出荷されました。このデュアルコア版はLionコアのTurion X2やAthlon X2 Dual-Core for Notebooksに対しL2キャッシュが半減されており、AMD-Vが省略されています。

Socket S1版

• - Keene (90 nm SOI): L2キャッシュ 256KiBまたは512KiB
• - Lion (65 nm SOI): シングルコア, PowerNow!に対応

Ultrathin Notebooks向け Sempron

Yukonプラットフォームと共に発表された、シングルコアの組み込み/ノートブック向け製品です。Athlon Neoの廉価版と見られています。

関連情報

• - Athlon'>Athlon
• - Duron
• - Athlon_64'>Athlon 64
• - AMD Phenom II
• - Turion 64
• - Cool'n'Quiet - PowerNow!
• - Celeron
• - モデルナンバー

外部リンク

AMD Sempron プロセッサ ファミリ

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